第七のページ

 叶ちゃんがバケモノに連れていかれて、どのくらいの時間がたったのだろうか?

 夢衣は「叶さんはもう死んでいるよ」と言っていたが、僕にはその言葉が到底信じられなかった。

 奇跡的な確率で、彼女が無事な可能性だってある。

 僕はこの時、そのように主張していたような気がする。

 夢衣が僕を見るその瞳は憐みに似たものがあったが、だとしても僕は奇跡に縋りたいと切望してしまっていた。


 絶対に彼女を助けると、できもしない誓いをしたのだ。

 夢衣が言うには、殺人鬼は学校にいるらしい。

 だから……絶対に叶ちゃんを助ける。その想いだけを胸に秘めてあの場所へと向かった。


 道中、妹はもし他の友人が同様に捕まっていたらどうするか? と尋ねてきた。

 安否が定かではない友人は他にもいた。

 叶ちゃんがさらわれたのと同様に、僕の学友も同じような目に遭っている可能性もあったのだ。


 だが僕は妹の言葉に無言を貫き返答とする。


 すっかりそのことが頭から抜け落ちていたというのがまず理由の一つ。

 同時に、他なんてどうでもいいと一瞬感じてしまったことがもう一つの理由だった。


 この時の僕は、自らの幼馴染みを本当に助けることができると信じていた。

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