第五のページ

 バケモノから逃げおおせて、一時の平穏が訪れる。

 僕が遭遇した一連の事件は、これで終わりを告げてまた日常が戻ってくる。

 この時はそう信じていた

 なぜ逃げおおせたと感じたのか。

 それは恐らくそう仕組まれていたからだろう。

 殺人鬼とは名ばかりの、あの表現することも憚られるバケモノに……。


 だから、僕らは本能が発する警鐘に気づくことがなく、そのまま黄金の如き時間を無為に使い切ってしまった。

 あれほどまでに不安が胸中を占めていたのに、今すぐ彼女の元へ向かえと警告のメッセージを送られ続けていたのに。


 きっと大丈夫。

 叶ちゃんはあれだけ元気にしているのだから。

 僕の目の前からいなくなるはずはない。


 そんな根拠のない安心と、もしもまだあの恐怖が終わっていなかったらという不安感をいだき、現実から目を背けていたのも原因だろう。

 その日の僕は、明日に確認すればいいやと次の日に叶ちゃんの家に行って様子を窺えばいいやと、単純に考えてしまっていた。

 だからスマートフォンのチャットアプリで明日家に行くと伝えて、そのまま布団に入り込んだんだ。

 この時はまだ、返事が来ていたように思う。

 どうだったか、大切なことなのに記憶が酷く曖昧だ。

 夢衣が何か気がかりがあるかのようにソワソワしていたことが思い起こされる。

 思えばあれが最後のチャンスだったのだろう。

 とにかく僕は最後の最後まで気づくことがなく、


 次の日、その行動全てに後悔することになる。

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