第5話 奴隷商人、奴らが諸悪の根源だ

 俺はこの国で一番の奴隷収益を上げているという、ヤーポン商会に目を付けた。


 こいつらの主な産業は奴隷売買。奴隷に奴隷を産ませ、生まれた奴隷を売って利益を得る。


 人間を、まるで家畜のように扱っている商会だ。


 俺は奴らの本拠地がどこか分からない。本部の住所はあるが、奴隷が収容されている場所は秘匿されている。


 俺はまず、情報を集めるところから始めた。


 餅は餅屋。


 奴隷のことは奴隷商人に聞く方が早い。


 俺は奴隷市場に向かった。


 人間や魔族が鎖につながれ、裸で売り買いされている場所。それが奴隷市場だ。店舗は無く、すべて露店で売られている。荷馬車を路肩に停車させ、その前に奴隷を並べて売っている場所だ。


 たくさんの荷馬車がこの界隈に集結し、奴隷を売り込んでいる。人が多く、ここはいつもお祭り状態。二束三文で、人間が売り買いされる。


 俺は人込みをかき分けながら、車椅子を走らせた。走りながら、ゆっくりと奴隷市場の商人を見定める。玄人の商人は、人間だけでなく、エルフや亜人も扱う。それだけ仕入れるルートがたくさんある証拠だ。


 魔眼の能力を一部解除し、俺は催眠眼を発動させる。俺と目を合わせて話せば、即座に俺のいいなりになる。


 俺は身なりが良く、様々な亜人を売っている奴隷商に目を付けた。露店としては別格で、竜人を売っている。


 俺はフードを深くかぶり、その身なりの良い、肥えた商人に近づく。


商人は、優雅にお茶を飲んで客を待っている。逆に奴隷たちは全裸で鎖に繋がれ、立っている。 全員、目が虚ろでやせ細っている。竜人だけは筋骨隆々で健康そうだったが、他は全員死にそうな奴隷ばかりだ。


肥えた奴隷商人は見るだけでムカつくが、俺はリスクを避ける為、下から声をかけた。


「恐れ入りますが、ここの店主はあなた様ですか? 私はまだ子供ですが、主人の使いで奴隷を買いに来ました」


 主人がいるというのは、真っ赤なウソ。そんなものはいない。俺が子供でも、奴隷を買えるようなそぶりを見せただけだ。


「えぇ、私が店主ですよ。ご主人の使いの方ですか? どのような奴隷をご所望で?」


 その店主は俺が車椅子に乗った子供でも、丁寧に挨拶をしてきた。かなりしたたかで、場慣れしている商人だ。他の露店ではこうはいかないだろう。


「良く働き、若く美しいメイドを、100人。大量に欲しいのです。種族は、亜人でも人間でも、なんでも大丈夫です」


「ほう。100人とは。ずいぶん多いですな。しかも若いメイドですか」


「文字や計算が出来なくとも、若ければこちらで教えましょう。従順で、よく働くメイドが欲しいのです」


 俺は大量に奴隷が欲しいと伝えた。催眠眼を使うのだが、目を合わせるタイミングが必要だ。俺はうまく話を持っていきつつ、目を合わせるタイミングをうかがう。


「そうですかそうですか。では、私がご用意しましょう。お金は即金ですかな?」


「ええ。すぐに払いましょう」


 俺は嘘をつき、話を進める。今話しかけている奴隷商人が、巨大なヤーポン商会と関わっていれば、俺の目的に一気に近くなる。


 ヤーポン商会を、全滅させる。会頭や幹部、すべて皆殺しだ。


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