第3話 崩壊する自分
俺は、魔法実験を受けて、目を覚ました。
ここで、良いことが一つ。悪いことがいくつかあった。
良いことは、目が見えるようになったこと。
どうやら実験は、魔人とやらの目玉を俺に移植する実験だったようだ。
過去に俺以外にも移植実験は行われていたが、すべて失敗していた。人間と悪魔の臓器移植は、拒絶反応が出るからだ。何度も失敗したことから、実験は二度と行わないと決められていたが、俺の魔法の素質と、属性が「闇」だった為、今回のみ、目の移植実験をしたらしい。
運良く勇者が最上級魔族を討伐したことも、今回の実験に繋がった。
俺は幸か不幸か、手術を終えて生き残り、目を覚ました。
視界はクリアに見えたが、目に映る物体一つ一つに説明文のようなものが見える。大気中に浮かぶ信じられない細かな粒子や、魔力の色まで見えた。
悪魔の目を移植した恩恵らしいが、視界に表示される文字が悪魔語や神語で、何を書いてあるのかさっぱり分からない。
実は古の神代魔法、「鑑定眼」というのは、後でわかった話だ。
次に悪い話だが、俺の左手が無くなっていた。
目を移植した拒絶反応か知らないが、左手が根元から腐って落ちていた。内臓のいくつかも損傷を受けて、俺は流動食しか食べられない体になった。さらに左足も動かなくなり、半身不随のようになってしまう。もはや、自力で起き上がることもつらい。
目が見えたのは良いが、俺の体はさらにひどい障害に悩まされる結果になった。
実験をした魔導医師や、参加した教授らは、俺が起きたことで大騒ぎになった。しかも記憶を失っておらず、脳もしっかりしている。
普通なら、悪魔の目を移植すれば即死らしい。脳が負荷に耐えられないとのことだ。
俺は初めて研究所の人たちの顔や、色のある世界を見て感動はしていた。体が動かなくなったことは別として。
俺はこれからどんな地獄を見て、どんな実験をしていくのか頭によぎったが、それ以上に見えたことがうれしくて泣いて喜んだ。
研究所の所員たちも泣いて喜んでいるので、これは世紀の大成功なのだろう。
俺はありがとうと、執刀した先生を見て言ったら、先生の頭が急に膨れだして、破裂した。
当たりには、先生の脳漿が飛び散り、血だらけになった。
ベッドに寝ている俺を取り囲んだ先生たちは、阿鼻叫喚である。悲鳴を上げ、口々に騒いだ。何事だと。
俺はよく分からず、キョトンとしていた。周りの先生や研究所の大人たちを見て、俺は視線を合わせた。何が起きたの? と。
すると、俺と視線を合わせた先生たちは、みな頭を破裂させて死んだ。
俺は、初めて見た世界で、脳みそと血のシャワーを浴びたのだ。首から上が無くなり、吹き出る血液。飛び散る脳症。ビクビクとのた打ち回る首なし死体に囲まれ、俺は初めて現実の世界を見た。
俺の目は、最上級魔族の目。
人間にはない、魔眼だ。
莫大な魔力量を保持する目で、普通の人間なら目を合わせただけでも気が狂う。
それを俺が、無意識に魔力を込め、先生たちを見てしまった。
巨大な魔力を帯びた視線は、人を殺せる殺人光線となり、俺は見ただけで人を爆散させた。
俺は、化け物になってしまった。目が真っ赤に染まり、俺は人間と悪魔の中間となった。左腕は腐れて落ちて、左足は動かない。髪の毛もすべて抜け落ちて、頭には変な模様が描かれている。
見た目は、悪魔の子供。
俺はその時から、勇者や冒険者、あらゆる国から追われる身となった。
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