第4話四四四
君は狼男ね。香月は確かにそう言った。正体がバレてしまった。何故?彼女は一体何者なのか?
何故ヨシダと一緒にいルのカ
「イエスかノーかで答える必要はないよ。あと、後ろに隠れてる古牙 咲夜君もこっちに来て」彼女の声は優しい。敵意をむき出しにしているふうには思えない。
勇悟が後ろを振り向くと、階段の影に隠れた咲夜がこちらに向かって歩いてきた。
「香月さんあなたは何者ですか」勇悟は何も考えずただ聞いた。
「私は波動族」
私は波動族。彼女の答えに戸惑いを隠せない。転校生の美少女香月 由紀に話しかけられた喜びなんてものを一瞬たりとも味わう間も無く、ただ愕然とした。彼女が敵であるという事実に。
「私の名前、香月 由紀は偽名。私達は本名を明かしてはならない。掟にしたがって人前では偽名を名乗る。私の本名は、、、」
「おい。やめろ」
吉田が、名をいうのを阻止する。彼女が虚言を用いて俺に話かけるきっかけを作ろうとしたなんて淡い考えは揉み消された。
冷静に考えれば香月がわざわざそんな嘘をつくなんてありえない話だ。事実彼女が口にした狼男、波動族というのはただその辺にある本に書かれた話ではなく、事実なのだから。否定のしようもない本当のお話なのだから。
「ごめんなさい吉田くん。あっあとこの吉田くんも本名じゃなくて本当の名は、、、」
「おい、だからやめろって」
「ごめんなさい」
何故かどうでもいい一連の流れを腹だたしく思った勇悟は俺たちになんのようだ。と、聞いた。要件はおそらくお前たちを殺しに来た。だとか、いざ勝負。だとか、そんなことだろうが聞いた。
「やめましょう…」
「え?」勇悟は聞き返す。
「戦いはもうやめましょう」
香月の予想外の返答に驚く。
「もう、嫌なの。大切な人が傷ついて死んでしまうのが」
「そんなことが可能なのか」咲夜はただ黙っていたから勇悟が聞いた。
「わからない。けど、私たちはお互いに次期当主。その私たちがデモを起こせば争いは終結するかもしれない」
彼女は波動族の当主。そして勇悟は獣人族の当主。互いが長へと即位したら永きにわたる争いも終焉の時を迎える。果たして、そんなに簡単にいくのだろうか。
「これは希望的観測。うまくいくかはわからない。失敗する可能性の方が高い。反対されるかもしれない。口撃されるかもしれない。でも、わからないからやるしかない」
勇悟は彼女の目が潤んでいることに気づいた。彼女のセンチメンタルな悩みは勇悟の想像を超えるスケールの大きなものであった。
「わかった。協力する」勇悟は頭をかきながら答えた。
「おい、勇悟」ここで初めて咲夜が口を開く。
「それでいいのか」
「それがいい。だけど具体的にどうするつもりなんだ香月」
「まず幸福論を私たちの手で見つけます。あと、私のことはユキでいいよ」
風邪を引いたわけでもないのに熱を感じた。
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