甦る

甦るー1

 シルバーのバンは公一郎、拓真、そして時雨に瓜二つの三人を乗せ福岡へと向かっていた。

「いやぁ、ギリギリでした。丁度今秋本さんの住んでいた地域にまで検問のエリアが広がったようです。もう少し遅かったらアウトでしたよ。」

公一郎はまだ目の前のことが信じられずにカーテンのかかったドアの方を向いて頭を抱えてじっとしていた。

「秋本さん…大丈夫ですか?自分の運転荒いとこあるんで、そうやってたら酔いませんか?」

しかし公一郎は黙ったままだ。

「そろそろ…お話しましょうか。」

その言葉に公一郎は少し拓真の方に顔を動かす。

「あ…その前に…すいません…ちょっとサービスエリア寄ってもいいですか?ちょっとトイレ…。」

すると公一郎は少し眉を顰める。

「なんだよ…急いでんじゃなかったのかよ。」

公一郎は訳も分からずイライラとしていた。自分でもなぜイライラとしているのかは分からなかったが、似たようなことが以前にもあったような気がした。するとそれを察したのか、拓真は少し恐縮してしまう。

「あ…すいません。我慢します。」

そう言って残念そうな顔をする拓真を見て公一郎はため息をつく。

「いいよ。俺も行きたいから。トイレ。」

するとやはり拓真はあの安堵したような可愛らしい表情を浮かべる。

 それから十分ほどで拓真は何処かのサービスエリアに入る。

「そう言えば、こいつずっと寝てるけど起きねえのか?」

時雨によく似たその人物は未だずっと寝ている。

「ああ…えっと、広樹さんいわく二、三日の間は一日のほとんどを寝て過ごすそうです。」

拓真は思い出すようにそう説明する。

「そう…か。」

「秋本さん先に行って下さい。エンジン止めると車内暑くなっちゃうんで。」

拓真は車を駐車させると公一郎にそう言う。

「ああ、分かった。」

すると拓真は後ろのスライドドアを自動で開けてくれる。そこから見える外の風景は、とても天気がよく空は澄み渡り、熱気が一気に公一郎を包み込んでいった。公一郎が下りると拓真は再びスライドドアを自動で閉める。お盆が近いからだろうか、サービスエリアは平日にも関わらず家族連れなどで賑わっている。公一郎はトイレがあるであろう建物に近づきながら、そう言えば時雨の命日はそろそろだと考え、携帯電話でカレンダーを確認すると昨日だったことに気が付いた。

「そっか…あいつの命日も忘れちまってたのか。俺も駄目な奴だな。」

そうしてやはり公一郎はあの車の中の時雨に似た人物のことが気になる。

「まさか…生まれ変わり…なわけねえか。」

公一郎は色々なことがあり過ぎて考えること自体を拒否し始めていた。元々考えて動くことは苦手なのだ。ずっと昔から公一郎と広樹は正反対で、公一郎は勉強はまあまあ、スポーツは得意で、広樹はスポーツはまあまあ、勉強というよりは頭で考えて動くことが得意だった。しかしそんな広樹からの頼まれごとであの時雨に似た人物と公一郎を引き合わせたのだ。もしかしたらやっぱりと考えながら公一郎は用を済ませ、売店でボトルのコーヒーを買って車に戻る。

 車に戻り、公一郎がスライドドアを開けると拓真が待っていましたと言わんばかりに公一郎を見てきた。

「あ!お帰りなさい!!すいません!もう爆発寸前なんでちょっと行ってきます!」

と言って公一郎がドアを閉めるよりも先に拓真は建物の方へダッシュしていった。

「なんだ…そんなに我慢してるなら先に行きゃよかったのに…。」

公一郎はスライドドアを閉め、ふと隣の人物を見る。やはりその寝顔はどう見ても時雨そのものだった。しかし時雨はもうこの世にはいないはず。これは時雨に似た別の人物なのだと自分に言い聞かせる。しかし公一郎はその横顔を見ているといろんなことを思い出してしまう。

 どうして、時雨は死んだのだっただろうか?

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