第18話・階段だっ!
「ウィンドミサイル!!」
リントくんを側面から挟撃しようとした蝙蝠型の魔獣を二発同時発動させたウィンドミサイルで撃墜する。
最初の五層では試し討ちとして十発をイメージし詠唱し発動してみたが同時に出たのは二発のみだった。 どうも俺の魔力ではそこが限界らしい。
また、蝙蝠など耐久の比較的に低い魔獣ならウィンドミサイルで十分なのだがゴブリンや野犬型の魔獣には火力不足を否めない。
そこで耐久の高い魔獣にはフレイムアローを使用する。
こちらは思っていたよりも威力が高くこの初級ダンジョン程度ではオーバーキルとなってしまう。 元々フレイムアローはウィンドミサイルと比べて威力が高いのだが、同じ一撃死でもオーバーキルとなってしまうほどではない筈だ。
ウィンドミサイルの威力から試算しても精々炎熱と衝撃による即死程度なのだが、着弾と同時に四肢四散させただの肉塊にするほどまでの威力は流石におかしい。
これは想像なのだが封刀(封杖)・炎雷狂騒の影響があるのではないかと思う。
試し斬りの際の属性鎌鼬の威力からして炎と雷の付与効果はかなり高いと思う。
あれを杖にした効果として炎と雷に対しての属性強化が働いているのではと俺は勝手に思っている。 というか間違いなく強化分が威力に上乗せされている。
「ローグライト、助かった!」
俺が魔法を習得したお陰なのだろうか、前回と比べて攻略速度が上がっている。
戦闘時間が若干短縮された以外は、以前と変わらない為に劇的な短縮にはなっていない。 何故なら相変わらずティルが時折トラップを発動させリントくんがその罠に引っかかるというのを五層から六層に行くまでの間に二回発生させている。
流石にこれを俺の魔法でどうこうは出来ない。
それにしてもティルは罠を発動させても絶対自分に害が出ない様にしている。
これは計算にしても天然にしても凄いとしか言い様がない。
リントくんも凄い(笑)。
ティルが発動させた罠に必ず引っかかっている。
しかも、ただでは済ませず何かしらラッキースケベのイベントを完遂させている。
被害者は主に俺なのが実に解せない。
「アルブレンド、もう少し周りを見ろ。
今、壁になれるのはお前しかいないのだぞ」
「はい、すみません」
ミランダ先生は、手を出さない様になったが主に戦当面で心許ない俺らの為に口による援護が絶えず行われている。
「テイラー、もうちょっと前に出ろ。
お前は遊撃がメインとなる。
ローグライトと同じ立ち位置では、アルブレンドに負担が掛かりすぎる」
「はい」
「ローグライト、お前は・・・まぁ、
「はい」
ミランダ先生は、俺の魔法使いとしての能力を測りかねている訳ではない。
単に魔法に関してはど素人なだけでアドバイスのしようがないのだ。
この様にミランダ先生のダメ出しありつつ、それなりに順調に戦闘の方はこなしている。
「今、六層のどの辺なんだろうね」
俺は
前回を含め以前はティルが担当していたが罠解除など戦闘面以外での役割がある為、後衛である俺がMAPを作るのに一番適していると自ら名乗り出た。
現在、右の壁に沿って攻略しているのだが六層に入って結構な時間が経っている。
書き込んでいるMAPの密度を見た感じ、そろそろ七層の階段が見えても良い頃だ。
「んー、そろそろじゃないですか?」
「だよな・・・。 まぁ、空白の左下へ行けばあるんじゃないの?」
実はこの初級ダンジョン、俯瞰視点的に正方形の形をしている。
それは一階層から十階層まで変わらない。
しかし、階下へ行く階段の位置が違うのでMAP作成は重要なのだ。
とは言え、半分ぐらいMAPの書き込みが終わると大体の中りを付ける事が出来る。
俺達はMAP左下へ向けて足を進める。
ちなみにミランダ先生は戦闘以外完全に無口で黙って後ろから着いて来るだけだ。
そして、大体MAP左下に着くと七層への階段が見える。
そこまでは、完全な直線の通路で魔獣もいない・・・、怪しい。
「階段だっ!」
リントくんは発見したのが余程嬉しかったのか階段に向けて駆け出す。
担当した教員の性格上、罠は絶対ある。
と思っていたのだが、リントくんは意図も簡単に階段まで辿り着く。
ただし、リントくんの足が階段のオブジェクト一番手前のステップを窪ませながらだが・・・。
「へ?」
ヒュンと風を切る音共に壁の中からハリセンが出現し、リントくんの顔へ目掛けて横に凪ぐ。
「ぅわぁ!」
間一髪屈む事でハリセンの横薙ぎを空振りに終わらせるが、その一拍後にスパァンと乾いた音が通路に響き渡る。
どうやら屈んだ先にもハリセンが横薙ぎしてくる仕様だった様で見事に顔面へ直撃する。
見た目よりも威力の高いハリセンでしばかれたリントくんは、錐揉みしながら俺の足元まで飛んで来る。
「あぶっ!?」
俺は咄嗟に左脚を上げ当たるのを回避する。
「っっっ、ご、ごめ。 ローグライト・・・ぁ」
涙目になりながら鼻を抑え上を向くリントくんの視線が一瞬固まる。
「っあ」
リントくんの視線の先に何があるのか察知した俺は上げたままの左脚を思いっきり踏み下ろす。
「うわぁ」
惜しくも空振りに終わってしまい硬い地面を思いっきり踏み込んでしまった俺の足裏に痛みが走る。
「チッ」
痛みよりもリントくんを踏めなかったのが惜しまれる。
「こんな罠まであるのか・・・、面白いな」
ミランダ先生は一連の出来事に一切無関心を貫き、ハリセンの罠へ関心を寄せていた。
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