第17話・して・・・あれ?
「さて、Aクラスの諸君、ダンジョン実習を始めてから今日で四回目となる。
そろそろ、十階層をクリアしても良い頃合だ。
実際、前回の時点で九階層で終了したパーティーがあったな? 期待しているぞ」
我らがアルブレンド班は、五階層とぶっちぎりの最下位だ。
前回、俺が加わるまでミランダ先生を加えても三名という少人数かつ魔法使いが一人もいないという状況だったので当然と言えば当然と言える。
ま、加わった魔法使いが一つも魔法を覚えていなかったんだけど・・・。
それは置いておいて今回の俺は前回とは一味いや二味ほど違う。
魔法を使えるし精霊と契約している。
「一度、十階層をクリアした後、試験があるからな」
「試験の内容をお伺いしても?」
「なぁに、単に授業時間内に一階層から十階層までを踏破するだけだ。 簡単だろ?」
「簡、単?」
質問をした委員長のレイが首を傾げる。
恐らくクラス全員がそう思っただろう。
十階層のボスがどんなのか分らないが、一日ではなく授業時間内に十階層まで行く事自体難しい様に思える。
「簡単簡単、中級なんて初級と比べて魔獣も格段に強い上に致死性の高い罠も少なからずある。 その上で転移魔法陣は十階層毎だぞ。 ちなみにだが、来月から・・・いや後三回で担当教員が替わるから急いだ方が良い」
『!?』
ここでミランダ先生からの爆弾発言が飛び出した。
確か初級ダンジョンは、大体三週間毎に管理担当の教員が替わりダンジョン内の魔獣や宝箱それに罠まで配置が変わってしまうと言っていた。
配置だけならまだ良い、今担当している教員の様に厭らしい罠を用意している可能性もある。
つまり、配置などが変わらない間に中級ダンジョンへ行けという事だ。
「順番だが、メイズリーク班、アルドリッジ班、アルブレンド班、ジョルジーニ班、ロートルイド班、イシュライト班、クリスナル班の順だ。
今回も五分毎に入る事。 では、解散」
整列状態から姿勢を崩し各々毎に準備を進める。
ミランダ先生は俺達の所を目指し歩いてくる。
相変わらず先生は軽装で彼女の手には長剣が握られている。
「という事でお前らは三番目だ。
今回から緊急時にしか手を貸さんから自分らで何とかしろよ」
「エ~」
「え~、じゃない!
そもそも生徒に先生が手を貸している時点でおかしいんだ。
ローグライトも魔法を習得したみたいだし取りあえずやってみろ。 良いな」
魔法・・・魔法ね。
さて、現段階で俺が覚えている魔法は以下の通りだ。
炎属性初級魔術『フレイムアロー』、名前通りの炎の矢。
威力は初級魔術の中では高い方で若干炸裂し衝撃によるダメージが加算される。
イメージと必要魔力が足りていれば本数を増やしたり大きさを変えたり出来る。
風属性初級魔術『ウィンドミサイル』、名前通りの風のミサイル。
誘導性能が高く貫通力があるが炎の矢に比べて威力は落ちる。
イメージと必要魔力が足りていれば本数を増やしたり大きさを変えたり出来る。
初級天術『ファーストエイド』、つまり応急処置。
若干の
イメージや天力などで効果が上がる事はないが、必ず一定の効果を発揮する。
初級天術『キュア』、つまり身体異常回復。
精神的な異常を治す事が出来ない。 また、重度な身体異常も不可能。
イメージや天力などで効果が上がる事はないが、必ず一定の効果を発揮する。
古代魔法『サンダーレイン』、名前通りの雷の雨。
雷属性超級魔術に相当、屋内での使用厳禁。
明確なイメージと莫大な魔力がないと使用出来ない。
C・クロウリーの書がなければ俺の魔力では到底使えない。
精霊召喚術『クロウリー・クロウリーの書』、ゴスロリババア。
常時召喚型の武具精霊。
サンダーレインを初めとする数多くの古代魔法をワンスペルで使用出来る魔導書。
ただし、明確なイメージと魔法についての理解がないと発動しない。
また、屋内での使用厳禁。
つまり、基本的にフレイムアローとウィンドミサイルぐらいしか使えない。
属性による強弱などがない為、同級の魔法は全て同じ
とはいえ、特性などは異なる為、場面や相手によって強弱が分かれる事になる。
ただし、魔術は天術と違い詠唱者の魔力によって性能が変化する。
また、魔術と天術の消費魔法力は異なるし、精霊には○級というクラス分けがされておらず精霊毎に消費魔法力が違う。
それにクロの様な常時召喚型は一回の消費魔法力が極端に少ない代わりに一定間隔毎に消費し続ける仕様だ。
「何とか頑張ります」
「うむ。 その意気だ。 ところでテイラー今日は忘れ物をしていないだろうな」
「もう~。 先生、毎回忘れませんよぉ」
「ふむ。 それもそうか」
「え、でも何かいつものテイラーと違う様な・・・」
「ん、そう?」
ティルの全体も見ても変わった所がない様に思える。
「そんな事ないよ。 ほら、銃も昨日お手入れして・・・」
銃のスライドを引き適当に構える。
「して・・・あれ?」
何か違和感があったのか、構えを止めもう一度スライドを引きぽっかり空いた穴を覗き込む。
そして、銃からマガジンを取り出すとティルの表情が固まる。
「あわわ、弾忘れた・・・」
そう言えば、前回あった腰のごついベルトがないな。
「ティル、ベルトはどうしたの?」
あれって確か仕事道具を入れたポーチやマガジンホルダーとしての役割をしていた気がする。
「・・・弾と一緒に作業台に置きっ放し・・・」
「はぁ・・・取りに行って来い」
「はいぃ~」
ティルはドジッ子だけど盗賊(探索者)としては本物で足も速い。
姿が見えなくなるまで二回ほど何もない所で躓いていたが珍しく一度も転ばなかった。
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