第5話・じゃ、イクッ、わヨ~
訂正、猫耳を付けたオネエさんではなく、猫の獣人のオネエさんだった。
ゴリマッチョのネコミミオネエとか誰得だよ。
と内心思いつつ表情に出さない俺エライ。
「ハ~イ、用紙を提出してネ~ン」
適正検査用紙とスキル適正検査用紙の二枚を手渡す。
「あらあら、まぁまぁ。
じゃ、身体を楽にしてそこに立ってくれるかしラン」
適正検査用紙を見て驚きを見せたが、すぐに机の上に置き、俺へと立ち位置を指し示す。
「じゃ、イクッ、わヨ~。 ”メトローグ”」
”アナライズ”と同じ様に他人の魔力が頭の先から足の先まで見られる感覚がする。
「あら? 潜在能力に反して案外普通のスキル構成ネ~ン。 ”トランザライズ”」
スキル適正検査用紙にオネエが見たスキル構成を書き写していく。
そして、全て完了した後、俺の方へ向けて用紙を置いた。
◆スキル適正検査◆
武器修練:習熟度
刀剣修練:C-
棒杖修練:E-
防具修練:習熟度
布服修練:C-
革鎧修練:E-
鉄鎧修練:E-
生産技能:習熟度
修理:D+
武器組換:E+
地図作成:F-
汎用技能:習熟度
剣術:C-
魔術:F+
天術:F-
精霊感応:D-
気配察知:E+
固有技能:習熟度
同時翻訳:-
精霊の加護:-
刀剣の才能:-
月守夢想流剣術:C-
スキル構成は、ほぼ予想通りで前キャラ《ヴォルト》の下位互換だ。
E/Oの時は、才能スキルとして後天的開花する精霊の加護や刀剣の才能が最初からあるぐらいの違いしかない。
ネコミミオネエが言った通りならその二つもそんなにレアなスキルではなさそうだ。
「あなた、エルフなのに近接寄りなのネ~ン。
それじゃ、二枚の用紙を持って③番の部屋に行ってネ~ン」
渡された二枚の用紙を持って部屋を出て向かい側の右手にある③番の部屋へ入る。
「ようこそ、編入生。 早速だけどそこの席に座って貰える?
簡単な質問を最後にあなたの編入検査を終わるわ」
ちょっとキツメに感じるお姉さんは、そう言うと反対側の席へと座る。
「あ、いいわよ。 面接とかそんなもんじゃないから畏まらずに座ってね」
「失礼します」
「じゃ、質問ね。 あなたはこの冒険者学校で学びたい職業はなに?」
「えっと、何があるのです?」
「あ、そこからなの?
ここに来る前に目に入ったと思うけど、冒険者学校では大きくまとめて四つに分かれているわ。 戦士科、魔法科、盗賊科、神官科の四つね。
あなたのスキル構成から判断すれば戦士科になると思うけど、どうする?」
「スキル構成にあわさないといけないんですか?」
「あくまでも勉強する所なんだし、苦手とするスキルを中心に学んでも良いわ」
「じゃぁ、魔法科で精霊召喚術について学びたいです」
「魔法科ね。 霊力の潜在能力も高いし精霊感応のスキルもあるから問題ないわね」
お姉さんは新たに用紙を一枚出して、いくつか並んで置いておいた判子から一つを取り出し、その紙へと押し付ける。
「はい。 これを持って教員室へ行ってくれる?
適性検査とスキル適正検査の用紙は、この紙と一緒に担当の教員へ渡してね」
渡された用紙には、魔法科Aクラス推薦と書かれている。
「教員室は、出て奥へ行くと突き当たるから左へ行けばすぐだから、入って入り口近くの先生にその紙を渡せば良いからね」
ほんの一・二分ですんなり教員室に辿り着いた俺は手前の入り口から入り、すぐ近くにいた白髪交じりの先生に声を掛ける。
「すみません。 これ」
「んん? ああ、編入の、・・・Aクラス推薦ね。
グレンフェル先生、編入の子が来ましたよ!」
「はーい。 キミ、こっちにおいでっ!」
真逆の席に座る二十代後半ぐらいの女性が右手を上げ手招きする。
俺は白髪交じりの先生へ会釈をした後、女性の方へ歩いていった。
そして、三枚の用紙を彼女へと渡す。
「アキラ・ローグライトさん、ね。
担任のミランダ・グレンフェルだ。一般教科と担任を受け持っている。 よろしく」
「よろしくお願いします」
「うむ。 ローグライトさんは魔法科の精霊召喚術を学びたいんだね。
先ほども言ったけど私がAクラスの担任となる。
魔法および精霊召喚術の授業は選択科目として受ける事になり、その際は魔法科に所属する三学年全ての生徒と合同で授業を受ける形となる」
「その選択科目は、週にどのくらいあるのですか?」
「座学は一日一時間必ずある。 実技は週に一回三時間程度だな。
ここに来る前にコロシアムが見えたろ? そのどちらかで行われる」
「一般教科って言うのは?」
「職業関係なく全冒険者に共通する一般的な知識を教える。
まぁ、総合教科と言っても過言ではないな。 うん」
「クラスは何か意味があるのですか?」
「一般教科には、ダンジョン実習や課外実習っていうのが存在する。
その際のパーティーは同じクラスの生徒だけとなる。
要するにパーティーを組む相手は、同程度の能力を持っている方が良いだろ?
つまり、そういう事だ。 で、この後するにダンジョン実習があるから一緒に来なさい」
「はい」
「では、行こうか」
ミランダ先生は、机の横に立てかけていた騎士剣を手に取ると少し早歩き気味でい入り口へ向かった。
そして、今回潜る事になるダンジョンの入り口かつダンジョン実習の集合地点までの間、ダンジョン実習についての簡単な説明をしてくれている。
「ダンジョン実習なんだが、簡単に説明しておく」
「はい」
「この学校の敷地内には三つのダンジョンがある。
一年生は、初級ダンジョンへ潜る事となる。
この初級ダンジョン、学校の方で用意した人工のダンジョンだ」
「へぇ~」
「まぁ、モンスターも罠も宝箱も全て初心者用だし、最下層も十階で終わりだ。
と言っても、どれも本物だし、死にはしないが怪我もする。
そして、何より初心者ダンジョンは管理している先生によって性質が変わるのも特徴的だな」
「他の二つは?」
「中級ダンジョンと上級ダンジョンだな。
初級ダンジョンをクリアしたパーティーから順次、中級へ行って貰う事になる。
中級ダンジョンからは本物で、最悪死ぬ場合もある危険なダンジョンだ。
地上五十階層で一層の広さは初級より狭い造りになっている。
この校舎を出てすぐ右手に見える塔が中級ダンジョンだ。
一ヵ月毎に罠や宝箱の配置や内容が変わるが、モンスターは変わらない」
「過去にどのくらいの生徒が命を落としているのですか?」
「気になるか? そうだな。 一学年十人弱ってところだ」
「え、そんなにですか」
「ああ。
で、その人数と同程度の者が仲間の死に耐え切れず自主退学している。
そして、上級ダンジョンなんだが、まだ踏破されていない未開のダンジョンだ。
何よりここは、一般開放されていて、モンスター・罠・宝箱全てが学生レベルを超えている」
「そんなの学生に開放して良いのですか?」
「問題ない。
中級をクリアできる実力があるなら、上級へ行っても死ぬ事はないだろう。
ちなみに、過去に中級ダンジョンをクリアして上級に挑めたパーティーは五組しか存在しない。 ここは不思議な所でな。
入り口は一箇所しかないのだが、通る経路はパーティー毎で異なる。
一日に何組も潜るのだがすれ違う事がほとんどない。
また、入る毎にダンジョンの構造も違うもんでマッピングが出来ない。
だが、危険に見合った報酬が宝箱の中には存在している。
ちなみに一般の入場料は、五千ギランだ。
学校にとっていい稼ぎになる。 ぜひ、卒業したら来てくれ」
やっと、ダンジョンの説明が終わったぐらいで校舎の外に出る。
先ほどミランダ先生が言っていた様に右手側に高い塔が見える。
「高いだろ? 現在の技術では再現不可能な高さらしい」
「はい」
「塔の地上が中級ダンジョン、地下が上級ダンジョンとなっている。
ちなみに、上級ダンジョンはこのユニ・バロスの地下全体かそれ以上の広さがあるらしいぞ」
「はぁ」
「こっちだ」
しばらく、道なりに進むとミランダ先生はT字路左側を指差した。
ここを右に曲がれば塔へ行けるらしい。
「ここから第二グランドまでの間に初級ダンジョンがある。
取り合えず、Aクラスは第二グランドで一時的に集合だ」
初級ダンジョンの入り口と思わしき頑丈そうな石材で出来た小屋の前を通り過ぎる。 そこから道なり二百メートル先の方に第二グランドらしき広場が見えてきた。
そして、第二グランドの前に来ると三十人ぐらいの俺と同年代の男女が何個かのグループに分かれて集まっているが見えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます