第4話・キミは本当にハーフエルフか?

 出発の日、極東武具用品店に寄った俺は見事に仕上がった仕込み刀を受け取った。

柄の先端に野球ボール大の魔法触媒を金と銀であしらった円環で装飾し、鞘は派手過ぎない程度に金にて装飾がなされている。

この世界で金は、それほど価値がある訳ではなく装飾細工としてよく使われる一般的な素材だ。 逆に銀の方は対アンデット用の素材で価値が高まっている。

ロッドとしての性能も一級品と見て間違いなく、中に刀が仕込まれているとは誰も想像出来ないだろう。

そうそう、やっとこの刀の銘が判明した。

封刀ほうとう炎雷狂騒えんらいきょうそう

今は仕込刀として生まれ変わったので『封杖・炎雷狂騒』と言ったところだろう。

魔法触媒自体に属性がないが、属性倍加が付与されており本来、刀が持っていた炎・雷の属性効果が倍増している。

それは杖形態だけでなく刀形態でも効果があるらしい。

 そして、俺は受け取ったそのままの足でロス・バロスを出てユニ・バロスに向けて走っている。

走る必要はないのだが、このアキラ・ローグライトとしての脚力とスタミナの把握の為に行ってる。


 まぁ、結論から言えば歩いて二日の距離を一日と半日で着いた。

軽く走った程度なので半日程度しか時間短縮を出来なかったがスタミナが切れなかったのは自分でも驚いた。

ちなみに、途中小さな宿場町で一泊しているのでずっと走っていた訳ではない。

さて、ユニ・バロスだが入る前、外見だけを見ればロス・バロスより小さな都市だなぁ程度の印象だったが、正門を潜り中に入ると普通とはかけ離れた都市だった。


 まず、人だ。


 すれ違う人が全て俺の様な若い年代の男女ばかりで種族も多種多様、E/Oと共通する人種も多い。

しかし、気持ちエルフ種の割合が少ない様に思える。

ほとんどが人と獣人でそれ以外はチラホラと言った感じだ。

建物の多様性はロス・バロスと変わらないが、大通りに面した所は何かしらの店が集中して建ち並んでいるが、そこ以外は大きく特徴的な建物が四棟が目立って均等な位置に建っている。

何が特徴的かというと各々特徴的なシンボルが一番高い所に飾られている事だ。

剣と盾を交差させたシンボル、メイスとロッドを交差させたシンボル、鍵穴と鍵を交差させたシンボル、弓と銃を交差させたシンボル・・・だ。

これだけで何を表しているのか大方分る。

そして、最後に大通りの最奥には都市の半分の敷地を占有した何棟もの建物が連結しあった所・・・、間違いなくこれが校舎なのだろう。

校舎だけでなく、大きめのグランドとコロシアムの様な建物が三つずつ、これだけでその巨大さがわかる。


 俺は最奥の校舎まで歩いて行き正門の所に立っている守衛に入学許可書を渡す。


「ふむ、編入生か・・・。

これを持って正面の建物の入り口近くの受付へ行くと良い。

後は、そこにいる人が案内してくれるだろう」

「はい」


 正門から入り百メートルほど歩き校舎の中へと踏み入れる。

生徒の姿は見当たらない、恐らく教員用の入り口なのだろう。

日本の様に下駄箱などはなく、左側に小窓があり小さな事務所が中にある。


「すみません。 これ・・・」


 小窓の前に入学許可書を置き声を掛ける。


「あー、はいはい、編入生ね。

じゃぁ、これを持って①番って書いたプレートのある部屋に入ってね」


 入学許可書の下を切り取り、新たな用紙へ張り付けて渡される。

そこには適正検査と書かれている。

俺は渡された用紙を持ってすぐ目の前にあった①番の部屋へ入る。


「ぉ、やっと来たか今期初の編入生。 正直待ちくたびれた・・・」


 欠伸をしながら白衣の教員は、俺が渡した用紙を確認する。


「ん~、アキラ・ローグライトさんね・・・。 んじゃ、そこに座って」


 指示された座席の前に占い師が使う様な水晶球が置かれており、怪しい光を宿している。


「んで、この水晶にどちらの手でも良いのでかざしてくれるかな」

「・・・」

「あ、大丈夫だよ。 この光は魔力の残照ってだけで無害だから」


 俺は恐る恐る右手を水晶へと置く。


「んじゃ、失礼。 ”アナライズ”」


 白衣の教員は、俺の手の上に自身の手を添えスキル?を使う。

全身によく分らない感覚が伝わってくる。


「・・・。 キミは何者だい? ”トランザライズ”」


 手に添えていない方の手を適正検査の用紙へとかざすと文字列が転写されていく。


「なに、もの??」

「これを見てみると良い」


 渡された適正検査用紙にこう書かれていた。


◆適正検査◆


氏名:アキラ・ローグライト

年齢:15

性別:女

種族:ハーフエルフ

適正職業:剣士・魔法師・斥候・精霊召喚師・神官

適正属性:全


主能力(潜在能力)

腕力:E+(S+)

脚力:D+(S+)

体力:D (A+)

魔力:E+(A+)

霊力:D+(S+)

天力:D-(S+)


副能力(潜在能力)

視力:E+(A+)

技量:D+(S+)

敏捷:D+(S+)

詠唱:D (S+)

魅力:S (S+)

運気:F-(C-)


総合能力(潜在能力)

E (S+)


「・・・」

「こんな結果、教員生活で初めて見た。

キミはまだ若いから現段階で能力は大した事・・・いや、学生と見れば高いか・・・、潜在能力のほとんどがS超えなんて有り得ない」


 運低いなぁ~。


「それに属性が全って何? キミは本当にハーフエルフか?

俺の経験則から言ったらハーフエルフってのはもっと中途半端な能力が並ぶ筈だ」


 何か教員の目付きが恐いんだけど・・・。

チート能力とか神様に貰ってない筈なんだけどなぁ。

まぁ、E/Oのプレイヤーキャラは、地球人からしてみれば皆チートみたいな身体能力持っていたから、その所為かな。

分りやすく言えば、成人前の子供でもオリンピック選手並の身体能力って感じ。


「キミには自覚が足りないようだな・・・。

まぁ、良い。 この用紙も一緒に持って②番のプレートが書かれた部屋に入ってくれ」


 適正検査の教員に渡されたもう一枚の用紙にはスキル適正検査と書かれている。

部屋を出て見回すと廊下を挟んだ反対側左手に②番の部屋があった。

その部屋に入ると猫耳を付けたオネエさんがいた。


「あら~ン、可愛い子猫ちゃんが来たわ~ン」

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