第3話・なん、・・・だと!?
「・・・ハッ」
気絶していたオヤジさんが一分後ほどで目が覚める。
「んん? ここに丸太を立てていた筈なのだが、・・・はて、どこへ行ったのだ?」
どうやら、ここ数分の事を綺麗さっぱり忘れている様だ。
「まぁ、素振りで申し訳ないがそれで我慢してくれんか?」
「あ、いえ、大丈夫です。 試して見ましたがボクには勿体無いぐらいです」
忘れていたが、どうやら自動翻訳は本人にも適用されるようで、俺自身「俺」と呼称しても言葉としては「ボク」と言ってしまう様だ。
これは咄嗟にボロが出ないという事で重宝しそうだ。
「そうか、そうか」
自身が選び抜いた武器を褒められて嬉しいのか険しい顔つきでなくなっている。
「あの、もし、これに値段を付けるとしたらどのくらいですか?」
「安く見積もっても一千万ギラン、と言いたいところだが、そいつの良さが分っていて使える者なんて他にいるのかさえ分らん。 お前さんならタダでやろう」
「え、いや、流石にそれは・・・」
「なら、そいつの鞘を特注で作ってやるから、その代金を貰うという感じでどうだ?」
「まぁ、それなら・・・」
「ふむ。 で、鞘は好きな形にしてやろう。
材質やら形状やらで拘りがあるなら教えてくれるか?」
材質・形状か・・・。
E/Oで俺は仕込み杖をいくつか試作した事がある。
二つの武器を一つに組み合わせる実験の様なもので、魔術用のロッドに日本刀を組み合わせ遠近どちらでも対処できる様にした事がある。
結局、使う機会は訪れず倉庫にしまいっぱなしになっているが、ああいうのは出来るのだろうか。
「白木の鞘の先端に触媒を付けてロッド形状にしてコレを仕込ませる事は出来ますか?」
「出来ない事はない筈だ。
知り合いに腕の良い魔導具職人がいるヤツなら問題ないだろう。
しかし、白木かアレは魔法との親和性が高くて結構高価だった筈、まぁ、触媒の方を少し安価なものにすれば・・・、ふむ、大丈夫だ」
「ほんとですか!?」
「ああ、可能だ。 が、流石に製作には時間が掛かる。
そうだな。 一週間ほどしたらまた尋ねて来い。
百万で出来る最高の鞘を用意しておいてやろう」
「はいっ! また、一週間後に来ます」
「ふむ」
「次は、冒険者ギルド」
この世界に傭兵ギルドはないが、その代わり冒険者ギルドがあるらしい。
人の住んでいる地域以外は、まだ謎が多くあって見付かっていないダンジョンも未知数らしい。
ここ数百年以上、大きな戦争はなく傭兵や騎士として参加していた多くの人達が冒険者ギルドへと流れていると、神様特典の一般常識に載っている。
冒険者ギルドは、この中央大通りにあり極東武具用品店の反対側にある様だ。
というか見えている。
非常に大きく目立っており、儲かっているのがよく分る。
俺は自分の背丈以上ある扉を開け、中に入る。
一瞬、視線が俺に集まるがすぐに視線は逸れ、各々の話へと戻る。
そして、俺は新規登録と書かれたカウンターの列へと並ぶ。
「ようこそ。 冒険者ギルド、ロス・バロス支店へ」
新幹線の乗務員が着ている様な制服を着たケモミミのお姉さんがいた。
形状からして犬耳かな。
E/Oの獣人と基本同じ様で耳以外は普通の人とあまり変わらない。
「お嬢さん、ご依頼でしたら右隣のカウンターですよ」
「いえ、新規登録したいのですが・・・」
「新規登録・・・ですか・・・。
失礼かと思いますが、年齢はおいくつかしら?
見た所ハーフエルフの様ですが、それでもお若いですよね?」
「今年で十五歳になりました」
「お嬢さん。 冒険者登録の最低条件が十八歳からなのよ。
残念だけど後三年足らないわ」
「なん、・・・だと!?」
「え?」
「いえ、コホン。 十八歳・・・から?」
「ええ。 でも、十五歳か・・・条件は達成しているわね。
左隣のカウンターで入学手続きが出来るわ」
「入学?」
「ええ。 世界を股に掛ける我らが冒険者ギルドは、次代の冒険者を育てる為に各国に冒険者学校を設立し十五歳から十七歳なら無条件で入学できる。
ただ~し、卒業後、必ず冒険者になる事。
他の職業は勿論、無職も契約不履行として莫大な賠償金が請求される。
どう? それでも良いなら入学してみる?」
「はい、勿論」
「よく言った。 若人よ。 面倒だしこっちで手続きしちゃおっか」
ケモミミのお姉さんは、左隣から紙を寄こしカウンターの上へと置いた。
その紙には「入学・編入手続用紙」と書かれ、先ほどお姉さんが言った事が難しい言葉で書かれていて最後に氏名を書く欄があるだけである。
「入学っていう所を二重線で消して、編入っていう所を○で囲っておいて、それから氏名の欄に名前を記入して貰えるかしら」
「二重線・・・○で囲って名前と・・・」
「そうそう。 うん、OK」
「もう、入学式は終わってしまっていて、貴方は二ヶ月遅れて編入という形になるわ。 ま、心配しなくても貴方より遅く編入してくる子達も結構いると思うし大丈夫よ」
「そ、そうですか」
「はい、コレ」
お姉さんはカウンターの裏から一センチほどの厚みの冊子を取り出す。
「これは?」
「学校の場所を記した地図と学校案内と入学許可証よ。
このロス・バロスを出て北西へ道なりに二日ほど歩くと見えてくるのが、学園都市第十一ユニ・バロス冒険者学校。
名前通りで一つの都市でもあるから見落とす事はないわ。
編入タイミングは自分で決めて良いから準備が整ってから行ってね」
「何を持って行ったら良いのですか?」
「武器だけは自分のを持って行ってね。 それ以外は支給されるから大丈夫よ」
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