みゃーみゃー?
みゃーみゃー
みゃーみゃー
土曜日の夕方になる少し前の時間帯。昼間は中学時代の友人と遊んだ帰り道。あたりはまだ明るいので、ゆっくりとした足取りで家に帰っていた時のことだ。
ネコみたいな鳴き声が聞こえてきた。
みゃーみゃー
みゃーみゃー
ネコみたいじゃなくて、ネコだな。
しかも一匹とかじゃなくて、何匹かいそうだ。
周囲を見回せば、なぜかあかねがいた。
しかもあかねの足元には六匹の小さなネコがいる。
ネコの鳴き声の発生源は間違いなくあそこだ。
「あかね。なにやってるの?」
「あ!直くんだー!」
近くに寄れば小さなネコ達が一斉に見てくる。逃げ出さないあたり、人に慣れているのだろう。
「直くん、みてみてー!可愛いーでしょ!」
そう言ってあかねは座りネコの首元をこちょこちょしながら満面の笑みを浮かべる。
うん。そんなあかねが可愛いとか思ってしまう俺は重症だろうか。
いや、もちろんネコも可愛いけどね。ネコと戯れるあかねの方に目がいってしまうのは許してほしい。
とりあえず俺もあかねの横に座って擦り寄ってくるネコを撫でてやる。
みゃー
うん。確かに可愛いな。
もしかしなくても子猫なのか、よく道端で見かけるネコよりか一周りぐらい小さい。
「このネコたちどうしたんだ?」
「んー。おつかいで買い物してたんだけどね、帰ってるとき鳴き声が聞こえたんだ。で、どこからかなーって探していると子猫を一匹見つけたの」
「……一匹?」
今目の前にいるのは全部で六匹だ。
ということは、あとから増えたということか。
「でね、買い物した中にね、コレがあったこと思い出して、ちょっとあげてみたの!」
じゃじゃーんと見せてきたのは、大きく煮干しと書かれたビニール袋。中身がほとんどなくなっているところを見ると、合点がいく。
「あー、もしかしてソレあげたの?」
「うん。そしたらね、どこからともなく子猫たちがいっぱい来てね、気がつけばこうなっていました!」
なるほどなるほど。
なんとなくその光景が目に浮かぶ。
なんというか、あかねらしい。
「お腹すいていたのかなーちょっとあげたらぱくぱく食べてくれたんだよねー」
「それで嬉しくなってどんどんあげていったらそうなった?」
煮干しの袋を指す。正確には入っている量だ。
意図を読み取ったあかねは、困ったような顔を見せた。
「……うん。出汁をとるのに必要だったんだけど……」
「……足りる?」
「んー。ちょっと、微妙、かな」
料理についてあまり詳しくはないけど、なんとなく足りなさそうな雰囲気を察することはできた。
本当にあかねは、しょうがないなあ。
おつかいの意味、ないよね。
「まあ、もう一回買いに行ってくるよ」
よいしょっ、とあかねが立ち上がると、子猫達は何かを察したみたいだ。
みゃー
六匹のうちの一匹が一声鳴くと、各々にどこかへ立ち去ってしまう。
「ばいばーい……って、行っちゃった……」
あかねはほんの少し寂しそうだ。
たまらずあかねの頭を撫でると、不思議そうに見上げられるた。
「なあに?」
「行こう、あかね。買い物、行くんだろ?」
「直くん、一緒に行ってくれるの?」
「ちょうど暇だったんだ。もうちょっとぐらい付き合おうかと思って」
あとは帰るだけだ。このあとの予定もない。時間もまだ暗くなるには早い。
なら選択肢は一つしかないだろう。
持て余していた時間を、あかねと過ごせるのであれば、最高じゃないのか?
嬉しそうに笑うあかねを見て、この選択は間違えではないのだと確信したのだ。
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