第28話

「おい! 柵直すために外に出て行った玩具。修復するどころか、破壊していってしまったぞ! これはどういうことだ?」

 いきりたっているのはピスカの広場での騒ぎと止めた隊長と呼ばれている男だった。

「おいおい、なに言ってんだ? あんたに頼まれたやつはまだ製作中だぞ? 他ので手が込んでてな、まだ仕上がってねーんだよ」

 玩具の製作者であるロイが欠伸を押さえながらそうこたえた。

「そっちこそ、なに寝惚けたこと言ってんだ? 昨日の晩、王都の門を通しただろ?」

「いや、出してないぞ」

 二人の顔が疑問で満たされていく。

「どういうことだ?」隊長は顎に手をあてた。

「こっちが訊きたいくらいだぜ」ロイは肩をすくめた。

「じゃあ、あれはなんだったんだ」

「ほかのやつが造ったやつなんじゃねーの?」

「いや、確かにあれはきみが造ったものだった。……けど、言われてみれば確かに柵を直すだけにしては、大量にあるなと思ったが、それになんだが軍仕様のものに近かった」

 ロイの頭に閃きがあった。

「ああ、もしかしたらそいつはこの街にいる祭司に頼まれていたやつかもしれないな」

「なんで、祭司が?」

「俺に聞かないでくれよ」ロイは眉根を寄せてそう言った。

 とその時、広場に響く男の声。

「おい! だれかそいつらを止めてくれ!」

 見ると、宿屋から馬に乗った少年少女、そしてその後ろを持ち主と思われる人が走っていた。その顔はロイの見覚えのある顔だった。

「馬泥棒だ。だれか、そいつらを」

 追いかける持ち主の息はすでに切れかけている。

「おいおい、あいつら次は馬泥棒かよ」

 ロイは苦笑いして広場を疾走する影を見送った。人々を掻き分けて、馬は王都をあとにした。隊長は呟きを続けている。

「確かに妙な点はあったのだ。それに、人がいないのに玩具が動いていたようにも見えた」

「そんなのありえないだろ」ロイは嘲笑した。「人の力無しでどうやって動くっていうんだ?」

 隊長は苦笑いした。

「それもそうだな」

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