第四章 神隠しの冒険
第1話
「どーもー、入るぞー」
適当に声を上げて、俺は八雲の家へと上がり込む。「もー、ちゃんとしなよ」と言いつつ、望海もついて入ってきた。
「お前たちか。まだ他の子たちは来とらんぞ」
奥の居間から八雲が出てくる。うん、今日もいつも通りの幼女だ。でもどうしてだろう、ちっとも可愛いとは思えない。
「そっか、じゃあ居間で待たせてもらうわ」
「し、失礼しまーす」
俺は居間へと直行しようとするが、望海がなかなかついて来ない。何が起こったのかと思って振り向くと、そこでは何やら八雲が望海のことを見つめている。
「……どうしました?」
「ふむ、今日も望海ちゃんは可愛いなと思って」
「ど、どうも……」
「望海、気にすんな。行くぞ」
そう言って俺は無理矢理望海の手を引っ張る。放っておくとすぐにちょっかいを出すから困る。
居間ではテレビが点いているだけで、碧の姿はない。
それにしても、おそらく八雲が見ていたのであろうテレビには、アニメが写っていた。見ていても女子しか出てこない上に、それがやたらと友情を越えた愛情に近い何かを表現しているので、俺はげっ、と後ずさりする。
「これはのお、本州にある『ぶるーれい』とかいうやつじゃ」
「いや、それよりこれは何だよ……」
「あれじゃ、本州の文化を少し学ぼうと思ってな。向こうではどうやら『
「知らねえよ! 望海に変なもん見せんでいいわ!」
俺は、テレビの電源を切る。おい、本州ってこんなもん流行ってるのか。俺にはまったく理解できん。
「む、拓海は柔軟性がないのお」
「そんなことに柔軟性使いたくないっつうの。……で、碧は?」
「碧なら、みんなが来るまで上で待っておると言っとったぞ」
まあ、居間に来てもこんなもの見せられるのなら上で待っているというのも納得できる。ていうか、本州出身の碧が見たくないテレビってことは、本州で流行ってるってのは嘘じゃねえか。
そんなことを思っていると階段を駆け下りる音が聞こえる。そして、その音が止んだかと思うとすぐに居間の
「おっはよー! 拓海! 望海!」
俺が振り向くと、そこには俺に向かって飛びついてくる碧の姿が――、
「ってうへえ!?」
俺が叫んだとほぼ同時に碧の体が俺の体と重なる。碧の勢いで完全にバランスを失った俺は、思いっきり倒れてしまう。
バタバタ! という派手な音と共に俺と碧は畳の上に転がった。俺は
「……お、おい! 大丈夫か!?」
俺は起き上がろうと試みるが、その時にあることに気づく。
俺に完全に覆いかぶさっていた碧の、その、上半身の
「う、うーん……、ごめんごめん。急に飛びつきすぎたよー」
碧は何事もなかったかのように俺の顔を見て、テヘヘと笑う。というか起き上がってくれないと、顔が近くて……。透き通るような肌が、長い
「たっくん何してるの!」
「はい、すいません!」
望海の一声で俺はすぐに我に返って体勢を戻す。いかん、危なかった。一瞬危ない橋を渡りかけた。
「お前もやはり男だというわけじゃの、拓海」
「余計なことは言わんでいい!」
八雲の余計な一言のせいで、望海の機嫌は大変よろしくない方向に行ってしまったのであった。
▽
「でさ、これは何なの? 痴話喧嘩?」
それからしばらくして峻と奈津が集まり、全員が集まった所で本日の目的である七不思議の伝説の調査について話し合おうとしていたのだが、どうにも望海の機嫌が悪いので会議が始められずにいた。
「あー、えーと、それはなー」
「うん、ボクのせいなんだけどね。……望海、ごめん。ボクからも謝るよ」
望海は碧が謝ると、少し困ったように笑った。
「うーん、碧ちゃんがそう言うなら……、まあたっくんは許さないけどね」
「何でだよ……」
完全に俺、何もしてないっていうのに。じいちゃん、この前の言葉訂正するわ。望海の頑固な所、あんたにそっくりだ。
「ま、よく分かんないけど……、とりあえず拓海が悪いってことで始めよっか」
「おー!」
いや、そこの女子二人、よく分からんから。普通に俺を悪者に仕立て上げやがって。
「ともかく拓海、話が進まないからここは我慢してくれ」
「ま、峻が言うなら……」
確かにこのままだったら
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