第一章 小さな島の物語

おとぎ話「碧色の風景」


 昔々のお話です。

 神様の住む天上の世界に、アオと呼ばれる女の子がいました。アオは可愛らしく、まるで光り輝いているかのようであり、その上元気いっぱいで、まさに天真爛漫てんしんらんまんといった子どもで、たくさんの神様に寵愛ちょうあいされてきました。


 そのことを憎たらしいと思った他の神様の子どもたちは、アオにいたずらを仕掛けます。

 その仕掛けに引っかかってしまったアオは、天上の世界から落ちてしまい、地上の人間が住む世界へとやって来てしまいました。


 広大な海へと落ちてしまったアオのことを見た神様たちは、カンカンになって子どもたちを叱りつけ、連れ戻すように言います。


 ですが、子どもたちは連れ戻すことを考えていませんでした。


 地上から天上に戻るためには、地上と天上の間に橋を掛けなければいけません。その橋をかけるのには、神様と言えども、大変時間のかかる作業でした。


 子どもたちは謝って、他の神様たちに橋を作る協力をお願いします。

 それでも、橋ができるまでにはとても長い時間がかかりそうでした。

 その間、アオは海で一人ぼっちです。不憫ふびんに思った神様たちは力を使ってそこに大きな島を作りました。


 アオは、その島で一人ぼっちでしたが、一生懸命に生きました。魚と遊んだり、島の動物たちと遊んだり。アオは、段々とその島で生きるのが楽しくなってきます。


 ですが、楽しい日々はいつまでも続きません。

 ある時、その島を人間が見つけました。人間たちは驚いて、その島を自分たちのものにしようとします。そして、たった一人でそこに住むアオのことを気味悪く思い、追い出そうとしました。


 アオは何もできずに、追い出されないようにただじっと隠れて耐えるしかありませんでした。

 それを見た天上の神様たちはどうにかしてやりたいと思いますが、自分たちの力を使ってしまったので、もう地上に使う力は残っていません。


 そんな時、天上に住むアオの親友の神様はとんでもなく怒っていました。彼は、天上でいじめられていたアオにとって唯一の友達だったのです。強く、たくましいその親友のことをアオは本当に頼りにしていました。


 彼は、アオが海に落ちてしまった時も自分の力を使おうとしました。ですが、大人の神様に止められてそれは叶いませんでした。しかし、今回は大人の神様が止めるのも聞かず、自分の力を全て使って地上の人間たちをらしめました。そして、その力によって島は引き裂かれ、メチャクチャになってしまいます。


 それを神様のたたりだと恐れた人間たちは、島を出て行ってしまいました。

 アオは複雑な気持ちでした。人間たちはいなくなりましたが、動物たちも、魚も何もいない島に、アオはひどく悲しみます。


 そうして、アオは永い眠りにつくことにしました。

 やがて橋はかかり、永い眠りから目覚めたアオは、その橋を渡って天上へと戻っていきます。その頃には、別の人間たちがその島に住むようになっていました。その人たちは、アオが橋を渡っていくとき、空と海の間に、碧色あおいろの光を見たと言うことです。


 誰も見たことのないような、美しい光を。

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