花を手折る
物思いにふけっていた
いつもと違って、どことなく覇気のない父の後ろ姿。まるで抜け殻のようだ。
父はいつまで、喪服である
いや。もう、考えまい。
父が、望むまで――――母の死を心から受け入れる時まで、待とう。まだ子どもであるわたくしにできることは、ほとんどないのだから。
そう、瑛凛が思っていたら。
ふいに父王の歩みが、止まった。
瑛凛も立ち止まり、慌てて拱手する。
父王は、おもむろに懐から剪定ばさみを取り出した。
…………いつの間にか、亡き母が愛していた花の咲く場所まで来ていた。
そして、大切な伴侶を亡くした
パチン…………パチン…………。
齋王が御自ら手折られた花が、大地との別れを告げるように香る。
それを、瑛凛は何も言わず、ただ黙って見ていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます