第15話 天使なのか悪魔なのか

グループきめは何とか決まったものの、次なる試練が……ドゥルルルル……こいつだ!


「あ、あのー先生様……」

「ん? どうしたの朝倉さん」

「遠足の私服なんですけど……制服は……」

「だあーっめ☆」


ちょこんと人差し指を鼻の先に載せられる。

古いよー仕草が昭和だよー僕らは平成Onlyだよ!

でも昭和ってロマンがあって結構好き。

アニメも名作多いよね! ガンダムファーストとかうる星やつらとかきまぐれオレンジロードとか! 朝倉桃子、青春してます!(してない)


「朝倉さんもオシャレしてきてねー」

「お、OSARE?」


うふふーっと可愛らしい笑みを浮かべて先生は教室を出ていった。

オシャレって……遠足でしょ?東京ガールズコレクションじゃあるまいし。

しかし、困った。困りまくった。こまったさんのパンケーキ読みたいくらい困った。


「紺ちゃん、遠足用に服買いにいこー」

「どこいくー? マルキュー? ラフォーレ?」


早速カースト上位の女子たちが服を買いに行く約束をしている。

みんなさぞかし普段からオシャレなんだろうな。紺谷さんなんてルックスの良さもあって時々読者モデルのようなこともしていると聞いたことがある。


「だああああもう! どうすっぺ!? どうすっぺか!?」


もはやキャラ崩壊を起こしながら私は両手で顔を抑えてしまう。

私服何て何も考えてないよ。親が買ってきてくれたもの未だに着てるよ!

しかもそこまで身長伸びてないからモノによっては小学生時代に買ったのも未だに着る。

アクセサリーなんてものもない。

でも! だめなんだよ今回は! ダサイ恰好では行けない。葵君やノリちゃんに頼んで一緒について来てもらう? いやいや二人にそんな苦労を……。


「あ、いた。朝倉さん、ちょっと」

「へ?」


うんうん唸っていると、トントンと肩を叩かれた。

振り向くと、そこには中島君の姿があった。


「な、なんでござんしょ?」

「(ござんしょ?)遠足のしおり、取りに行くのついてきてくんない? シュンはもう部活行っちゃってさー」

「あ、うんいいよ」

「良かった。じゃあ、行こう」

「うん。葵君、ノリちゃん、ちょっと職員室行ってくるね」

「はーい」

「私たち、当日のプランいくつか考えておきますね」

「ありがとう」


教室を出て、中島君の隣で歩いているとあっという間に女子に囲まれた。

やはりオシャレ男子はモテるみたいだ。女子の視線が痛い。


「中島君、今日はずいぶん地味……大人しい子連れてんねー」

「遠足のしおり取りに行くのついてきてもらってんだよー」

「えー、そんなんあたしが行くのにぃー」

「いやいやあたしが!」


何なのこの戦場。しかも最初地味って言ったでしょ聞こえてるからね!

失礼しちゃう! なんて反論できたらいいけど正論なので無理だ。

そんな女の子を華麗にかわす中島君。高校一年生にして女性の扱いに慣れている……。

そして無事しおりをゲットして教室に戻る。


「ありがとねー」

「いえいえ」


たわいない話をしながら廊下を歩いていく。今度は女の子に囲まれないように少し通りをする。

テストがどうだったとか、こないだの球技大会がどうだったかとかそんな話に花を咲かせていた。

なのに! 中島君はいきなりぶっこんできた。


「朝倉さんさ、夜野に告白されてたよね? しかも抱き合ってなかった?」

「は!?」


誰にも見られていなかったはずの出来事を、いきなり口にされて私は思わずしおりを廊下にぶちまけそうになってしまった。

なんで……なんで知ってるの? てゆうか抱き合ってないし! 暴走した私を、レンっちが止めてくれただけだから!


「ごめんねーのぞき見するわけじゃなかったんだけどねー」

「……」


何も言えず、口をパクパクさせている私に、あの天使のような笑みを向ける中島君。

笑顔のはずなのに、その後ろに氷山が見えるのは気のせいかな。


「夜野ってモテるからねー、抱き合ってるなんて知ったらどうな」

「わー! やめてください! やめて!」


慌てふためく私を見て、中島君はさらに笑う。

なんなの天使のような悪魔の笑顔はこんな近くに潜んでいやがったか!


「な、なにをご所望ですか……」

「え? 俺そんなつもりじゃないよ?」

「うそだ!」


ひぐらしのレナになりきってその一言を言うと、次は声を出して笑いだした。

何も面白くないよーこわいよーママ―!


「でもそうだなー……」


ほらやっぱり何か企んでるじゃない!

中島君は考えるポーズをとる。そしてすぐにポーズを崩した。


「朝倉さん、遠足の時の服決まってないでしょ?」

「なっ!」

「だって先生に制服でってお願いしてたでしょ?」

「……!!」


なんなの、それも見ていたの……?

もう私、中島君恐怖症になりそうだよ。

そんな私の気持ちを知ってか知らずか、中島君はきれいな金髪の髪をなびかせてこう言った。


「当日の服、俺に決めさせてよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る