第14話 余りものには福がある?
無事に球技大会は幕を閉じて平和な日々が戻る――。
っていうのはウソでーす! 丸山礼ちゃんでーす!
残念でした! モジョ子恒例の苦痛なイベントが押し迫っていたのでした!
「では男女で5人グループを作ってくださーい」
担任の言葉と同時に、クラスメイトが次々と席を立ち、仲良しな友達のもとへと向かう。
こういう時、早くメンバーが決まる人たちは世に言うリア充と捉えて大丈夫。
ほら、紺谷さんなんて二十秒もかからず班結成しちゃったよ。
「どうしましょう……」
「俺ら友達いねえしなぁ」
これは自虐でもなんでもない。事実です。
私たち三人は、他のクラスメイトとの交わりがほとんどない。唯一話すのは前から回ってきたプリントを渡すとき。あと何か話しかけられた時。
だから困るの! こういう班を作ってください関連は!
早く結成しなきゃと思いつつも私たちはムロツヨシさんのようなコミュ力なんてものは持っていないので、他の人に「ねぇ入れて!」も言えない。ドビーダメな子!
「はーい決まりましたかー?」
「うわああああああ待って、待ってくださあい!」
担任の声かけに、ご慈悲を! とでも言わんばかりの悲痛な声で答えるノリちゃん。
慌てふためく様に、どこかしらぷぷぷと噴き出す声すら聞こえてくる。
「え? あなたたち、班出来てるじゃない」
「え?」
「は?」
何言ってるの先生! いじめ? 私たち三人だよ?
「朝倉さん、望月さん、ノリちゃん、藤原君、中島君……この五人でしょ?」
「え?」
「え?」
しばらく先生といえ? え? を言い合う羽目になってしまった。
藤原君? 中島君? えーと……なんで?
だって、その二人は――。
「いいだろ、俺らも余ってんだよ」
「一緒のグループになろうよー」
藤原君、なにその鋭い目つき! 今にもビーム撃てそうだよ!
みくるビームじゃないもっと強烈なの!
そして対照的に何を天使のようなほほえみ浮かべてるの中島君!
藤原君と中島君。二人は私たちと別の意味でクラスの中では浮いた存在だった。
短めの黒髪に、切れ長の目。不機嫌そうな薄い唇。耳には黒いピアスがつけられており、制服のシャツのボタンは常に二つ開けられている。一部女子からはその隙間から見える浮き出た鎖骨がセクシーと評判でもある。そんなヤンキー系高校生が藤原君。
ストレートで少し長めのサラサラな金髪に、華奢なネックレス。朱色のネクタイはゆるゆるで紺色の少し大きなカーディガンが良く似合う。ズボンのすそを少し折り曲げで、これまたお洒落な靴下がちらりと顔を見せている。そんな校則全無視のオシャレ人間が中島君。
そんな二人は、私たちとは別の意味で浮いた存在だった。
「はい! もう決まりね! 決まり!」
パンっと手を叩いて担任がいそいそとグループのメンバーを書いていくのを、私たちは止めることが出来なかった。いや、もう確定事項なのだ。
だって、私たち以外余ってないし!
余り者同士で組まされるのは慣れっこだけど、ヤンキー系とオシャレ人間と同じ班になったことはなかった。だ、大丈夫なのかな?
「よろしくねー」
「……」
頬杖をついたまま、ニコニコと中島君がそう言うと、藤原君は鋭い目つきはそのままに微かに頷いた。私たちはよろしくお願いしますと声をそろえた。
だ、大丈夫なのかな!?
「あ、それと当日は私服ですからねー」
そ、そっちも大丈夫かな!?
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