異世界

 夜、寝る頃になって父さんが話しかけてきた。

「なぁ、香織ちゃんのこと、好きなのか?」

「うん、好きだよ。あと、……」

 何人かの友達の名前を言った。父さんは苦笑して、

「いや、そうじゃなくて、一人の女の子として、好き?」

 と言った。

 え?一人の女の子として?それは、つまり、俺が香織に恋してるか、ってこと?まさか、そんな……。

 でも、思い出す。香織と一緒にいるとたまに胸がドキドキする。今日も、いつもと違う場所だからか、はしゃいでいるように見えて、何度もドキッとした。胸が締め付けられるようなときもある。ずっと、一緒にいたい、そう思う。

 でも、これが、恋……?マンガで読むのと同じ、ような気もするけど……。

「分からない……。でも、香織と一緒にいるとドキドキするし、一緒にいたいって思う……」

 自分の気持ちに整理がつかないままだけど、正直に答えた。

「そうか、分からない、か。じゃぁ、もし、誰か好きな人ができたら、その時はその子のこと、大事にするんだぞ?」

「うん」

 俺は、頷いた。

 でも、俺が、香織を……?分からない。分からないけど、この胸を締め付けるような苦しみは辛いけど、それでも、嫌じゃなかった。

 じゃぁ、やっぱり、俺は、香織に恋している……?そう、なのかもしれない……。

 そう思った瞬間、世界が変わったような気がした。それこそ、本当に異世界に来たかのような……。



────────────────────────────────

 寝る前にあたしはいっくんに心の中で話しかける。

 異世界なんて、あたしはずっと昔に来てるんだよ?そう、あの日──


 いっくんを好きになったあの日に世界は変わったんだから。

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異世界へ 星成和貴 @Hoshinari

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