入口
その日は部活が終わってすぐ、走って家に帰ったんだ。
バラバラ光る赤い点滅ランプとカンカンカンカン音がうるさくて。
ローカルな踏切の遮断機が下りてきたけど、急いでたからそのまま走り抜けた。
たしか、夕方の6時くらいだったと思う。
家に着いて、まず玄関で靴を脱ぎ捨てて、ギリギリで間に合ったテレビを見ようとリビングのドアを開けた。
妹が倒れてた
目を開いているのにピクリとも動かないし、なんか肌の色も悪く見える。
その横にお父さんが居た
妹を見下ろすように立っていて、こっちには気付いてないみたいだった
なんでもう居るんだろう。まだ仕事のはずなのに…
そう思ってたら、台所からお母さんが大きな口を開けて出てきた
なんでかわからないけど、両手を握ったり開いたりしながら妹と父親の方に向かっていった
いつも明るくてかわいいお母さんだけど、今はなんだか気持ちが悪いって思った。
「」
よくわからないけど、変になったみんなに話しかけようとしたら、後ろから口を押えられてそのまま引っ張られた。
身体をねじって顔を見た
僕だった
僕が僕をものすごい力で家の外まで引っ張っていく
『
オト なイ ここ 喋る 僕 ハ だめ
居ないハズ ここ 危険
ぼく 妹 終ワり
ぼく 早く 元のとコ ぼく 帰って
喋ッた ダめ 終わリ 妹 終わッた 音 コエ 出タ
』
ローカルな遮断機の前で、僕がノートの切れ端に書いて見せた。
頭のよくない僕だけど、なんとなく意味がわかったような気がして頷いた。
僕が僕の後ろを指差した。
赤い点滅ランプがバラバラに光って、遮断機がゆっくり降りていく。
背中を押された
学校から帰ったときと同じように、そのまま遮断機を走り抜けた
電車が通った音がしなかった。
あと、カンカンうるさかったのがピタリと止んだ。
そういえば最初もそうだった。
違う道から家に帰った
お母さんは晩ご飯の準備中で、お父さんはまだ仕事で帰ってきてなかった
お母さんはニコニコして 早かったのね って笑って言ってくれた。
お父さんは毎日7時か8時に帰ってくる。
今日は8時ちょっと前に帰ってきた。
それから家族みんなでご飯を食べた。
美味しかったし、今日も楽しくご飯を食べた。
いつも通りの家だった
よかった
おいしい
よかった
おいしい
楽しい
帰ってこれた
よかった
おいしい
いつも通り
みんなでご飯を食べる
家族 3 人 全員そろって 楽 しく ご 飯を 食 べ た 。
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