そうだね
「べったべただなー…そのパターン、もう飽きたよ…」
「そうだね」
ある日の深夜、借りてきたDVDを見ながら部屋で寛いでいた。
時間的にも合っているから心霊系を選んだのだが、内容がもう、笑えるくらいべったべたで、何故これを選んでしまったんだろうと後悔した。
「はいキターーー!振り向いたら居る系。っていうかなんで一人で行くの?わかりきってんじゃん…」
「うん」
テレビの前に座り、缶チューハイを片手に悪態を吐く。
「はい出た。"あれは何だったのでしょうか"。お決まりの台詞。大体ソレがなんだったか、はっきりわからないーって言って終わるんだよ。」
「そうだね」
「先が読め過ぎてっていうか、定番の寄せ集めすぎて逆に寒いわ。」
「うん、そうだね」
うす塩味のポテトを口に放り投げ、変わらない塩味の美味しさにますます酒を飲む意欲が沸いてくる。
「最近の心霊番組もさー、素人が作ったやつとか動画サイトから引っ張ってきたものとか、企業がブームにのって作った安っぽいものしか無いし、喧嘩売ってんのかね?」
「うん、そうだね」
窓の外がだんだん明るくなってきた。もう夜明けの時間らしい。
まだ1時間以上も、この笑える出来のDVDを鑑賞しなければならない。
「無駄に長いんだよ…これだけのものなのにさ……」
「そうだね」
机に置いている缶チューハイは残り2本、ポテトはこの一袋をゆっくりと味わって食べている。
「まあ、こっちとしてはこのまま朝が来てくれたほうがいいんだけど…」
「うん、そうだね」
DVDを観終わったら、カーテンを開けて朝日を浴びるのだ。
清々しい朝を堪能し、 確 認 し な け れ ば な ら な い 。
朝が待ち遠しい。
「眠気、消えちゃった……」
「うん」
言い忘れていたが、私は一人暮らしである。
先月、今までムールシェアしていた友人は、上京するため出て行った。
一人の時間が快適すぎて、友人を見送った日から人を呼んだことはない。
「………笑える。」
「うん、そうだね」
さっきから隣で相槌を打っているのは"誰"なんだろう。
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