コーヒーブレイク 2

 コーヒーには甘いもの、とりわけドーナツがあう。


 異論は認める。


 例えばここで異論を認めなくてもいろんな意見があるのだから言ってみなくては始まらない。


 今の主張は一片の正しさこそあれ残念ながら誰にでも適応されるわけではない信条に分類されるような事柄で、主義と言っても差し支えない。


 映画だったかなにかで「軍人は戦場に出る前に作りかけのプラモデルやら手紙やらをわざと残して『戻ってやること』を作って生き残ろうとする慣わしがある」とか聞いたことがあるが、うちの家庭の話でいえば「出かける前に出先でなにがあっても恥ずかしくないように家を綺麗にしておく」として出かける度に大掃除であった。


 その習慣が私にも引き継がれていれば、少しは家も落ち着くのだろうが。


 店員に声をかけ、コーヒーのお代わりを戴く。この店は人がほとんど持ち帰りなばかりに他の店のように注ぎに周ってきたりはないようだ。個人の時間を大事にしてくれると私は納得している。


 信条や主義は結局環境が決めるものだと思う。味覚、時代、繁盛具合なんかがあれやこれやするのだからややこしい。つまりは信条、それそのものだけを聞いても「そうなんですかそういった考えをお持ちなんですね。」という返答以外にない。物語であれば一つの終点なのだ。


 ここで「私の考えはあなたのそれと違う。『修正(矯正か?)』すべきだ。」と思うのはよくある争いの種である。信条には易々と変えられないだけのドラマがあるのだから。


 もし実際に信条に触れる時があれば「なぜそうお考えられるのかお聞かせ願えますか?」これで終点から『身の上話』という始点に早変わりだ。しかし『昔からそうだったから』と言われたことは数知れず、この返しもまだ工夫が必要なのだろう。まったく


 飲み放題のやや薄めのコーヒーをぐいと飲み干す。店員と目が会う。


 いそいそと私は身支度を整える。一日に三杯ものコーヒーは私の胃が受け付けてくれないからだ。鏡を見ながら鍛えた営業スマイルで店員とコンタクト試みた。


 成功率は半々といったところだが…どうやら成功したらしい。


 一日に呑むコーヒーは二杯まで。これが私の信条だ。


 <つづく>



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