11ー9


 目には目を、歯には歯を……、そして、巨大ロボには、巨大ロボを。


 うむ、まったく違和感のない、完璧な理論といえるだろう。これはまさに、太古の時代から法律として定められるほどの真理であって、まったく一分いちぶすきもない見事な論法として、どこに出しても恥ずかしくないと、自負している。


 つまり、俺は間違っていない。証明終了。


 よーし、やってやるぜ!


「いえ、しかし……」


 というわけで、気合を入れた俺だけど、なにか行動を起こす前に、なんだか困ったような顔をしたデモニカに、呼び止められてしまった。


 でも、その気持ちは、よく分かる。


「そんな巨大ロボットなんて、うちにはないぞ? どうするんだよー?」


 まったく、レオリアの言う通り。我らがヴァイスインペリアルには、巨大ロボットなんて豪華な兵器を作る余裕なんて、これまでなかった。まあ、必要がなかったとも言えるけど、それはそれ、これはこれだ。


 事実として、俺たちの組織に、巨大ロボットと呼べるものは、存在しない。


「あ~、分かった~! 統斗すみとちゃん、やるつもりでしょ~!」

「そう、その通り!」


 しかし、そんな些細ささいな問題を解決する方法に、どうやら、ジーニアも思い当たったようなので、嬉しそうな彼女に、俺も力強くうなずかえす。


 そう、やることは決まってる。


 それでは、始めましょうか!


概念がいねん掌握しょうあく!」


 やる気にちている俺は、自らの中にひそむ神器の力に手を伸ばし、その全てを使って、俺が思い描く、俺の理想を、命気プラーナ魔素エーテルを使って、具現化してみせる。


 このくらい、今の俺なら、なんの問題もない。


 八咫鏡やたのかがみの力のおかげで、俺の中から無限にす命気に、周囲の魔素をひたすらあつめ、混ぜ込み、組み立て、構築する。


 設計図ならば、この前、マリーさんの研究室で見たことがあるし、まだちゃんと、覚えている。そこにアレンジを加えて、イメージを完璧に再現すればいいだけだ。


 つまり、要領としては、このカイザースーツをつくるのと、なにも変わらない。


 ただ、少しだけ規模が、大きいだけで。


神機じんき創造そうぞう!」


 そして、俺の思い通りに、この採石場の中空に、目の前の敵であるマーブルロボと比較すると、かなり小型ながらも、全体のバランスが整った漆黒の人型ロボットが、まさに一瞬で創造される。


「――とうっ!」


 次の瞬間、俺は自らが生み出した人型ロボットの胸の辺りまで、ひと息で跳躍し、まるでそれに応えるように開いたハッチから、操縦席へと乗り込む。


「まだまだ! 神機創造!」


 そして、俺はこのテンションに任せて、次の一手に打って出る。


 さあ、ここからが本番だ!


「あ、あの、これは……?」

「おおー! カッコいいー!」

「わあ~、すご~い!」


 巨大な蝙蝠こうもりのようなメカを、デモニカの前に。

 同じく獅子ししのようなメカを、レオリアの前に。

 そして蜘蛛くものようなメカを、ジーニアの前に。


 それぞれ漆黒のロボットを、俺は思うがままに、創造する。


「さあ、みんな、それに乗って!」


 そして、次のステップに移るため、俺は愛する者たちに、指示を出した。


「えっ? 私たちが……、乗るんですか?」

「なんだ、なんだ? どうすればいいんだ?」

「ほらほら~、二人とも~、早く早く~!」


 とはいえ、あまりに唐突すぎる俺の言葉に、当然ながら戸惑うデモニカとレオニアだけど、唯一ジーニアだけは、全てを理解したようで、喜び勇んで、ハッチを開いて待っている彼女専用のロボットへと、乗り込んでいく。


 そんな彼女に催促さいそくされて、それぞれ頭の上に、大きな疑問符を浮かべているような顔をしながらも、デモニカとレオリアも、おずおずと搭乗していく。


 よし! どうやら準備は、整ったようだ。


 それでは……!


「――いくぞ! 合体だ!」


 そして、俺の掛け声と共に、あっという間に変化が……、いや、変形が起きる。


 俺の乗っている人型ロボットを中心に、変形と分離を繰り広げたジーニアの乗っている蜘蛛型のロボが、その八本の脚を、それぞれ二つ組み合わせて足と腕に、本体は下半身となり、レオリアの乗る獅子型のロボは、その頭部を胸となる位置に移動させ上半身に、そして、デモニカの乗った蝙蝠型のロボが、背面へ回ると共に、その翼を大きく広げ、同時に収納されていた頭部への追加パーツを射出すると、この全てが、見事なパズルのように、念願の合体を果たす。


 そう、これこそが……!


「――ギガン・シュバルカイザー!」


 俺の声に合わせて、背中では悪魔の翼が羽ばたき、この胸にいる獅子の頭がえ、蜘蛛の脚を束ねた四肢を自在に動かし、おおよそ、眼前のマーブルロボと同じ程度のサイズになった漆黒の人型ロボが、大見得おおみえるようにポーズを決める。


 やった、成功だ!


「うわっ! なんだこれ!」

「うんうん、完璧~!」


 俺の設計通り、合体と同時に、それぞれのコックピットから移動し、この胸にあるメインの操縦席へと到着したレオリアが、目を丸くして驚きの声を上げ、ジーニアは満足そうに、この実にメカメカとしたロボットの計器類を見渡している。


「あ、あの、統斗様?」

「はい、なんですか?」


 そしてデモニカ……、というよりは、いつもの契さんみたいな口調で、なんだか、おどおどと尋ねられてしまったので、俺としては、答えるしかない。


 やはり、共に戦う仲間として、少しでも疑問は解消してあげなくては。


「その、こういうことを、聞くべきではないのかもしれませんが……」


 というわけで、かなり躊躇ためらった感じで、それでもなんとか、しぼすようにして、デモニカは、その疑問を口にした。


「わざわざ、合体した意味は……?」


 なるほど。


 なるほど、なるほど。


 その疑問は、もっともだ。俺の力を使うのならば、そもそも、こんな面倒な合体をする必然性はなく、そんな手順を踏まなくとも、最初から、完成した巨大ロボットを創造してしまえば、済む話であるということは、自分でも分かってる。


 まあ、別々に動くことで広い範囲をカバーできるとか、それぞれの用途が違うから分離状態にも意味はあるみたいな反論はできなくはないけれど、今回みたいなケースでは、まったく関係がないということも、もちろん分かっている。


 分かっているので、これにはちゃんと、別の理由があるのである。


「はっはっはっ、そんなの決まってるじゃないですか」


 というわけでは、俺はほがらかに笑いながら、その大切な理由を口にした。


「もちろん、格好良いからですよ!」

「もちろん、格好良いからよ~!」


 おお、俺とまったく同時に、そして、まったく同じことを、ジーニアが言い切ってくれたので、まったく心強いったらない。そう、これは効率の話ではなく。


 ロマンの問題なのである。


「わははははっ! 本当だ! なんだか分かんないけど、かっこいいぜー!」


 うんうん、どうやらレオリアも、この素晴らしさを分かってくれたようで、とても喜んでくれているようだし、まったく感無量というやつだ。


 それでは、色々な問題が、クリアに解決したことだし……!


『な、なんだと!』

「ははっ! 驚いてる暇はないぞ、マーブルファイブ!」


 奴らからすれば、突然出てきたように見えるだろう、自分たちのロボと同じくらい大きい人型兵器の登場に、正義の味方の上げた驚きの声も、よく聞こえる。


 よしよし、どうやら各種センサーも、正常に稼働しているようだ。


「それでは、いくぞ!」

『くっ、このっ!』


 それならばと、俺は自らが創り出したロボットの性能を、さらに確かめるために、手元にある操縦かんを適当に動かし、ペダルを踏み込んで、こちらから一気に接近し、正義の味方の巨大ロボットへと、殴りかかっていく。


 ちなみに、俺には人型ロボットの操縦法なんて、よく分からないので、こうやって操縦してるような動きをするのは、全てフェイクで、実際には、この操縦桿を握っているだけで、俺の思考と、このギガン・シュバルカイザーの動きが完全にリンクするように、最初から設計してある。


 まあ、つまり、俺自身が、こんな派手な動きをする必要はないんだけど、それは、なんというか、テンションが上がったすえのノリということで、見逃して欲しい。


 ちなみに、計器類は本物というか、実際の数値を表しているのは、小さなこだわりだったりする。うん、格好良い。


『舐めるなよ!』

「おっと! やるじゃないか!」


 こちらの一撃に対して、マーブルロボはガンッと重い音を立てながらも、しっかり防御した後で、見事なカウンターパンチを放ってきたので、俺は紙一重のタイミングになりながら、なんとか回避する。


 実際に動かしてみて、分かったのだけれども、ここまで巨大なロボットになると、例え人型でも、俺の思ったより動作が遅いというか、重く感じてしまう。


 そのわずかな誤差を、ギアや回路を組み替えることで即座に修正しつつ、ついでに、このコックピットのモニターには、そのまま、ここから見える景色を映し出していたけれど、どうにも距離感が掴みづらいので、頭部にメインカメラを創り、変更する。


 こういう細かい調整を、その場その場で瞬時に行えるのも、この巨大なロボットであるギガン・シュバルカイザーが全て、俺の命気と魔素で創られてるからだ。


 うん、便利。

 そして、エコ。


「ほらほら、こんどはこっちからだ!」

『くうっ! 負けてたまるか!』


 というわけで、格段に動きが良くなった巨大ロボットを操って、俺はガンガンと、攻勢に打って出る。感覚的には、普段カイザースーツを使っているときと、ほとんど変わらないので、俺の一挙手一投足いっきょしゅいっとうそくで大地が揺れるというのは、変な気分だ。


 なので、この感覚のズレを埋めるため、俺はただひたすらに、拳を繰り出し、蹴りを放ち、試行錯誤を繰り返す。 


「おおっ! いいぞー! やれやれー!」


 巨大なロボット同士が、お互いに、その巨体を駆使して、轟音と火花を撒き散らしならが、殴り合う。そんな大迫力の戦闘に、レオリアが無邪気に歓声を上げる。


 うんうん、やっぱりこういうのは、どうしたって興奮してしまうものなのだというわけで、俺の中に、さらなるやる気が満ちていくのを感じる。


「そらっ!」

『ふんっ!』


 タイミングを計って、俺はマーブルロボが突き出した右拳を掴み、続けて放たれた左拳も確保して、がっちりと、押し相撲の格好に持っていく。


『うおおおおっ!』

「おおっ、凄い馬力だ!」


 そして、そのまま強引に、そして期待通りに、こちらを押してきたマーブルロボに対して、力強く踏ん張り、拮抗きっこうした状態を演出しつつ、冷静に様子をうかがう。


 よし、そろそろいいだろう。


「……ちくしょう! 奴らを倒すには、パワーが足りない!」


 俺は満を持して、これ以上はないというくらい会心の演技で、痛恨の表情を浮かべながら、苦悶くもんの声をしぼす。


 さあ、やるぞ!


「えっ? あの、統斗様。計器を見る限りでは、まだまだ出力に余裕が……」

「なんてこった! あと少し、本当に! あとちょっとなのに!」


 悪いけれど、デモニカの正しすぎる正論は、スルーさせていただこう。


 こういうのは、勢いが大切なのだ。


「それでそれで~、どうするの~、どうするの~?」

「でも、大丈夫なんだ!」


 これからなにが起きるのか、どうやら察しがついた様子のジーニアが、楽しそうになにが起こるか待っている。


 それでは、ご期待に応えましょう!


「俺たちは、独りじゃない!」


 こうなったら、やるべきことは……、いや、やりたいことは、決まってる。


 その実現のために、俺はさらなる命気を、己の中から引き出し、魔素を集束させ、頭の中で設計図を練り上げる。


「というわけで、再び神機創造!」


 そして、俺の願望を叶えるように、先ほどと同じように、俺の命気と周囲の魔素で構成された巨大なメカが、新たに五つ、採石場に創り出された。


「さあ! みんなの力を、貸してくれ!」


 そして俺は、それぞれ新造されたメカの前で呆然ぼうぜんとしている、俺が搭乗を望む彼女たちに、熱く熱く、声をかける。


『えっ、ちょっ! アタシたちも、これに乗るの?』

『これは、困りましたね……』


 黒をベースに、赤いラインが入った狼型のロボットを前に、エビルレッドは困惑の中にいるようだし、同じく黒い本体に青で装飾されたユニコーン型のロボの前では、エビルブルーが動けずにいる。


 だけど、それも仕方ないか。

 いきなりすぎる要求に、戸惑うなという方が、無理な話だろう


『なにしてるの! いくよ、みんな!』


 しかし、あの中で唯一、こういう展開に理解があるエビルピンクが、率先そっせんして黒いボディを桃色で縁取りした大鷲おおわし型のロボットに乗り込みながら、他のメンバーに声をかけてくれている。


 うんうん、やっぱり、そうこなくちゃね!


『ええっと、なにをどうすればいいのか……』

『えーんっ! 運転なんて、できないよー!』


 どうやら、こうなってしまったら仕方ないと思ってくれたのか、エビルグリーンは黒地に緑で紋様が描かれた象型のメカへと、エビルイエローは、黒に塗られた黄色のペイントが鮮やかな、チーターのような猫型のメカへと、恐る恐る乗り込む。


 そして、それは他のメンバーも同じだ。


『わあっ! 皆さま、うらやましいです!』

『姫様……、おかしなものにあこがれるのは、おやめください……』


 しかし、残念ながら今回は、竜姫たつきさんと朱天しゅてんさんは、お留守番ということになってしまった。もちろん、チャンスがあれば彼女たちにも協力して欲しいのだけど、今のところは、これで十分なので、仕方ない。


 できれば、マーブルロボのさらなる活躍に、期待したいものだ。


「よーし、それじゃ、やりますか!」


 とにもかくにも、エビルセイヴァーが全員、俺が創り出したメカに乗り込んだのを確認して、俺はマーブルロボを吹き飛ばし、意識を集中する。


 よーし、一気にいこう!


「――リ・ユニオン!」


 俺の掛け声と共に、見事な勢いで空中へと飛び立ったエビルセイヴァーのメカが、それぞれ分離と変形を繰り広げながら、一つ一つが強化パーツとなって、この巨大な人型ロボットへと、装着されていく。


 本当だったら、エビルセイヴァーのメカだけで合体し、人型の二号ロボになる予定だったのだけれども、今回は省略だ。無念である。


「ギガン・シュバルカイザー・ツヴァイ!」


 そして、俺の声に合わせて、目にも止まらぬ速さで、全身に武装を追加し、一回りほど大きくなった巨大人型ロボットが、見事な決めポーズをとった。


 やっぱり、こういう演出は、相手を威嚇すると言う意味でも、大切なのである。


『な、なにいっ!』

「さあ! 続きといこうか、マーブルロボ!」


 こうして、あきらかに大幅なパワーアップを果たした俺たちに向けて、驚愕の声を発しながら、動きを止めた正義のロボの隙を、俺は見逃さない。


 さっきまでとは比較にならない加速で、俺は一直線に、前へと進む。


「……なんだか、狭くない?」

「この人数ですから、仕方ないでしょう」


 なんて、格好つけた途端、先ほどのデモニカたちと同じように、それぞれの操縦席から、このメインコックピットまで移動してきたエピルレッドとブルーが、なんだか呑気のんきな会話をしているけれど、そんな余裕があるのは、この加速度を軽減するための装置を、俺がしっかりと再現できているという証拠で……。


 ……うん、確かに九人も同じ場所に集まると、狭いな。


 次があったら、改善しよう。


「わー! すごいすごい! 戦ってる! 本当に戦ってるよー!」

「ちょ、ちょっと、ピンク! 落ち着いて!」


 とりあえず、興奮した様子で、目の前のモニターを食い入るように見つめてくれているエビルピンクの歓声を力に変えて、俺は気持ちを立て直す。


 そんなリーダーをおさえるエビルグリーンは大変そうだけど、頑張ってください!


『こうなったら! くらえ、フルファイア!』

「おっと、そいつはもう、見切ってる!」


 強引にせまるこちらに向けて、マーブルロボの全武装が開き、こちらに向けて一斉いっせいに放出されるけど、そんなものは問題じゃない。このギガン・シュバルカイザーの頭部に装備されたツクヨミ・レーダーならば、あらゆる攻撃を事前に察知し、即座に補足することが可能だ。


 俺は巨大な魔方陣を展開して、相手の攻撃を全て防ぎつつ、さらに進撃する。


「どりゃあああ!」

『な、なんだ、このパワーは! 俺の、俺のエネルギーが、押されているだと!』


 そして、そのまま組み付いた瞬間、思い切り力任せにマーブルロボを押し切って、採石場の崖へと叩きつける。


 マーブルパープルが、なにやら驚いた声を出しているけれど、この程度は当然だ。この巨大人型ロボットに積み込まれたアマテラス・エンジンを舐めないで欲しい。


 というわけで、俺は、その力を誇示するように、マーブルロボを締め上げる。


『くうううっ!』

「ああっ! なんてことだ! トドメが刺せてしまう!」

「いや、それって、いいことじゃない……」


 悲鳴を上げるばかりで、敵からの反撃を微塵も感じないという事実に、思わず声を上げてなげいてしまった俺に、エビルイエローの冷静な指摘が入る。


 まあ、そうか、そうだな……。


 無駄に長引かせすぎるのは、あまり格好良くはないか。


「スサノオ・ブレード!」


 俺は覚悟を決めて、この巨大な人型ロボットが持っても、まったく見劣りしない、巨大な大剣を創り出し、両手で構える。


「天地両断……!」


 そして、その大剣を、大上段で構えて……。


一閃いっせん! 荒神あらがみり!」

『そ、そんなっ! まさか、このマーブルロボが!』


 思い切り振り下ろすと、まったく抵抗なく、正義の味方が駆る巨大なロボットを、上から下まで、あっさりと両断した。


 とはいえ、これは別に、そのままの意味で、相手を両断してしまったのではない。このスサノオ・ブレードは、文字通り天叢雲剣あまのむらくものつるぎの力を宿やどしている。


 つまり、俺の望むものだけど、望むように破壊する、というわけだ。


「じゃあな! 無事だったら、また遊んでやるよ!」

『ま、まだだ! まだ終わるわけには……!』


 こうして、この目でハッキリと確認した、マーブルロボが動くために必要な駆動部だけを、最小限に破壊したことで、動けなくなった巨大ロボから、まだあきらめない不屈の闘志を秘めた、マーブルファイアの声が聞こえるけれど、もう遅い。


 楽しい祭りは、もうおしまいだ。


「――ギガント・エンデ!」

『うわああああああーっ!』


 俺が操る、漆黒の巨大ロボから、膨大なエネルギーのうずが噴き出して、まるで嵐に舞う木の葉ように、マーブルロボを吹き飛ばしていく。


 とはいえ、ちゃんと海へ落ちるように調整しているし、損傷も最小限だから、あのロボットは、少し修理すれば、また使えるようになるだろうし、マーブルファイブの皆さんも、全員無事なはずだ。


 まあ、サルベージは手間取るかもしれないけれど、そのくらいは頑張って、どうか是非とも、また再起して欲しい。


 そんな無責任なことを考えながら、俺はしっかりと、この巨大で、強大で、雄大なギガン・シュバリカイザー・ツヴァイの両足を広げ、半身で右足を前に出し、構えたスサノオ・ブレードの切っ先を使って、太陽を指し示す。


 もう最後だし、このくらい格好つけるのは、どうか許していただきたい。


「最後に悪は勝つ! ……なんてな!」


 こうして、悪と正義による、巨大ロボット決戦は、沈みゆく夕日の中で、決着してしまったのであった。


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