9-4
「おっと、間に合ったかな?」
急いで駆け込んだ
どうやら、まだ勝負はついてないようだ。
「なんじゃい、
「まあね。そうそう休んでもいられないって」
コンソールと向かい合っている情報分析を専門とした戦闘員たちに対し、テキパキと指示を出していた祖父ロボと、軽く挨拶を交わしてから、俺は皆の邪魔にならないように、適当な場所を見つけて、腰を下ろす。
ここなら十分、モニターの中でなにが起きているのか、よく見える。
「どうじゃ、少しはリフレッシュできたか」
「うん、楽しい旅行だったよ」
残念ながら、さっきまで
あれから、先輩と二人で協力して、ちゃんと服を着てから荷物をまとめ、こうしてワープを使って、瞬時に戻ってくるという、なんとも慌ただしい帰宅には、結果的になってしまったけれど、楽しかったというのは、
だからこそ、自分の中の
ちなみに先輩とは、ワープで帰還してから、すぐに分かれて、こことは別の場所で待機している他のエビルセイヴァーのみんなと、合流してもらっている。
そう、ここからは、なにが起こるか分からない、悪と正義の戦いなのだから。
「それで、状況は?」
「なに、まだ始まったばかりよ。まっ、見てれば分かるじゃろ」
確かに、祖父ロボの言う通り、どうやらまだまだ、見た方が早そうだ。というか、俺がここに来たのは、直接見るためなのだから、そこから始めないと、意味がない。
さあ、それでは、正義の味方……、マーブルファイブの、お
『さあさあ! この前みたいには、いかないわよん!』
『やるっスよー! 新兵器の威力、見せてやるっスー!』
『……ふひひっ、僕たちだけでも、十分さ……』
前回と同じ採石場にて、もうすでに、
どうやら、マリーさんが開発した新武装のようだが、デザインが共通していることから、専用装備というよりは、
前回の戦いにおいて、怪人三人だけでは、
『俺たちの、正義の力を
『ラジャー!』
そんな、見るからに凶悪そうな怪人たちと
どうやら、あの様子を見る限りでは、この前の戦いで受けたダメージは、もう平気なようだし、俺たちヴァイスインペリアルに対して、
「なあ、じいちゃん。周囲に他の反応は?」
「ないの。攻めてきたのは、あやつらだけじゃ」
よしよし、ここまでは、期待通りといってもいいだろう。
どうかこの調子で、マーブルファイブの皆さんには、
『きゃん! もう、危ないじゃない!』
『まだまだ! こんなもんじゃないぜ!』
両手に光線銃を
その新たに身につけた、足軽が使う鎧のような装甲によって、相手の銃撃で受けるダメージは、確かに軽減されているようだけど、それ以前に、動きが違う。
このままでは、いずれジリ
『このっ! このっ! ちくしょー! 当たらないっス!』
『ふんっ! 見え見えなんだよ! そらそら、こっちからいくぞ!』
『合わせろ、ウォータ! 一気に決めるぞ!』
サブさんが地面に叩きつけた新兵器から、バチバチと、激しい電気がスパークしているのが見えるけど、残念ながら、当たらなければ意味がない。
ブンブンと振り回したはいいけれど、マーブルウォータの華麗なステップを
あれでは、時間の問題か。
『……危ない、危な、ぶべっ、ぶべべべっ! いた、痛い……』
『ほらほら、そんな動きじゃ、逃げられないよ! それ、それ!』
『先手必勝! このまま押し切らせてもらいます!』
空を飛んで距離を取ろうとしたバディさんの顔面に向けて、的確に銃撃を浴びせたマーブルアースに続いて、周囲の状況を常に確認しているマーブルウインドが、体勢を崩した怪人に対して、さらに正確な射撃を繰り出している。
うーん、やっぱりまだまだ、怪人では正義の味方に、
『よっしゃ! そろそろトドメだ! やるぜ、みんな!』
『ラジャー!』
どうやら、向こうも勝機を
そして……。
『マーブル・ファイナルシュート!』
『ぐえーっ!』
マーブルファイブ全員で、
いやー、ド派手な一撃だ。
『俺たちの……、勝利だ!』
さて、その通り。誰がどう見ても、今回の戦いは、爆発を背景に全員揃って、謎のポーズで勝ち名乗りを上げている正義の味方、マーブルファイブの勝利である。
まあ、ワープ装置が復旧したおかげで、
どうか正義の味方の皆さんには、これを大きな自信にして欲しい。
『あらあら~、やられちゃったわね~。ざんね~ん』
だって、これから彼らが叩き落とされるのは、絶望の
『……っ! 何者だ!』
まるで、勝利に浮かれるマーブルファイブを
まあ、それも仕方ないというか、相手の力量を
『ワタシは~、ヴァイスインペリアル最高幹部の~、
巨大な蜘蛛のようなフォルムの
その姿は、まさしく頼れる悪の女幹部で、俺は思わず、
『別に~、あなたたちには~、ワタシもそんなに~、興味がないから~』
『くっ、舐められて……、たまるか!』
圧倒的な余裕を見せるジーニアに
あっという間に、まさしく壁のような弾幕が、ジーニアを襲う。
『残念だけど~、出力不足ね~』
しかし、そんなレーザーの雨あられも、ジーニアの展開した輝くバリアによって、あっさりと
『そっちは……!』
『……
その隙をついて……、ということなのだろう。次の一瞬で、崖上へと飛び上がったマーブルウォータとメタルの二人が、ジーニアを
でも、だからどうしたというのだろうか。
『それは見え見えで~、しかも遅いわ~』
『なっ! ぐううっ!』
『ウォータ! 馬鹿な、こんな一瞬で……! ぐううっ!』
お揃いの剣で切りかかってきた二人を、クレイジーブレイン君の蜘蛛のような足を二本使って吹き飛ばし、叩き落としてから、ジーニアは
そしてそのまま、
『ほらほら~、もっと頑張って~、退屈よ~』
『う、うわっ! ちょ、待っ……! ぐへえっ!』
当然ながら、マーブルアースでは、ジーニアを倒すどころか、まともに戦闘をすることすら難しい。クレイジーブレイン君から伸びた多脚が、恐ろしい
崖から落ちてきたマーブルウォータとメタルは、まだ動けそうにない。
『くっ! こうなったら……、やるぞ、ウインド!』
『ええ、ファイア!』
そんな状況を、なんとか打破しようと考えているのだろう。
マーブルファイブ最後の二人が、素早くお互いに駆け寄り、それぞれの右手を
『マーブルパターン! ブレイズ・ハリケーン!』
その瞬間、彼らを中心に発生した巨大な炎の竜巻が、あっという間に、ジーニアを
まったく、見事な威力ではあった。
『よし、やったか!』
だけど、残念ながら、マーブルファイアの勝利宣言は、
『ふ~ん、なるほどね~』
『そんな……! あれを受けても、無傷だなんて!』
その
そう、我らが最高幹部が出てきた時点で、全てはもう、終わっていたのだ。
『その戦闘スーツは~、やっぱりマジカルセイヴァーのものと~、製作者が一緒なのかしらね~。見た目は違うけど~、構造が一緒で~、見るべきものがないわ~』
『う、うわあああああ!』
特に面白くもなさそうなジーニアが、背後のクレイジーブレイン君から、マーブルファイブでは絶対に視認不可能なナノサイズのマシンを切り離し、周辺に
それだけで、正義の味方は悲鳴を上げて、のたうち回るしかない。
『でも~、その右手の鉱石だけは~、けっこうレア物っぽいかしら~? 超技術っていうよりは~、
『う、ううう……』
もはや、この一瞬で勝負は
無念そうな
『とはいえ~、別に
『…………』
そして、
『は~い、というわけで~、残念無念~、また来週~』
『ぐうううっ……!』
最後に、痛烈に流された電撃に、マーブルファイブの皆さんは、抵抗もできない。
まあ、ちゃんと加減はしてるので、またしばらく休んだら、再び元気に動けるようになるはずだ。うんうん、彼らには、これからも頑張ってもらわないといけないし、このくらいが、丁度いいだろう。
『じゃあね~、あんまり面白くなかったから~、命までは
こうして、見事に仕事を片付けたジーニアが、最後のダメ押しをしながら、彼女が開発した超技術であるワープを使って、地下本部へと帰還する。
とりあえず、悪の組織の最高幹部と、正義の味方の初遭遇としては、満点といってもいいくらいの
これなら、俺たちの
『う、ううっ……、くそう、負けて、たまるか……!』
よしよし、動けはしないものの、必死に歯を食いしばっているリーダーを中心に、マーブルファイブの皆さんも、まだまだ闘志を燃やしてくれている。
やっぱり、圧倒的な力量差を見せつけすぎて、
つまり、これこそ、まさに狙い通り、見事なまでの大成功と言ってもいいだろう。
「うむ、作戦完了、お疲れさんってところじゃな。それでは……」
というわけで、一つの局面が、無事に終了したことで、祖父ロボが周囲に
そう、確かに正義の味方は撃退したけど、それで全てが終わりじゃない。
むしろ、この後の対応こそが、もっとも重要ですらある。
「それで、おぬしはどうする、統斗?」
「そうだな……」
さて、せっかく帰ってきたのだから、俺の仕事だって、これで終わりというわけじゃない。というか、ただ見るだけなら、
この後で、俺がやるべきことなんて、決まってる。
「戻ってきたマリーさんに、会いに行くよ」
見るべきものを見たのなら、聞くべき人に、話を聞こう。
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