9-1
幸せって、なんだろう。
誰しもが、一度ならずとも考えてはみるけれど、なかなか明確な答えを出すことは難しい、まさしく人生における
もちろん、この世界には、数多くの幸福というやつが、そこら中に
例えば、大きな目的を
もちろん、そんな
もっと言ってしまえば、愛する家族や仲間たちと、一緒に過ごしているだけでも、信じられないくらい、幸せだ。
いやはや俺という人間は、本当に幸せすぎる男で
ああ、本当に、幸せで、幸せで、困ってしまいましゅ……。
「うう~ん……」
そんな、よく意味が分からないことを、回らない頭でぼんやりと考えながら、俺はようやく、いや、ようやくなのかすら分からないが、目を
本当に、なにが幸せって、こうして暖かい布団の中で、特に
そんな当たり前のことを、俺はまどろみの中で、じっくりと
「……ああ、今日もいい天気だなぁ……」
まったく重さを感じさせないのに、非常に暖かい羽毛布団に
いやー、本当に、ここに来て正解だった。
「ううーん……!」
さて、とりあえず起き上がろうと、暖かい寝具の誘惑を跳ね除けて、身体を伸ばしながら深呼吸してみれば、ログハウスらしく
それがなんだか、心身ともにリフレッシュできたと実感させてくれているようで、気持ち良い朝の目覚めを演出してくれている。
ああ、落ち着くなぁ……。
「って、あれ? ちょっと寝すぎちゃったか……」
ようやく、少しすっきりしてきた頭で、ベットの隣を確認してみると、いるはずの人の姿がない。どうやら、俺より先に起きて、どこかに行ってしまったようだ。
ぐるりと部屋を見渡してみても、この立派な
うーん……、ちょっと寂しい。
「よっと!」
とはいえ、別に
失礼ながら、生まれたままの姿をしているので、なんだか恥ずかしくなって、近くにある布団を使って下半身を隠す羽目になってしまっているけれど、ここはしっかり暖房が効いているので、まったく寒くはない。
ただ少し、あまり馴染みのないというか、久しぶりに来た場所なので、どう動いていいのか分からず、俺はしばらく、ベットから動けないでいた。
えーっと、洗面所とかは、向こうだっけ……?
「あっ、起きたのね。ごめんなさい、ちょっと、シャワーを浴びたくて……」
なんて言い訳をしつつ、俺が
いや、戻って来た、と言った方が正しいか。
「うふふ、おはよう、
それはまさに、女神のような立ち姿だった。
純白のバスローブを、まるで衣装のように美しく
まるで絵画のような、その光景に、俺は息を
「……う、うんっ! おっ、おはようございます、
そんな歴史に残る芸術品のような女性に、男として反応してしまったことが、妙に恥ずかしくなってしまい、強引な
まあ、あまりに不自然すぎて、まったく誤魔化せてないだろうけど。それはそれで
もう俺たちは、そんなことで恥ずかしがるような関係では、ないのだから。
「ふふっ、ごめんね? あんまり可愛らしい寝顔だったから、起こせなくて」
「い、いえいえ、大丈夫ですよ。おかげで、ぐっすり眠れました」
軽やかなステップで、こちらにやって来た樹里先輩が、楽しそうに、幸せそうに、ニコニコと笑いながら、俺のすぐ隣に腰を下ろす。
彼女の香りが、ふわりとこちらの鼻をくすぐって、なんだかむず
これはむしろ、幸福の予感というやつだ。
「……でも、自分も先輩の寝顔、見てみたかったかな?」
「うふふ、それはまた、次の機会にね……」
どちらからともなく、互いの手と手を重ね合わせながら、俺と樹里先輩の距離が、また近づく。そのために身をよじった先輩の、短めなバスローブから伸びる長い脚が
それはもう、いまさらというやつだ。
「んむっ……」
まるで導かれるように、自然と触れ合った唇から伝わる柔らかさを、ぬくもりを、優しく分け合い、激しく交わる。
幸せすぎる二人の時間が、しばらく流れた。
「……ねえ、統斗君? このまま、もう一度……」
「ええ、お望みでしたら、何度でも……」
気が付けば、バスローブが乱れてしまって、しどけない格好になってしまった樹里先輩が、清らかな女神というよりは、
ぐー。
……思ったのだけれども、あえて表現するなら、そういう間の抜けた音が、自分の腹から飛び出してしまって、俺は思わず、動きを止めてしまう。
残念ながら、これでは雰囲気が台無しだ。
「うふふっ、先に朝食にしましょうか?」
「ははっ、そうですね」
とはいえ、繰り返しになるけれど、焦る必要なんて、まったくない。
それぞれ、軽く身だしなみを整えた俺と樹里先輩は、笑い合いながら、ベットから立ち上がり、そっと手を
そんな穏やかな時間が、なんだかとても嬉しくて、
「でもその前に、俺もシャワー浴びてきますね」
「それじゃあ、統斗君が出てくるまでに、色々準備しておくわね」
さあ、今日という一日は、まだまだ始まったばかりで、これからなにが起こるのかなんて、考えただけで、心が
これこそまさに、幸せというやつだろう。
「おおっ、それは楽しみだなぁ。期待してますね!」
「……んっ、ふふっ、任せて!」
優しく微笑む樹里先輩と、軽く口付けを
うん、やっぱりこれは、幸せだ。
それでは、ここに
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