不思議で奇妙な物語
zaq2
好奇心
"好奇心"
それは、人が誰しもが持つ感性の一つといえるものでしょう。
この好奇心からくる向上心なるモノへと変われば、
学者から偉人へとなれるやもしれません。
しかし、大抵の人は、最初に抱いた好奇心から、その向上心へと繋げる事は出来ません。
なぜならば、その好奇心から欲求へと変貌するのが、そのほとんどであるためです。
さて、ここに一つのUSBメモリがあります。
昨今の情報社会において、このUSBメモリの中には、
もしかしたら、膨大なリーク情報データが入っているかもしれません、
もしかしたら、だれかのいたずらでコンピューターウィルスが入っているかもしれません
そんなUSBメモリ、
あなたの知らないUSBメモリが、あなたの自宅に落ちていたなら・・・
あなたなら、どうしますか ───?
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ありがとうございました」
コンビニエンスストアで、ありふれた夕食となる弁当を買いこみ、自宅へ戻ろうと足をむける。
ここ数日、急に冷え込みが始まり、秋というよりも冬を感じている今日このごろであり、温めた弁当が冷め切る前にと、速足で家路を急ぐ
一戸建ての家々がある住宅街の中、ポツンと昭和という雰囲気がのころ二階建てのマンション。
外階段を登って自宅のカギを開けると
コツン
何かが落ちる音がした。
自身が持ちだしていた鍵などが引っかかり落ちたのか?と、音のした方に視線を向けると、そこには黒い棒状の物が落ちていた。
「なんだこれ?」
その落ちていた黒い棒状のものを手に取り訝しむ。
玄関入り口の床に、それは落ちており、100円ライターとでもいうぐらいの大きさでもあったが、手に取って色んな角度からみてみたが、それはライターというよりは・・・
「USBメモリ?」
そう、それはUSBメモリと呼べるものであった。
その姿恰好を自身の記憶から手繰り寄せようとするが、黒いケース状であり要領やメーカー、規格記号などなど一切の記述が無い。
ただ解ったのは、片方がスライドする恰好でUSBコネクタが現れるというものであった。その独特な形状から印象に残ろうものであるのだが、
「こんなの買ったっけ?」
購入した記憶が一切なかったのである。
大抵、こういうのを購入する際は、もっと小さなものだったり、SDメモリで代替しているのが常であるため、この様なスティックタイプのUSBを購入する覚えは一切なかった。
「まぁいいか、とりあえず飯だ飯」
落ちていたUSBメモリを下駄箱の上において、そそくさと部屋へと上がってテーブルへビニール袋を置き、冷蔵庫からビールをとりだし、TVをつけての夕食を始めた。
◇◇◇
翌朝、出勤するべくドタバタと急ぎ足で部屋から出ようとした際、下駄箱の上に置いてあったUSBメモリが目に入った。
「そういや、こんなのが落ちてたんだっけか・・・っと、仕事いかなきゃな」
と、そのUSBメモリをひっつかんでは背広のポケットへとしまい込み、出勤するために部屋をでた。
今日は寒空ともいえるかもしれないが、まだコート類が必要という訳でもない、すこしあたたかな天気であった。
◇◇◇
会社の昼休憩、同僚との昼食時にふと背広のポケットに手を突っ込んだ際、その指に当たる物体の感触から、USBメモリの事を思い出す。
「なぁ、これ昨晩家に帰ったら家の中に落ちてたんだわ」
「ん~?」
ひょいという感じで、そのUSBメモリを取り上げる同僚。
あーだこーだといじり倒して、ようやくそれがどういうものかを理解する。
「なんだこれ・・・あ、USBメモリな、へー、こんなギミックついてるの珍しいな」
「だろ?キャップを開けようとしたらUSBスロットが出てくるタイプなんてな」
昨今のUSBメモリでは、キャップがついているだけだったり、USBコネクタが露出していたりするだけで、キャップ部分と連動してUSBコネクタが露出するものは見かけなくなった。
そんな機械的構造部をいじりながら、同僚は聞いてくる
「で、中に何が入ってたんだ?」
「えっ?」
さも、当たり前だろ?的な表情で聞いてくる同僚に、俺自身そんなことを考えた事が無かったため、素で驚いた返答を返してしまった。
「いや、USBメモリだろ?中身みたりするだろ?」
「いやいやいや、普通そんな簡単にみないだろ。」
「そうか?もしかしたら、ぐふふ なデータが入ってるかもしれねーじゃねーか」
「あー、そういうの考えた事もなかったわ」
「んだよ、面白くねーな。今度中身わかったら教えてくれよな。」
「気が向いたらな」
「あと、会社ではやんなよ?最近そういうの煩いからな」
「しねーよ。ほんとセキュリティーがどーとかでやかましいしな」
昨今、企業内でのUSBメモリやSDメモリの取り扱いが厳しくなり、業務PCに接続したとたんに警告として内線がかかってくる始末となっている。
もちろん、そういういかがわしいサイトへの接続も出来ないのだが。
「だよな」
「なぁ」
そんな他愛もない会話をし、昼からの就業を行い本日の就業は終わる。
そして、いつもながらのコンビニで夕食を買い込み、家路へとつく。
いつもの時間、いつもの様に過ぎ去ろうとしていたとき、ふと、昼の同僚の言葉を思い出す。
USBメモリの中身
ウィルス関連の可能性もあるので、自身が普通に使っているパソコンではなく、買い替えて余っているタブレットを久しぶりに探し出す。
2世代前のタブレット端末であるが、USBメモリスロットもついている物であり、捨てずに置いておいたというのもあった。
また、ウィルス関連も懸念してUSBメモリ接続時にチェックが入る恰好にもしてある。
「さてと、何がはいっていますでしょうかね?」
同僚がいっていた ぐふふ なファイルであるかの期待も込めて、画面をタップしてUSBメモリの中身を確認する。
「圧縮ファイル・・・とReadMe?」
入っていたのは二つのファイル。
一つは圧縮ファイルといわれるものであり、もう一つはソフトウェアなどに付随するReadMeとファイル名が記載されたテキストファイルであった。
おもむろにそのファイルを解凍するべく圧縮ファイルを起動させる事にした。ReadMeは後からでも良いだろう。
そして、画面に表示されたのは
「パスワードを入力してください」
「なんだよ・・・やっぱりロックがかかってるじゃないか」
そう、圧縮ファイルにはパスワードロックがかかっていたのであった。
「そうりゃそうだよなぁ」
昨今のセキュリティ関連を鑑みれば、そういう処置がなされているのも当たり前であもあった。
自身も業務上でそういった行為も行っているので、そういう結果になった事に対しても良くわかる。
「じゃぁ、もう一つのファイルはっと・・・」
一緒に同梱される恰好になっていたファイルを開くと、ふつうにテキストファイルとして開く事ができたのだが・・・
ぱすわぁど 2A4B10F24Z1H19C1AA:30
という文字が一行目に、その後は文字と数字の羅列がびっしりと記載され続けていった。
「なんだこれ・・・」
正直にいえばそうとしか言えなかった。
訳の分からない数値羅列と中身である。これじゃぁ何なのかがさっぱりであった。
今日はもういいかと、タブレットを閉じて、明日に備えた。
◇◇◇
「よう、どうだった?例のメモリ」
「ん?」
食堂で昼食をとっていた時に、同僚からそう聞かれる
「いや、パスワードロックがかかっていたから、見れなかったよ」
「なんだ、見れなかったのかよ」
「ただ、なんかヒントみたいなのがあったわ」
「ヒント?」
「そうそう、よくあるReadMeテキストが入ってて、その中にさ」
「へぇ・・・親切な人もいるもんだな」
「そうだな。そうだ、見てみるか?」
「おう、みるみる」
と、鞄からタブレット端末を取り出して中身を見せてみる。
「ほんとだ、パスワードでてくるな、マヂでヒントかいてあるのな」
「だろ?ヒントの意味がよーわからんわ」
「ふーん・・・」
と、言いながら、同僚はそのタブレットをしばらく何かぶつぶつと言いながら眺めていた。しばらくたつと
「あ、わかったかも」
「えっ?マヂでか?」
同僚がいうのは、何のことは無い、あの数値羅列を30文字で改行させてみると、縦横の数字の場所を表しているんじゃないか?という事だった。
たしかに、30文字くぎりで縦を数字、横をアルファベットとすると数字が拾い出せれる。
拾い出すと・・・179A07X
「入力してみようぜ」
「今かよ」
「いいじゃん、減るもんじゃねーし」
と、その時、13:00になる音が響く。
「ちぇ、時間かよ・・・週明け解ったらよろしくな!」
「わかったよ」
そういって、お互いが昼からの就業へと向かった。
◇◇◇
「さてと・・・ではではさっそくやりますか」
同僚からのアドバイスを元に、パスワードを入力して圧縮ファイルを解凍する。
その数値を入力する際、どことなく見た覚えがある文字羅列な印象をうけたが、それが何かは解らなかった。
解凍しおえたファイルの中身はというと、再び圧縮ファイルが存在し、またREADMEのテキストファイルである。
「おいおい、またかよ・・・」
また、パスワードなんだろうとReadmeテキストを開けると、案の定ヒントと思われる物が記載されていた。
今度は引き算という単純な物であった。
ただ、引き算にかかれた数値が、やはりどこかでみた数値であった。
(何かどっかで見た様な・・・まぁいいか・・・)
求めだされた数値をそのまま打ち込むと、再び解凍されていくファイル。
そして、その処理が終わるとそこに
「えーっと、何々・・・」
今度は今迄と同じ様に圧縮ファイルとREADMEファイルが存在していたが、その他に、動画ファイルが現れていた。
動画ファイルの名前は001という名前だけであったが、ファイル認識としては動画という物であった。
さっそく、その動画を期待を込めて再生してみる。
再生すると、一つの部屋が現れる。
そこに一人の人物が入ってきて・・・
「あれ・・・?オレ・・・か?」
ごそごそと押入れから道具を取り出している自分、そして取り出したタブレット端末にUSBメモリを差し込む自分
"さてと、何がはいっていますでしょうかね?"
"圧縮ファイル・・・とReadMe?"
"なんだよ・・・やっぱりロックがかかってるじゃないか"
"そうりゃそうだよなぁ"
"じゃぁ、もう一つのファイルはっと・・・"
"なんだこれ・・・"
そこで動画は終わっていた。
「いや、えっ?盗撮・・・されて・・・た?」
先ほど映しだしていたカメラの場所へと視線を向けるも、そこには何もない天井である。
隙間もなく、ただただ天井だけが存在しているのだけである。
しかし、先ほどの動画のカメラの位置は、まさしくソコにあるはずであった。
「何も・・・無いよな・・・?」
それに対して、何か変な違和感を覚える。
いや、ちょっとまて、ちょっとまて、何か変だ・・・
そうだ、USBメモリを拾ったのは二日前、その日もUSBメモリは背広のポケットの中にあったはず、それなのに、この動画ファイルが昨日の内容・・・だよ・・・な・・・?
いったい、いつこの動画ファイルが作られ・・・いや、どうやってUSBメモリに入っている?
端末に刺したのはついさっきだぞ?
訳の分からない事に、頭の理解がついていかない。
変な汗が出てくるのが解ってくる。
「えっ?えっ?なんで・・・?」
少し頭の中がおかしくなってくる感じをしながら、端末のファイル操作画面のREADMEがとても気になり、再びREADMEを開けて中身を見ると・・・
"たんじょうび"
「ぉぃぉぃ・・・ウソだろ?ウソだろ・・・?」
えもいわれぬ不気味さを感じながら、何故かその圧縮ファイルを開けてみたいという衝動に駆られている自分がいた。
1・・・9・・・8・・・4・・・1・・・0・・・・2・・・3・・・
震える指を使いながら、自身の生年月日となる数字を入力していく。
そうして、入力が完成して実行を押すと・・・解凍が始まる圧縮ファイル
「なんだよ・・・なんなんだよ・・・」
解凍が終わったファイルには、002という動画ファイルと再び圧縮ファイルにReadmeのテキストファイルが存在していた。
大きく唾を飲みこむという動作を行ったあと、動画の再生するべく端末をタップする。
動画に映されるのは、一人の男性・・・いや、俺だ・・・
"さてと・・・ではではさっそくやりますか"
"おいおい、またかよ・・・"
"えーっと、何々・・・"
"あれ・・・?オレ・・・か?"
""さてと、何がはいっていますでしょうかね?""
""圧縮ファイル・・・とReadMe?""
""なんだよ・・・やっぱりロックがかかってるじゃないか""
""そうりゃそうだよなぁ""
""じゃぁ、もう一つのファイルはっと・・・""
""なんだこれ・・・""
"いや、えっ?盗撮・・・されて・・・た?"
そして、天井方面に視線を向けてガサガサとやり取りしている自分が映る。
"何も・・・無いよな・・・?"
"えっ?えっ?なんで・・・?"
"ぉぃぉぃ・・・ウソだろ?ウソだろ・・・?"
そこで音声は終わっているのだが、カメラが徐々に自分の所へとゆっくりと近づいてきている動画が続いていた。
そうゆっくりと、ゆっくりと・・・それを目にした時、背後に"何か"がいる気配が・・・いや、冬に近づいているこの季節なのに、生暖かい風が背後からながれて・・・
過呼吸するのではないかというぐらい、心臓がバクバクという鼓動をたたき続けていた。
ヤバイヤバイヤバイヤバイ・・・振り向いちゃだめだ・・・振り向いちゃだめだ・・・
だが、振り向きたい、見てみたい・・・そんな好奇心が、自身の首を振り向かせるのには十分であり、ゆっくりと自身の背後へと振り向いて・・・・・・
◇◇◇
「なぁ、知ってるか?営業課の奴、行方不明になったんだってさ」
「へ?誰が?」
「いつもお前とつるんでたやつじゃないか」
「えっ?マヂで?」
「マヂもマヂで大マヂ、どこいったかサッパリだって」
同僚は、最近昼時に見なくなった人物の事を思い浮かばせる。
同期で入社し、部署は違うが酒飲みあう中でもあった人物をだ。
しかし、その同僚が行方不明となる話も聞いたことが無かった事に不思議な感覚を覚えていた。
もし、そうならば警察なりが話を聞きにくるんじゃないかなと思ったりしながら、
同僚は家路についていた。
「あいつ・・・いったいどこいっちまったんだ・・・?」
同僚は、カギを開け、ドアを開けた時、
コツン
という音が鳴り響いた。
「ん?何だ?小物でも落ちたか?」
音がする方を見てみると、そこには黒いスティック状の物が落ちていた。
どこかで見た覚えがある物であったが、はて、どこでみた物だったのか解らなかったが、それを眺めていて思い出す。
「あれ?これって、あいつが持ってきてたUSBメモリだったよな・・・?
周囲を見渡すも、人なんていない。何かがある訳でもない。
いつもの一人暮らしの家の玄関口でしかなかった。
「なんでこんなところに・・・?」
訝し気にそのUSBメモリを一通り確認すると
「これ、何が入ってるんだろうな・・・?」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
彼は何を見たのか、そしてどこにいったのか、それは誰にも解りません。
もしかしたら、そのUSBメモリその物が、
不思議で奇妙なお話のカギとなる物だったのかも、しれませんね。
今度は、あなたの家の玄関の扉を開けると、USBメモリが落ちているのかも、しれません。
その時、好奇心に駆られても、決して中身を見ようとは思わないでください。
不思議で奇妙な世界の扉が開かれれば、帰ってこれなくなるかもしれませんので。
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