あの日の事でも話そうか。
普通の高校生か?と訊かれれば、そうでないと答える者が多いが。
「ん、ん~。良く寝たな~。」
ん~、と身体を伸ばしながら、希は平和だな~、と思っていた。
そう思いながら、首に巻かれているマフラーを触る。
なんでも『伸縮可能万能マフラー』と言うものだそうだが、希には、伸びたり縮んだりするスゴいマフラーということしか分からない。
弟から渡された誕生日プレゼントなのだが、寝ているときまで巻いていなくても良いだろう、と思うかもしれない。
だが、ここ、
それほどまで、『悪』と『正義』の戦いというモノは苛烈であり、過激でもある。
寝ようとしていても、助けを呼ぶ声に起こされるというのはよくあることなのだ。
故に、ヒーローとして、大平希として、その証としてこの『伸縮可能万能マフラー』を巻いているのだ。
ま、巻き忘れないようにしていたら、巻いていても寝られる位には身体が慣れてしまったし、巻き外すのも、巻き付けるのも、面倒くさいから、というただそれだけの理由でしかなかった。
「キャーーー!!助けてー!!」
「朝から悪事とは。全く、忙しいたらっありゃしない。」
何処かは分からないが、助けを呼ぶ声に希はベッドから出て、自室の扉を開ける。
扉を開けて廊下に出る際にマフラーを伸ばすように、両端を掴み、翼を広げるように、両腕を広げる。
すると、マフラーは地に擦るギリギリの位置まで伸びる。
このようにして長くも出来るし、短くも出来る。
材質は不明だが、ヒーローを目指す希には、気にはならないし、考えることでもない。
今、気にすべきはそんな事ではない。
階段を降り、玄関へ行く前に、ダイニングの扉を開ける。
「おはよう、sigal。」
「おはようございます、希。朝食はとられますか?」
扉を開けると、希の弟、
まぁ、彼女の仕事は、希の世話ではなく、剛の世話だ。
皆の分の支度をしているのは、ついででしかないのだが。
支度をするとはいえ、侍女という役目をこの『オーバーテクノロジー』としか言い様のないとんでも技術が積み込まれた『万能型独立思考自律駆動』と言うこの『機械人形』に与えたというだけだ。
ただの『兵器』としてではなく、『侍女』という役目を与え日本という国からの目を誤魔化すというちょっとした工夫を父である
それとは関係なく、希は自由を許されているわけだが。
「う~ん、食べたいんだけど、間に合わなくなちゃうからな~。」
「でしたら、後でもよろしいかと。その方がよろしいと思いますが?」
と悩む希にsigalは妥協案を提示する。
おそらく、一緒に食べた方が片付けも容易であるからであろう。
彼女なりに譲歩してくれている事が窺える。
であれば、それに賛成した方が良いだろう。
希には食べるか、行くかの二つしか思い浮かばなかった。
「ナイス、sigalっ!んじゃ、そうする!」
「ja。気をつけて、いってらっしゃいませ。」
sigalは希を送り出すように言い、希は身体を翻す。
ならば、早くに行って、早くに帰ってこれるようにしなくては。
「んじゃ、ちょっくら、助けに行ってくるわっ!!」
もう時間が早くも経とうとしている。
急がねば。
そう思い、自分の靴履き、外へと駆け出すように玄関を開けた。
「離して、離してったらっ!」
「万引きしようとしてるガキを逃がすかよ。」
希が声のした現場に到着すると、女子高生の手をゴリラに近い外見の怪人が掴んでいた。
状況を見ると、悪いのは怪人のようにも見えなくはないのだが。
話を聞いてみないことには何事も始まらない。
「何してるの?」
「助けて、襲おうとしてるのっ!」
「げっ、大平希っ!?手は出してねぇ、ホントだっ!!」
希の噂はこんな怪人の耳まで届いているらしい。
希を見ると、怪人は女子高生の手を離し、両手を上げて、頭の後ろで手を組んで、膝を折る。
誰もそこまでしろとは言ってはいないのだが。
それほどまで、希の事を恐れているらしい。
いったい、怪人達の間で希はどんな風に言われているのか、気にはなるところだが、まずは話を聞いてみないといけない。
女子高生は手を離れると、希に駆け寄ってくる。
希は駆け寄ってきた女子高生の身体を優しく包むと、頭に手を置き、落ち着かせるように、頭を撫でる。
「よぉ~し、よし。落ち着いて、落ち着いて。もう、大丈夫だからね。」
「うっぐ。えっぐ。ありがとう、ありがとう。」
頭を撫でると感謝の言葉を女子高生は言う。
声を出せるのであればもう大丈夫であろう。
「んで、何したの?」
「俺は何もしてねぇよ!ただ、そいつが金も払わねぇで出てきたから、止めただけだ!!」
信じてくれよ、と怪人は言う。
怪人の言う通りであれば、悪いことをした女子高生を引き止めただけであり、暴行には至っていない。
義は怪人にある。
「う~ん、ホント?」
「う、嘘よっ!!何もしてないわっ!!」
「何言ってるんだ!おい、こいつの言うこと信じるのか!?」
ふむ、と希は考える。
状況だけを見れば、悪いのは怪人のように見える。
だが、怪人は手を上げてはいない。
であるなら、怪人の言う通りである可能性が少なくともありそうに思える。
どうしたものか、と希が悩んでいると、女子高生の肩から、バックが地面に落ちる。
そして、落ちた拍子に、バックが開かれる。
その中には、化粧品と希がほぼ触れたことがない様な女性誌が入っているのが見える。
それらには買った物であるということを証明するシールが貼られていない。
「買ったの?」
「か、買ったわ。」
「んじゃ、レシート見せて。」
希は女子高生に問い質す。
その問いに彼女は買ったと答える。
そう言う彼女に、希はレシートがあるか、と訊く。
その質問に彼女は答えを躊躇う。
その時、パトカーがランプを回しながら、現れる。
逃げようとする彼女を希はしっかりと掴む。
「離してよ!」
「警察の人が来たら離すよ。」
そう言っていると、パトカーが希達の前で停車し、警官が降りてくる。
「大丈夫、って、大平さんっ!?事件ですかっ!?」
降りてきた警官は希を見ると、驚きの声を出す。
警官にも知られているとは。
そこまでのことはしてはいないのだが。
「あー、万引きの現行犯、彼が捕まえてくれたみたいでね。ってなわけで、あとはよろしく。」
「ま、万引きっ!?窃盗などではなくっ!?」
「あー、うん。詳しくは彼と彼女から聞いて。」
と希は警官に女子高生を渡すと、怪人にあとを任すように警官に事情を聞くように言う。
警官は希の言葉をあやしいと睨むが、この
「で、では、確かに。」
希から女子高生の身柄を受け渡されると、警官は希に敬礼する。
そのやり取りを聞いていた怪人は構えを解くとゆっくりと立ち上がる。
「信じるのか、怪人の俺を?」
「怪しいって言えば、怪しいのはアンタだけど、手も出してない奴を疑って倒すってのは『正義』じゃない。」
「だから、信じると?」
「信じるよ。両手を上げて、掴んでた理由も言ったからね。確かに、あんたは『悪』かもしれない。だけど、アンタが『悪』を掴み、捕まえ、手を
出さなかった。アンタを今ここで倒せば、私が『悪』だ。」
「成る程ね。さすが『ヒーロー』だ。」
と怪人は納得したように言う。
「あー、なんか疲れた~。」
どっと疲れた様に希は家に着くなり、そんな事を言い、玄関に腰を下ろし、靴を脱ぐ。
朝食を食べれば、また、登校のために靴を履かねばならないのだが。
靴を脱ぎ、ダイニングの扉を開けると、sigalと和義が席について、朝食を取っていた。
「ただいま、私の分ある?」
「ja。お帰りなさい、希。少々お待ちを。」
「おかえり、希。今日は万引きの現行犯が相手かい?」
sigalは希の朝食の支度をするために立ち上がり、和義は希に確かめるように言う。
「そ。紛らわしいけど、女子高生だった。」
「怪人じゃないんだ、今日は。」
「電話あったの?」
「なんで、怪人倒さなかったんだ、『正義』の『ヒーロー』なのにって。」
「何それ。『正義』の『ヒーロー』でもいっつも倒すわけじゃないってのに。」
「そうだよな。だから、言ってやったよ、同じこと。」
「ありがと、父さん。」
和義に感謝の言葉を希は言う。
その希の言葉を聞いて、和義は嬉しいように微笑む。
「
「格好いいよ、父さん。私の自慢の父さんだよ。」
和義はもういない妻の名前を言い、希に持論の言葉を聞かせる。
「お話し中、失礼。希、朝食です。」
sigalは断りの言葉を言い、希に朝食がのった皿を希に渡す。
「ありがと、sigal。」
「ja。お気になさらず。」
いつものように、気にすることではないとsigalは言う。
少し位は感謝を受け取っても良いと思うのだが。
と希は思って気がつく。
「あれ?剛は?」
「もう行ったよ。」
同じ高校に通っている弟が来ていないと希は言うが、もう既に行ったと和義は言う。
その言葉を聞いて、希は驚いたように大きな声を出す。
「ハァ!?ちょ、今、何時?」
「ja。七時三十分ですね。」
「ギリじゃん、それっ!!」
ガーッと掻き込む様に希は朝食を食べ、思いっきり飲み込むようにグビグビと飲み物を飲むと、ダイニングの扉を開け、自室から通学用カバンを取りに二階に上がる。
その時になって、希は自身が普段着を着たままなことに気が付く。
「あーっ、めんどいなぁー、もうっ!!」
ド畜生がぁー!!とでも言うように勢い良くシャツを脱ぐ。
だが、首に巻いているマフラーは外さない。
これを外すということは剛の姉ではないと言っているようなモノだ。
外すことなど出来ない。
論外である。
故に、サイズを通せるだけ小さくし、通ったあとに元に戻すという無駄なような無駄ではないような事をして、学生服を着る。
スカートを着る際に、スパッツに足を通して穿く。
別に良いのではないだろうかと希は思っているのだが、剛はスカートの中が見えると怒り、その時にsigalもいたので、余計に怒られた。
隠すということも淑女の嗜み、女性であれば当たり前であると。
滅多に怒らないsigalが怒ったのだ。
あの時のsigalは怖かったで済むものではない。
もう二度と怒らせるものかと希はあの時、心に誓った。
制服を着終わると、パパン、と簡単に服の埃を払うように叩いて、カバンを背に背負い、一階に降りる。
「希、お弁当を。」
「はいはい~、さんきゅ、ありがとね、sigal!」
希が降りてくるのを予測していたようにsigalは顔を出すと、希に弁当箱を手渡す。
それを掴むと、背負ったカバンを前に持ち替え、カバンの中に弁当箱を入れ、再び背負う。
靴はそうしている間に足を器用に使って、履く。
トトン、と爪先を叩いて靴を深く履きながら、再び、外へ出るのであった。
十久札町にある高校で比較的標準レベルの難易度で知られている高校だ。
標準レベルとは言っても比較的である。
東京大学を受験する者もいれば、高卒で仕事に就こうとする者もいる。
希は将来の可能性に悩む高校三年生であるのだが、正直に言えば、あまりそういった事について深くは考えていなかった。
というより、『ヒーロー』として、毎日聞こえてくる助けてという助けを求める声に応えるようにしていて、将来の事など考えてはいなかった。
「う~む。『特撮的に考えて』、赤点取って卒業出来ない『ヒーロー』ってありとは言い難いよね~、うん。」
「だからって、弟に勉強を教えてもらう姉ってどうなんだ?あん、姉ちゃん?」
と二年生である弟、剛の教室に希は来ていた。
理由は簡単で、確認テストが毎回あるにも関わらず、勉強していなかった為である。
単に、赤点を逃れるための悪足掻きをするため、希より出来る剛に教えを乞いに来ただけなのだが。
「あと、教えてもらいに来ておいて、教える側の人間の目の前で飯を食うってのはどうなのよ?」
「ほら、よく言うじゃん?腹が減っては・・・・・・・・。」
「戦は出来ぬってか。姉ちゃんの場合、頭を使う戦じゃなくて、ガチな方の戦じゃん。」
「うむ。そうとも言う。」
「女の子が胸張るな。また、sigalに説教受けたいのかよ?」
「それは勘弁。ごめんごめん。」
あのsigalの説教は二度は受けないと心の中で誓った希はえっへん、と言うように張っていた胸を直すように背を丸める。
「おいおい、剛。おめぇ、何やってんだ。今の『エロゲ的に考えて』、良い感じのじゃねぇか。」
「英明。それ、もう一回、言ってみろ。ただじゃ済まさねーぞ。」
「あん?ヤるってのか、おめぇ?」
「落ち着け、ひで。剛は、お姉さんルート作ろうとしているお前を怒ってる。ってか、そう思えるお前が逆にすげぇわ。」
剛のクラスメイトの
それを止めようとクラスメイトが仲裁に入るが、クラスメイトではない希には誰であるのか分からない上に何を言っているのか不明なのだが。
「あぁ、俺は
「おいこら、英二。てめぇ、なに上手いこと言って、フラグ建てようとしてんの?」
「ぶっ飛ばすぞ、てめぇ、英二。」
「挨拶。挨拶だから。」
英明が言うフラグというモノは希には分からない。
だが、現状は剛が怒って当然という状態であるらしい。
分からないが。
「まぁまぁ。これでも飲んで。」
希は自身が先程口にしていた水筒のコップを剛に渡す。
「ありがと、姉ちゃん。」
「おい、剛。なにお前、マウストゥーマウスしようとしてんの?掘ってやろうか?」
「野郎の穴をって意味か、ひで?無理無理。」
「んじゃ、お前行けや。」
「関係なくね、俺?勝手に宣戦布告したのお前だべ、ひで。」
二人が言い争うようにしているちょうどその時、希はあることに気が付く。
「剛、弁当は?」
「ないけど?」
「どうすんの?」
「多分、sigalの事だから、飛ばしてくると思うんだよね。」
「持たせれば良いのに。」
「不安なんでしょ?」
「そうかもだけどさぁ。」
過保護だなぁ、と希は思ってしまう。
どうもsigalは剛に対して過保護に扱う傾向がある。
剛だって男の子だ。
少し位で十分だと思うのだが。
それに、友達だっている。
多少、お金を渡せば食べ物を買って食いたくもなるであろう。
とそんなことを考えていたときであった。
それが起きたのは。
「えっ。」
窓際に座っていた剛のクラスの女子高生が何かに驚いた声を出す。
希と剛はその声のした方に目を向ける。
そこには。
鋼鉄の弁当箱が浮かんでいた。
「うわぁ。」
その弁当箱はゆっくりと剛の机に向かってくる。
クラスメイト全員がその進んでいく弁当箱に触れないように、距離を開け、道を譲っていく。
だが、一人だけ気付かない者がいた。
「いいか、『エロゲ的に考えて』ルート開拓は男のロマンなんだ。特に俺みたいなモテ度十かそこらのド底辺男にはなッ!!」
何かを熱弁している新塚英明という男子生徒であった。
「おい、英明。」
「あっ!?リア充一歩手前男がなんだッ!?」
「落ち着けよ、ひで。」
「お前もか、英二っ!?『カレイド静香にゃん』の『にゃんにゃんポスター』買ってこねぇぞっ!?ふべらっ!?」
剛と英二の言葉を聞いて何故かもっと熱くなる英明に弁当箱が直撃する。
「うわぁ。痛そう。」
とりあえず、退避していたので当たることはなかった希は倒れている英明を見る。
だが、じっと見ているというわけではなく、すぐに目を外す。
弁当箱は剛の机の上に着くと、スピードを落とし、机の上にゆっくりと着陸する。
「『エクス・ナイト・ブレイザー』。格好いいじゃん。」
「えっ。いや、そうかもしんないけどさ。ってか、希お姉さん、分かるの?」
「だって、剛でしょ、アレ?えっ、あんた、分かんないの?」
「お兄さんとは姿が違うっていうか。ってか、お兄さんには見えないけど?」
「どこが?」
首を捻るエリスが分からないという事が希には理解できなかった。
それは姿や貌などは剛ではないかもしれない。
だが、希には分かる。
希には聞こえる。
あの魂を揺さぶる様な熱い鼓動が。
だが、エリスには分からないという。
何故、分からないのか希には理解が出来ないのだが。
と分厚い装甲の鎧を身に纏った戦士の後ろに二人の男子高校生の姿が見える。
確か剛の友人でクラスメイトの新塚英明と木塚英二といったか。
二人を背にして戦うとはなかなかやるな、と希は思った。
その希の目を見て、エリスは納得する。
「お兄さんなんだ、あれ。」
「言ってるじゃん。剛だって。」
「いや、分かんなくてさ。」
その戦士の背に新たに誰かが姿を見せる。
素っ気ない質素でシンプルな黒と白を基調としたデザインのメイド服で現れたのは剛の護衛兼世話役の侍女、sigalである。
その彼女は片腕をぶらんと下げている。
その様子を見て、あの怪人はなかなかやるな、と希は思った。
『機械人間』であるsigalが損傷を受ける。
『万能型独立思考自律駆動』である彼女が、だ。
人と同じように独自に考え、独自に動くことが出来る筈の彼女にあれだけのダメージを与えるという事はほぼ出来ない。
もし、触れようとすれば、『重力』を自在に操れる彼女の見えざられる手によって手が重力によって地面に着くか、下手をすれば重力と反重力で挟まれて潰されるはずだ。
ということは、彼女が気付かない程の不意をあの怪人は突いてみせたという事になる。
であれば、剛がどんな道具を使って変身したのかは不明だが、変身せざる場面であったというのは理解できなくもない。
「手伝うの、お姉さん?」
「弟の、『ヒーロー』の初陣だからね。見守ってるよ。」
「優しいね。」
「お姉ちゃんだからね。それに、剛は男の子だから。やるだけの根性はあるから、あの子。」
エリスは希の言葉が予想外であったのか、目を大きくして希を見る。
そんなエリスの視線に、希は気付きながらも、あの戦士、サイの怪人と対峙している『エクス・ナイト・ブレイザー』と言った『ヒーロー』から視線を外さなかった。
その視線を受けてかは不明だが、咆哮するように全身を奮わせ、天を仰ぐように頭を上に向ける。
「やっちゃえ、剛ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
拳を握り、その
その瞬間、『エクス・ナイト・ブレイザー』は気合を入れるように、とぅ、と大きな声を出し、天高く飛び上がると、いつの間にか、両手に光の剣が握られており、輪を作り、回転する。
その輪から出るようにして、彼は飛び出てくる。
「テンペストォォォォォォォォォ・ブレイクゥゥァァァァァァァ!!」
彼が飛び出てくると、輪を作って回転していた両手も彼を追って、怪人へと向かっていく。
彼の蹴りが怪人に触れると、輪を作るように回転する両手の剣先が怪人の身に刺さり、抉りとるように高速で回転する。
エグい様にエリスは見えるが、希は格好いいと感じていた。
ダン、と更に怪人の身体を蹴り、彼は自身の身体を捻る様に回転しながら、怪人より数メートル離れた地点で着地すると、左手を右斜め上に上げて、
「滅、殺っ!!」
左後ろに振り抜いてみせる。
ちょうど、振り抜いた時か、それより、少し遅れて怪人の身体が前に傾き、倒れていき、地面に着くか着かないかのタイミングで爆発する。
「剛っ。」
希は
ゆっくりではあるが、徐々に倒れる『エクス・ナイト・ブレイザー』。
地面につく数瞬で希は
「格好いいよ、剛。よく頑張ったね。」
優しく抱き止めると、彼の頭をそっと撫でる。
誰が弟に変身道具を渡したのか、希にはおおよその予測ができていた。
だが、何のためかは分からなかった。
剛がいくら男の子だとはいえ、戦場に自分で踏み込むとは思えないし、sigalというお目付け役がいるのだ。
そんな事はしないし、しようとも希には思えなかった。
だが、一つだけ分かった事がある。
それは、剛は
父に問い質すのと同時に剛を誉めなくては。
と希は思いながらも
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます