第一・五話
ja。あの日のことでも。
「ふむ、そろそろですか。」
sigalという少女というか侍女というかなんと呼べば良いのか、うん、侍女と言おう、そうしよう、sigalという侍女がいた。
その侍女はてきぱきと動くように支度をしていた。
だが、その様子は普通と言って良いものか。
多分、朝食の支度をしているのだろう。
外を見れば、陽が暗い外を照らし出している。
食器などを取り出して、支度に取り掛かる。
宙に浮いたパンがトースターに入れられて焼かれる。
さらに、別の場所では宙に浮いた卵が割られ、sigalのいる位置よりも離れているコンロに置かれているフライパンの中に落ちる。
魔法か?
確かにそう思える光景だが、魔法ではない。
現代を生きる人々が生き抜くために勝ち取った技術、『科学』である。
sigalはその最先端の先を行く技術、『オーバーテクノロジー』と言われる技術を詰め込まれ、それを扱っているだけでしかない。
この光景を何も知らない技術者が見れば、呆けてしまうであろう。
しかし、今現在の現代社会を生き抜くためにはこれだけの技術を使っても起きてしまうもしや万が一という事態が起きてしまう可能性はゼロとは言い難いもので。
それが、我が子を守るためという親心であるなら、仕方ないであろうとsigalは考える。
sigalという名前も『shadow innocence guardian android lady』、『影の罪の無い守り手の人造人間である貴婦人』という意味合いで名付けられたらしいのだが、定かではない。
sigalには『重力制御操作』という現代技術では到底実現しにくい技術を扱うことが出来るようにプログラミングされている。
そんなプログラムを実行しようとするだけで、長い年月を費やしてしまうであろう。
だが、sigalは『人造人間』、普通の人間ではない。
プログラムを実行する計算を脳で処理し、実行することが可能だ。
人間の脳というモノは、言ってみれば天然のスーパーコンピューターだ。
どれ程とは言い難い動作を行い、問題を処理する。
考えてもみて欲しい。
当たり前のようにしている呼吸や歩行にどれ程の筋肉を動かしているだろうか。
言葉を発するにしても、脳でどれ程の単語を引き出そうとしているのか。
『生きる』というのが目的ではなく、『生かす』というのが目的であれば。
その為に、脳を使えるというのは、sigalにとっては悦びである。
それがsigalにとって今ここに立っているという意味である。
そんなどうでもいい事を考えていると。
「おはよう、sigal。」
と、sigalの立っているキッチンから離れたダイニングの扉が開かれ、蒼く短い髪を揺らしながら、少女が顔を出す。
「おはようございます、希。朝食は取られますか?」
sigalの言葉を聞くと、希はうぬぬ、と悩む声を出す。
「う~ん、食べたいんだけど、間に合わなくなっちゃうから。でもな~。」
「でしたら、後でもよろしいかと。その方が良いと思いますが?」
悩む希に妥協案としてsigalは提案する。
今食べる時間がない、しかし、食べたい。
であるとすれば、逆に考えれば良い。
今でなくとも、食べれると。
「ナイス、sigalっ!じゃ、そうする。」
「ja。お気をつけて、いってらっしゃいませ。」
sigalの案に希は乗ると言い、身を翻す。
その時、長く紅いマフラーが揺れるのがsigalの瞳に映る。
希の悪い癖と言うべきか、ヒーローという生き物に憧れているからか、異常なまでに耳が良く、行動力が異常なまでにある。
その域にまで、達すればもう性分としか言いようがないのだが。
治りそうには恐らくはないであろう。
たぶん。
きっと。
メイビー。
「んじゃ、ちょっくら、助けに行ってくるわっ!!」
バタン、と扉を閉めると、走っていく音が聞こえる。
その音を聴き、ふむ、とsigalは顎に手をやり、
「埃が舞いますね。」
難しいところです、とsigalはどうでもいい事を考えていた。
希が出掛けてからそんなには経ってはいない。
大平家の家族はダイニングに集まり食事を食べていた。
「あー、そこのドレッシング、取ってくれ、sigal。」
「ja、博士。この『なんちゃってシーザー風ドレッシング』ですね?」
「その横の『アメリカン風ドレッシング』ね。」
「ja。それは失礼を。」
「気にしなくていい。・・・・・・・・、ありがとう。」
「ja。どういたしまして。」
博士と呼ぶ男性にsigalはアメリカン風と書かれ、古典的なリーゼントにジーンズのジャケットを羽織り、タバコを吹かしてバイクに股がっているいかにも不良を意識したと思えない日焼けした外国人が描かれているラベルが貼ってあるドレッシングを手渡す。
男性の名は
この十久札町にある大平研究所に勤めている研究員である。
研究員と言っても、博士と言われて尊敬されもおかしくはない研究をこの世に生み、送り出してきた。
sigalも彼の手によって生み出されたのだ。
『重力制御操作』というプログラムを実行でき、それに耐えるコンピューターとして、人間の頭脳に似た『人造人間』の頭脳を作り出し、人間と何ら差がない『万能型独立思考自律駆動』という『ロボット』を作り出したのである。
独立で思考する頭脳を持つロボットというだけでも偉大な事であるのに、自律で駆動するという。
彼の技術力は並のものではない。
どの国からも彼を我が物にしようと考えた。
だが、そういう連中からは日本という国が彼の重要性に気付き、彼を守った。
まぁ、守る代償として、『歩兵型戦闘用機動ユニット』を国に権利も明け渡したのであるが。
故に彼は日本の国内での自由を許されたのである。
「sigal、その『なんちゃってシーザー風ドレッシング』くれ。」
「ja、『マスター』。」
『なんちゃってシーザー風ドレッシング』と書かれているラベルには古代ローマを意識したのか、古代ローマ人風の一枚の布を肩から巻き、分厚い本を胸に持っている外国人が写っている。
どこをどう勘違いしたのかは分からないラベルが貼られているドレッシングを学生服を着た青年に手渡す。
青年の名前は
sigalの『主』と認証されている青年である。
そして、『人間チート』という変な称号を持っている
希と比べれば、ほぼ『普通』の人と同じくらいの運動力であるが、あの姉の弟である。
修行などと称し、『特撮ヒーローモノ』のテレビ番組でもやらない様なリアルな重さがある鉄球が振り子になって振られている一本橋を走らされたり、大岩を転がされている傾斜がきつい坂を下らされたりして、運動能力は『普通』とは言い難いほどある。
だが、姉と比べれば、まだ普通と言える。
というよりも姉の希と比べるなど論外である。
あの『人間機動兵器』である希と比べるなど。
「そういえば、剛。話があるんだが、良いか?」
「えっ。いいけど。」
突然、和義は剛に話を切り出す。
「この十久札町でな。最近、物騒な連中が出てきているらしい。」
「姉ちゃんがいるってのに、物好きな。」
「希は希で、希のやりたいようにやっているから、問題ない。」
「姉ちゃんだしな。」
和義と剛はそう言うと共にはぁ~、と息を吐く。
「希は、良いんだ。それとは別にお前にやってもらいたい事があってな。」
「やってもらいたい事?」
和義はそう言うと、ポケットに手を入れ、結晶の様な物体を紐でぶら下げたアクセサリーを剛に渡す。
「これは『トランス・ギア』と言ってな。研究データを取って国にデータを出さないといけなくなってな。」
「姉ちゃんが好きそうだけど、使わなそうだ。」
「希は、まぁ、使わんだろうなぁ。というわけで、一応、お前に渡しとく。危ないと思わなくても使うんだぞ。ちなみに、使うときは『アクセス』と言うこと。」
「『アクセス』って。それ、ゲームの・・・・・・・・。」
「ゲーム?なんだそれ?」
「いや、何でもない。」
そう言うと剛は『トランス・ギア』を和義から受け取り、首に掛ける。
sigalは何かに気付いた様子で、時計を見なくても時間が分かるのに、わざと時計を見る。
「『マスター』、お時間が。」
「うん?・・・・、うおっ、もうこんな時間じゃねぇか!サンキュー、sigal!」
「いえ、大したことでは。」
剛は慌てた様子でサラダにがっつき、空にすると、皿を台所に置き、学校に行く支度を整えるために、ダイニングの扉を開けて、二階に上がる。
その様子を和義は見て、sigalに感謝の意を伝える。
「悪いな。」
「いえ、博士。」
「剛は剛だ。希じゃない。それにsigal、お前が傍にいないって場合もある。」
「『マスター』の命を狙う者にとってはその時が都合が良い、と。」
「そうだ。もしや万が一っていう事態は100%起きないとは断言できない。」
「ja。そのための保険だと。」
「そうだ。それを防ぐために、sigal、お前がいる。だが、いないという事態が起きないとは断言できない。」
「成る程。」
とsigalは和義の言葉に納得する。
起きないとは断言できない事態を防ぐために、『トランス・ギア』を渡しておく。
あくまでも、起きるかもしれない事態に備えての予防策だ。
「過保護だと思うかね?」
「いえ。私も同じような事をしましたので。」
sigalはふと思う。
あれはいつの事であったか。
少なくとも、今ではない。
体育祭などで、ドッジボールをしていた時に、ボールがボールではなく、爆発物であったら、と思い、全てのボールを重力で押し潰した事があったが。
sigalの言葉を聞いて、和義は笑う。
「ハッハハ、あれは笑えたな~。新品のボールを発注する事になるとは思わなかったけど。」
「お恥ずかしい限りです。」
「なぁーに、息子を守るための授業料だと思えば安い、安い。」
と和義は笑って言う。
死んでからでは遅いのだ。
そう思えば、安いものだ。
希の場合は、心配にはならない。
なる程でもない。
線路に入ってしまった猫を助けるというそれだけの為に電車が目の前に来ていても、猫を抱え、電車に手を置き、後方宙返りをして、危険を回避するという人間であることを疑う離れ業をトレーニングがてらにしただけ、と言う人間を不安に思うであろうか。
希の場合、常にそれをしているので余計に質が悪い。
町の風物詩と言われ、番組でも取り上げられ、わざとそういう場面を作ってみたりするという迷惑極まりないことをしたりとしていた。
面白がってやるのはマスメディアの悪いところだ、とsigalは思う。
ま、一年くらいやって、視聴者が飽きれば、そうすることはなくなったが。
「希は?」
「今朝から行かれました。」
「となると、そろそろか。」
と和義は予測する。
その時、電話が鳴る。
ま、だろうな、と和義は思いながら受話器を取る。
助けたことに感謝する電話ではなく、なぜ、あんなことをするんだ、という迷惑電話に和義は応えるために。
「成る程。だから、機嫌悪いんだね、『マスター』。」
「いつもの事だとは言え、いくらなんでも、とは思いますが。」
「お姉さんのこと知らないのかは私は知らないけど、感謝の電話の一つでも良いのにねぇ。」
「その電話をしないのが、十久札町の町民らしい、と言えますが。」
sigalの言葉を聞き、それはどうかと思うけどな、と短い髪の少女は思う。
短く切り揃え、蒼い瞳をしている。
外見だけを見れば、どこにでもいる『普通』の少女と変わりはない。
だが、少女の周りには、少女よりも重量がある銃器がところ狭しとぎゅうぎゅうと詰められ、散らばっている。
時々、少女の瞳に電子の線が走る。
『普通』の少女であれば、瞳にそんな線が走ることもない。
少女の名はエリス。
『歩兵型戦闘用機動ユニット』と言う機械の集合体である。
それを証明するかの様にエリスの腕には所々、線が入っているのが見える。
「私には分からないな~。」
「『新型』が思考を放棄すると?情けない。」
「いくら先輩でも怒るときは怒るよ?」
「ほぅ?やってみますか?『旧型』に負ける『新型』はいませんからねぇ?」
「ごめん、嘘。真面目に捉えるの、やめてよ。」
「冗談に決まっているでしょう?」
「姐さんの場合、冗談に聞こえないんだよ!」
エリスの言葉にやれやれ、とsigalは手を振る。
創られたのはsigalが早いし、稼働もsigalの方が長い。
そうなると、エリスの方がスペックが上の様に思える。
「しかし、電気とは。古いですね、『新型』なのに。」
「それを言うなら、『マスター』に依頼した『
とエリスはsigalに文句を言う。
確かに、エリスはエネルギー補充の方法が電気であるのに対し、sigalは人間と同じように、食べ物からエネルギーを補充できる。
この理由は単にエリスの言った通り、『汎用型』と『ワンオフ』との差である。
『汎用型』は量産や整備、メンテナンス等を容易に行える。
だが、『ワンオフ』はたった一つしか存在しない特注品なのだ。
量産をするにもコストが掛かりすぎる上に、時間もかかる。
整備にも独自の技術が使われ、読み解くにも時間が掛かる。
メンテナンスも同様だ。
エリスは『政府』の依頼したスペックを持つ『量産型』の一つ。
sigalはもしもの時に備えての予防策の一つとして作られた『
二人ともスペックは十分にある。
sigalはむしろ、ありすぎると言ってもおかしくはない。
だが、そのスペックを持つsigalは今、ここにいる。
そうなれば、エリスがいる理由が見当たらない。
見当たりはしないのだが、某アニメの台詞にこんな台詞がある。
『こんなこともあろうかと。』
エリスもsigalもこんなこともあろうかとという事態に備えて作られ、ここにいるだけでしかない。
その事態が起こらないとは誰も断言はできない。
そんなもしに備えているだけなのだ、大平和義という人物は。
小心者と嗤われるかもしれない。
軽蔑されるかもしれない。
だが、考えてもみて欲しい。
起きないと思える事態が起こる、いや、起きてしまった場合の時の事を。
その時、ああしておけば、これがあれば、と後悔しないだろうか。
大平和義という人間はそんな事態に備えている、たったそれだけでしかない。
バカにすることも批判することも出来ない筈だ。
故に、エリスを手元に置くということを『政府』は了承した。
「それで、姐さん?剛に渡したの、弁当?」
「nine。渡しておりません。」
「んじゃ、どうするのさ?」
「飛ばします。」
「えっ。」
「熱々のできたてがよろしいかと。一度は失敗しましたが、コツは掴みました。」
そう言うと、sigalは鋼鉄の弁当箱を取り出す。
耐弾耐刃耐熱耐圧という耐久づくしの弁当箱だ。
ロマンというただそれだけを追求して出来た弁当箱。
フレーズは確か『できたてあつあつのご飯を貴方に』
それを見て、エリスは不安に思った。
もうその時点で結果は目で見るより明らかなのだが。
「ね、姐さん。やめた方が。」
「nine。何故、お渡ししなかったと思うのですか?」
「だけどさ。」
「ですから、貴女は『新型』でありながら、『旧型』であるというよく分からない『汎用型』なのです。」
とsigalは言うと、弁当箱を掴み外に放り投げる。
そうすると、最初ただ放られた弁当箱は加速をしていき、あっという間に姿が見えなくなる。
その様子をエリスは、やっちゃったよ、姐さん、と思いながら眺めていた。
「んで、言うことあるか、sigal?」
「nine。理由が不明です。」
放課後、ようやく『主』である剛と合流したsigalは剛にそう訊かれた。
学校内の敷地のデータは頭の中に入っている。
忘れようとも忘れるという事が出来ないsigalの自信でもある。
中身が出るという事もない筈だ。
剛の指紋を認証して開くようにあの弁当箱はなっている。
壁に埋まりでもしたのだろうか?
であれば、学校から電話がある筈だ。
一度、壁に埋まったという事があった。
その時は電話が掛かってきて、今回は電話がないという事は壁に埋まってはいないと推測できる。
であるなら、剛の手元には届いた、と推測することが出来る。
速度計算も問題ない筈だ。
壁に埋まったときには速度計算が誤った。
だが、今回はそうはならない様に何重にも計算を繰り返し、誤差が殆どない範囲で収まる筈だ。
学校からの電話がない、弁当も食べている、であれば何がいけなかったというのか。
「良いんだ、剛。」
「だが、英明。」
「当たった、って言っても、痛いってほどじゃねぇし、吹き飛んでもいねぇ。壁にめり込んでもな。」
と剛の友人だと思われる青年が剛に声を掛ける。
名は、たしか、・・・・・・・・・・・。
「お待ちください。今、言い当てますので。」
「お前な・・・・・・・・。」
「よっし、じゃあ、外れたら、あ~んな事とかそ~んな事して貰っちゃおうかなぁ~。」
「新塚英明様、であってますね?」
「ちぇ、なしかよ。」
何故、『主』である剛ではなく、こんなエロゲなるゲームで考えるエロゲ脳の同級生にしなくてはいけないのか。
全くもって謎である。
「ひで。そりゃ、お前が悪い。」
と言って現れるのは、確かアニメ的な考えでしか行動できないアニオタの。
「木塚英二様ですね?」
「流石だな、sigalさん。というわけだ、ひで。」
「そりゃないぜ!!」
英二は英明にやめとけ、と言ってやめさせようとしているが当の英明は諦めたくないっ、と大声を出す。
「ホントに、覚えてたのかよ?」
「ja。覚えていましたとも。ボケたフリです、フリ。」
「オーケー、それで良いよ。」
剛は若干、不審に思っていた様だが、sigalの言葉を信じたように言う。
それから、ゲームセンターに行き、いつもの様に遊んで終わる予定だった。
だったのだ。
「マス、『マスター』。どこ、どこに、おりますか・・・・・・?」
sigalは自身よりも耐久力が低いとみた戦闘員相手にロックンロールを決めるつもりでガトリングランチャーという選択を取ったのだが。
少し油断したらしい。
ガトリングランチャーはボロボロだった上に歩くのに邪魔であった為に途中で捨ててきたのだが。
どうやら、損傷が酷い様だ。
大事な頭部は無事なようだが、右腕の具合が悪い。
無理やり直す事も出来なくもないが、今はやらねばならないことがある。
剛の安否の確認が最優先である。
身体を引き摺るように歩いていると、二人の姿が目につく。
確か、新塚英明と木塚英二であったか。
「『エクス・ナイト・ブレイザー』って、あの『ナイトブレイザー』じゃねぇよな?」
「あの?どれだよ?」
「エロゲでしか物事考えられないエロゲ脳がっ!!『ナイトブレイザー』も知らないにわかめがっ!!」
「知らないモノは知らないだろうがっ!!」
二人の視線の先を見てみれば、sigalを弾き飛ばしたであろう『怪人』と『誰か』が対峙していた。
分厚い装甲に身を包み顔も全体が装甲に覆われている。
目があるであろう場所には濃い黒に近い青、いや、濃い紫をしたバイザーで覆われており、二つの眼光が光っている。
腕は二本あるにはあるが、途中でぶつ切りにされたように空中を漂っている。
首元には紅い色のスカーフが巻かれている。
その姿をsigalは見ると。
「マス、『マスター』、すみませんっ、私に、私に力がないばかりにっ。」
何故か、涙を溢していた。
それが誰であるのかも分からない。
にも関わらず、それが誰であるのか分かってしまった。
理解してしまったのだ。
それが己の『主』である彼であるという事に。
何故、悲しいと思うのか。
この出来なかったと悔しいと思うこの気持ちはsigalには分からない。
『人間』として、生きてはいないsigalには。
そんなsigalの様子に気付いた様子はなく、彼は咆哮する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます