第六話 辛辣ゥーーーー!
戦闘を終えた僕らはギルドに所属している人たちの集まるエントランス――依頼の紙が貼られた掲示板のある大きめの広場の椅子に腰かけている。
レーナさんは依頼を取ってくるといってどこかに行ってしまった。
「一体どんな依頼でしょうね!?」
「できればその辺の薬草を摘んでくるとかがいいなあ……」
なんてぼやいていると、レーナさんが手に依頼の紙と
「さて、スノウ君。やってもらいたい仕事はこれだ!」
「……えっ?」
手渡された一切れの紙には、「竜撃退」と書かれていた。
「いやね、どうやらここからそう遠くはない場所に竜が現れたらしいんだ。それを君に任せたくてね」
「いやいやいやいや、何で僕なんです?」
竜とか完全にダメな響きしてますよね。これ絶対ダメなやつですよね。そんなのギルドに所属してる人間の仕事ですよね。絶対そうですよね。
「本来ならウチから派遣すべきなんだがね、タイミングが悪いことに実力者たちは皆出払っていてね……」
「じゃあレーナさんが行けばいいんじゃないんですか?」
「ダメですよスノウさん! ギルドマスターはいかなる時もギルドを離れられないんですよ! 例えば国に魔物が攻め込んできた時、最後の砦となるのがギルドマスターなんですから!」
「なるほどね。で、自分と同じレベルの戦闘力を持った人間に代行させようと考えたわけですね」
「そういう事だ」
でも竜なんでしょう? おとぎ話に出て来るような怪物なんでしょう? だとしたら無理でしょう。そうでしょう?
「まあそんなに急ぎの依頼ではないし、
「受けましょう! スノウさん!」
はい、言うと思ってました。エルナちゃんは本来こういう子なんだろう。少し人見知りなだけで実はこんな子なんだろう。なんかわかって来たきがする。
「主として命じます! 竜を討伐し、無事に帰ってきてください!」
「……わかったよ」
主が言うなら仕方ない。仕方ない事なんだ。僕は自分に言い聞かせる。
「その前に、竜について詳しく聞かせてください。何も知らずに挑むのは流石に無理です」
「ああ、それについては大丈夫だ。ウチから一人お供をつけよう。魔物と対峙する依頼は基本二人以上で行くのがセオリーなのでね。エルナちゃんは未成年だし先ほど言った通り保護者の許可もない。すまないがお留守番だ」
「大丈夫です! あとでスノウさんに色々聞かせてもらいますから!」
というわけで僕はこの世界にきて二日目で竜という生き物と対峙するハメになった。竜は結構珍しいらしいのだけれど、なぜかちっとも嬉しくはなかった。
「つまり竜は魔物のヒエラルキーの頂点に君臨するとんでもないヤツってことでいいのかな?」
「はい。その認識で問題ありません」
僕はギルドから派遣された、セシリアさん――おっぱいは控えめ――と一緒に竜のいる現場に向かいながら、竜について教えてもらっている。
竜にも色々種類があるようで、今回現れた竜は岩竜と呼ばれる種類らしく、比較的凶暴で、縄張り意識が非常に強いらしい。縄張りに入って来た生き物は絶対殺すマンらしい。そして何より名前の通り岩のように硬いらしい。というか普通に岩より硬いらしい。なるほど、そんなのが近くに居たら危ない。
あとセシリアさんかわいい。つり目で少しキツそうな印象を受けるが、
「……」
「……」
まあそれはさておき、セシリアさんがさっきからすごく見てくるんだけど、どうすればいいんだろう。どうしよう。
「……ど、どうかしたかな?」
「いえ、本当に貴方で大丈夫かと不安に感じていました」
ストレートだあ……。
「マスターを負かしたと聞きましたが、正直信じていません。が、エルナさん使い魔であることを考えればそれもあり得るのかもしれませんが、やはり信じられませんね」
「あ、あはは~……」
「何笑ってるんです? 別に面白い事を言ったつもりはありませんよ」
「すいません……」
辛辣ゥー!! セシリアさんすっごい辛辣ゥーーーー!
「しっ! 止まってください」
「?」
右手を僕の前に伸ばし、止まるようにと小さな声で言われた。
「近いですね……」
「え、わかるんですか?」
「当たり前です。耳を澄ませば呼吸が聞こえますから」
そういわれて耳を澄ますと、
「よく気づきましたね」
「これも気づけないようじゃ早死にしますよ」
「……はい。すいません」
「落ち込んでる暇があるなら早く準備を」
「……」
言われた通り、落ち込むのは後にして、僕はここに来る途中に話していた作戦のために準備を始めることにした。
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