第9話 始める学舎


 学校、というのも久しぶりだ。

以前・・・前世以来だな。

その前世でも、ろくに行っていなかったわけだが。

孤児院で、親代わりの人に教えて貰うことが多かった。

不登校児の余った時間で、色々と興味を持つことに脳を使ってたわけだが。


 「さて、と」


 簡易学校に到着。

と言っても、何分と歩かず、病院から目と鼻の先だ。

元児童館の扉をくぐる。

廊下が横に伸び、それぞれの教室に繋がっている。

奥に、“一学年”と書かれたボードがかかっているドアを見つける。

 ・・・・・・よし。


 ガラッと音を立て、ドアを開ける。

教室中の視線が俺たち2人に集まった。

見たところ、13人。

先生っぽい人は、いない?

あー、全員・・・ガキだな。

遠慮無い視線と、話し声。

孤児院にいたから、幼子を見る機会は人よりかなり多いと思うんだが。

こういう初対面の人間からの視線は、苦手だ。


 視線を背中に感じつつ、自分の名前が書かれた席に座る。

ローズの席は俺の隣みたいだ。

席選びが気を利かせてくれてるな。

しかも、後列の端。

窓際とはいかなかったが、いい場所とれた。


 「おい!お前誰だよ!!」


 ・・・・・・ん?

脈絡もくそもない言語が聞こえた気がするんだが。


 「無視すんなよ、ボケ!!」


 声の主は、先に教室にいた男児だった。

いかにも、なガキ大将っぽいやつ。

こんな時代にもいるんだ。こういうの。


 「無視すんなっつってんだよ!!!」


 いきなり、胸倉を掴まれる。

一学年ってことはこいつも11歳、か。

あれ?11歳って小学何年だっけ?

前世でもこんなヤツいたなぁ・・・。


 「聞いてんのか!!オイ!」


 とうとう揺さぶってきやがった。


 「え、と?何か俺に?」

 「俺に挨拶しろってんだよ!!常識だろ!!?」

 

 そんな常識知らなーい。

コイツ、某ジャイアンみたいだな。


 「何言えよ!!ビビってんのか、ダッセェ!!」


 あぁ、ビビってるよ。

お前が将来どんなやつになるのか想像してな。

 

 「ねぇ・・・」

 「ん?」


 後ろから話しかけてきたローズに応じる。

そこで、ガキ大将くんの動きが止まった。


 「誰?」


 おう、ローズの辛辣な一言。

確かに誰だよ。

名前知らなかったわ。


 「ぼっ、僕っ!!ドネル=グラゥインって言います!!」


・・・・・・・・・僕?


 「ふーん」


 興味なさそうな、ローズ。

だが、ガキ大将くん改め、ドネルくんは嬉しそうだ。


 これは・・・、


「よ、よろしく御願いしましゅ!!」


 ローズに惚れたな、こいつ。




 大人しく席に戻っていくドネルくん。

絵に描いたようなガキ大将っぷり。

と、ドアが開き大人の人が入ってきた。

長めの金髪を後ろでとめた三十路くらいのおばさん。


 「はいはーい。皆さん、揃ってますねぇ?」


 おぉ、幼児に対する大人の喋り方。

まさか、もう一度幼児サイドで聞くことになるとは。


 「今から、入学式が始まりまぁす!ホールの方に移動しましょうねぇ」


 なんか、気恥ずかしいな。入学式とか。

先生っぽい人の後に続き、俺たちは廊下を歩く。

早めにマップを覚えないとな。

FPS脳の見せどころだぜ。


 ホールってとこに着いた。


 「じゃあ、並んで入るからねぇ?ピシッとするんだよ?」


 よし、とりあえず2周目1回目の入学式だ。

何気に楽しみな学生生活。

日本とはやっぱし色々違うんだろうな、とか。

実は結構わくわくしてる俺がいます。

 エンジョイしようかね。


 ホールの扉が開け放たれた。

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