守るために、世界

第6話 深く暗く、そして黒い


 「なんだ・・・・・・、これ・・・」


 そんな言葉しか出てこない。

視界に収まる光景を見て、それしか。


 半壊していた。

俺が暮らしていたハズのビルが。


「ここが、ウチ?」

少女の声も、入ってこない。


 ここじゃなかった?

いや、ここだ。

ここなんだ。

俺の2周目の、家。


 ここには・・・・・・。

父さんと、母さんと、リアが・・・・・・!

走り出す。

崩れた階段を上り、俺たちの、部屋へ。

押しのけるように、扉を開ける。

「・・・・・・っっ!」

部屋の中も、ボロボロだった。

壁に亀裂が走り、家具が全て倒れている。


 3人は・・・・・・!?

すぐに見つかった。

父さんと母さんが、床に倒れていた。


 一面の、血と共に。


「あ・・・・・・、うぁ・・・・・・」


なんだこれ。


なんだこれ、なんだこれ。


これなに?なにこれ?あ?これ?

な    ん     だ   

あれ?


 守る・・・・・・?

守れなかった・・・・・・?

また?


「あ、うぅ・・・・・・」

どこかで、泣き声が聞こえた。

俺か・・・・・・。

情けないな、泣きじゃくって。


・・・・・・違う。

これは、この声は、

「リアっ!!」

泣き声は母さんの下から聞こえる。

母さんに抱えられるように、守られるように、リアがいた。

生きてる。

でも俺は、守れなかった・・・・・・。


「ガ・・・ハッ!!」

「っ!?」

父さんが血を吐いた。

首筋に手を当てる。

命が、あった。

暖かい。

まだ、生きてる。

母さんも、頬に赤みがある。

俺の目から、温かなものが頬をつたいこぼれ落ちる。


 守れるんだ。まだ。


 傷があるのは、父さんだけみたいだ。

それに、血の割に傷は浅い。

早く看病すればーーーー。


 瞬間。

爆音と共に後ろの壁が壊れた。

そして、顔を現す巨体。

いや、顔かどうかも分からない。

少なくとも、俺の数十倍の大きさの何かだ。



 目があるのかも分からないが、俺を見ている。

俺たちを見ているのが分かる。

殺すのか。

俺たちを。


 もう泣き止み、眠っているリアを一瞥する。


 俺の頭に、声が響いた。


   “


 もう一度、目の前を怪物を視界に収めた。

こいつは、守らせてくれないんだ・・・・・・。


ああ・・・・・・。



「お前、いらないよ」



 その声は深く、黒く、俺の声じゃないみたいだった。



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