第5話 その瞳の、その色は
自分から行動することが嫌いだった。
まぁ、だらけてたわけだ。
毎日、学校には行くだけ行って、勉強に身も入らず。
孤児院に帰っても、何もしない。
守れるわけがなかったんだ。
相手は大人で、俺なんかの力が及ぶはずなかった。
願うだけじゃ、何も出来ない。分かってただろ。
なのに、俺は甘えてた。
今まで通りの日々が、いつまでも・・・、続くと思ってたんだ。
だが、変わろうとしたところで、変われるものだろうか。
初めて感じた死の感覚。
俺は乗り越えることができるだろうか。
今度は、守ることが、できるだろうか。
視界に、鈍色の壁が映る。
気を失ってたみたいだ。
体を起こしてから、違和感に気づく。
変わらずそこにある、白薔薇の棺。
だが、そこに少女はいなかった。
彼女は、死んでいたのだろうか。
ならなぜ、今ここにいない?
棺に近づこうとしたとき、背後に気配を感じた。
ダレカイル。
すぐさま振り返るが・・・・・・誰もいない。
ため息をつき、安心しきって正面を向くと、そこに、顔があった。
「うわぁぁ!!?」
ホラーかよ・・・・・・。
思わず、尻もちをついてしまった。
「あ・・・・・・、ごめんなさい」
謝ってきた目の前の“顔”を見ると、あの、棺の中の少女だった。
外見から推測できる年齢は俺と同じくらい。
幼女、と言えばいいか。
・・・・・・。
先に断っておくと、俺はロリコンではない。
確かに可愛い。
先刻思った通りだ。
だが、これだけでは勘違いされそうなので、こう付け加えよう。
〔将来期待できそうな〕可愛さだ。
きっと美人になるだろう、という意を込めて。
白色の髪は腰辺りまでのび、少女の動きに合わせて揺れる。
そして、目。
垂れ気味の双眸は赤紫色の光を放ち俺を見つめていた。
少し長めの前髪の間からじっ・・・と。
見透かすような目。
視線に耐えきれず目を逸らす。
生まれた気まずさをかき消すように少女に聞いた。
「君は・・・?誰?」
反応がなく、聞こえてないのかと思った俺は顔の前で手を振ってみた。
「わからない」
「うわっ!」
また、ドッキリパターンか。
質問を続ける。
「なんで、こんな所で?」
「わからない」
無表情のままで、答える少女。
「えと、家族の、誰かは・・・・・・?」
「わからない」
わからない、か・・・・・・。
だが、こんな世界だ。
この子の家族も、もう・・・・・・。
「とりあえず、僕のウチ、来る?」
「ウチ?」
「ええと、家、暮らしてるところだよ。来る?」
少し間を置いて、少女は答えた。
「・・・・・・うん」
ま、ここに放って行くわけにもいかないしな。
確認だが、ロリコンじゃないぞ、俺は。
ロリコンではない。
大事なことなので2回言いました。
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