第2話 この世界に生まれて


 俺は順調に成長し、3歳の誕生日を迎えた。

両親にも、俺が転生してここにいる、なんてことはバレてはいないだろう。

 そして、喜ばしいニュースが2つ。

1つ。

3ヶ月後、俺に妹が出来るそうだ。

嬉しいこと、のはずだ。

ただ、その知らせを聞いたとき、両親の顔が曇ったのを俺は見ていた。

何か、理由でもあるのか。

だが、気にしていても始まらないだろう。

 嬉しいニュース、2つ目。


 

 俺は今日、外の世界に出られるそうだ。

と、言うのも、俺は2周目生まれてから1度も外出したことがない。

ウチはマンションらしいのだが、1度も、だ。

ずっと気になっていた。

世界は一体どれだけ進歩したのか。

家の中のあちこちにもこの時代までに人類の築き上げてきた文明の片鱗が見て取れた。

テレビに画面なんてものはなく、映像が空間にそのまま映し出されるのだ。

携帯端末も、普段はブレスレットのようになっている。

使いたいときには、それがスマホのような形で手のひらに現れるらしい。


 なんと、便利な世の中になったのか。


「じゃあ、ミグル。行こうか・・・」

父さんの呼ぶ声が聞こえる。

ずっと両親なんて、いなかった俺にはまだ2人が自分の親だという実感が沸いていない。

 少しずつ、慣れていけるだろうか。


「うん!」

子供らしく返事を返し、父の背中を追いかける。

他の家族もこんな感じなのだろうか。


「・・・・・・じゃあ。行くぞ」


 俺は初めて、外に足を踏み出した。


 そして・・・・・・。






「      え      」





 心臓を握りつぶされるような感触が襲った。

目の前に広がる街並みは、世界は、全ては、  


 壊れていた。

 歪んでいた。

 軋んでいた。


立ち並ぶビル群は全て傾き、窓ガラスも粉々に割れている。

外を歩く人も、誰も、何も、いない。

遠方に見える、赤い海は、砂漠だろうか。


「お前には、早い話かもしれないけどな・・・・・・、この世界はもう、滅んでるんだよ。壊れてるんだ。終わってるんだ」

「こんな時代に、生んじゃって・・・・・・、ごめんね・・・・・・!」



 両親が何か言ってる。

でも、何も耳に入らない。




 ただ、乾いた風の音だけが、耳を撫でていた。





 

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