幕間

第15話 剣の初心者ゆえに。

「違いますトーマ。そうではありません」


 またしてもシェーラにダメ出しされ、素振りを止めた。

 ふぇぇ。スパルタだよぉ。などと泣き言を零す暇もなく、今度は近寄ってきたシェーラによって腕や足などの姿勢が一つ一つ正されていく。それから彼女は俺を後ろから抱擁するように剣の柄に手を添えた。


「いいですか。腕ではなく、全身で振るのです」

「う、うす……」


 シェーラに操られるがまま、彼女の動作に合わせて俺も動く。っていうか、なんか近すぎませんかね? それどころか密着してるし首筋に息がかかるし背中にふわふわ柔らかいのが当たってるしそしていい匂いだしふおおおおおお! キモいな俺。

 と内心かなりドギマギしながら、ふと何気なく、修練場の反対側で同じように指導を受けている朝妃に目をやった。

 何やら鋭い視線をこちらに注いでいた。目からレーザーでも発射されるのかっつーぐらいギラギラした目でこちらを見ていた。なに、エックスメンなの? 


「アサヒちゃん! よそ見しない!」

「は、はい! すいません!」

 教官――エイルに怒られた朝妃はビクッと肩を竦ませて、慌てた様子で再び正面に向き直った。

「何やってんだあいつ……」

 と小さく吐息を吐き出した俺だったが、しかしそんな俺も背後から軽めの手刀を食らってしまう。

「トーマ、お前も他のことに気を割いている余裕は無いでしょう。ほら、素振りを続けてください」

「さーせん……」


 言われた通り、シェーラがセットしてくれた姿勢をなるべく崩さないよう三度ほど剣を振ってみる。正直初心者からしたら何が違うのかよく分からんが、シェーラに視線だけで確認すると頷いてみせたのでそのまま素振りを続行。


「そういやよっ、シェーラとエイルは、何で俺らに、稽古を付けてっ、くれてるんだ?」


 一定のリズムで剣を振り続けながら問うと、溜め息交じりの返事が戻って来た。


「……鍛錬中は普通、口は動かさないものですよ。ただどうやらお前はかなり筋が良いようですし、まぁ少々なら問題は無いでしょうけれど……」

「そりゃどうも。……で、どうなんだ。本当なら今日も、ダンジョンに潜らなきゃ、いけなかったんじゃ、ねぇのか」


 ダンジョン最下層へ挑むほどの人物に、俺たちの修行に付き合う時間があるようには思えなかったのだ。

 しかしシェーラは予想に反して首を横に振った。


「いいえ。私やエイルが実際にダンジョンへ赴くのは、ヌシ討伐作戦の際に限られているのですよ。それ以外の階層攻略は他の騎士や魔法師に任せています。他の者にも実戦経験を積ませる必要がありますから」

「へー、なるほっ」


 確かに一部の人間だけが強くなってしまうと、万が一何かがあったとき対応不能という事態に陥りかねない。戦力が集中し過ぎるのを避けるためか……。


「ならよ、この後も時間、あったりすんのか」


 という俺の質問に、シェーラは少し考えるような仕草を取ってから答えた。


「この後…………午後からなら時間は無いこともありませんが、何故ですか」

「いやほら、俺らまだこの国、つーか世界のことを、あんま知らん訳だろ。だから城下町の、案内とかしてくれたら、って思ったんだけど……」


 しかしシェーラは残念そうな微笑みを浮かべ、伏し目がちにかぶりを振った。


「そのお誘いはとても嬉しいのですが、ごめんなさい。私はそう気軽に城の外へ出られる身分ではありませんから」

「そりゃそうか……」


 案の定ダメだった。うんまぁ、どっかの導かれし格闘家王女でもあるまいし、壁を蹴破って外に出るとかはきっと無理なのだろう。そういう問題じゃねぇか。と諦めかけた俺にシェーラが助け舟を出した。


「エイルなら恐らく大丈夫だと思いますよ。彼女はたびたび街へ降りているようですし、私などよりよほど街に詳しいでしょう。後で訊いてみてはどうですか」

「おう、訊いてみるわ」

「……ではお喋りはここまでです。とは言っても、言葉を交わしながらお前の様子をずっと眺めていたところ、お前にはこの程度の鍛錬はもはや必要無さそうですが」


 ふふふ、まぁね! これでも伊達に家の庭で木刀振り回して洗濯物に引っ掛けて母ちゃんに怒られちゃいねぇのさ! ……全然自慢できねぇな。

 と腕を組んで調子に乗る俺の目の前で、シェーラが立て掛けてあった自分の木剣を取りに行く。

 今度はどんな修行するんか楽しみだなぁ! オラ、ワクワクすっぞ! と言わんばかりの期待半分の眼差しを、俺は彼女へと向けていた。シェーラから次の言葉が発せられるまでは。


「今度は私と手合わせをしてもらいます」

「はい?」


 何だよ手合わせって。もしかしてお仏壇のコマーシャルの話? いやあれは手合わせじゃなくて、おててのしわとしわを合わせるやつか。似てるけど全然違うな。

 しかしそうなると『戦う』って意味以外には考えられないんですけど、一体どういうことなの……。と視線だけで問うと、シェーラが事もなげにこんな事を宣った。


「何を驚いているのですか。ある程度の基礎が出来ているならば、それが一番手っ取り早い修行法なのです。……とは言ってもお前は窓の使徒であるがゆえ、私の場合とは少々異なりますが。いずれにせよ、まずはお前の打たれ強さを測る必要があります。歯を食い縛って下さい」


 言うだけ言ってから、シェーラが修練用の木剣をぴたりと構えた。その瞬間、彼女の身体から何かが滲み出た気がした。剣気というか、覇気というか、とにかくそれを向けられた相手が思わず萎縮してしまうプレッシャーとでも言うべきものだ。

 文字通り数歩後退った俺の背筋を、ぞわりと冷たい感覚が疾った。

「いやちょ、待っ……」

 という俺の制止の声が聞き届けられることはなかった。


「――シッ!!」


 短い気合いを迸らせて、シェーラが動いた。

 初動は予想よりずっとゆっくりとしたものだった。だが彼女の体がゆらりと微かに揺れた、と意識した直後、俺は腹部の衝撃とともに弾かれたゴム鞠のごとく宙を舞っていた。そこで初めて、自分が神速の突き技の餌食となったことに気付いたのだ。

 ドッ! という鈍い衝撃音ですら遅れて聞こえた気がした。

 後方へ吹き飛ばされ、床を転がったのちに反対側の壁にぶつかってようやく停止する。やはり痛みはなかったものの、予めシェーラに着用を勧められていた革製の胴当てが無ければ、木剣は確実に俺を貫いていただろう。

 ちかちかと瞬く視界の中で、駆け寄ってきたシェーラが手を差し伸べた。


「無事ですか、トーマ」

「……逆に無事そうに見えますか」


 結果だけ言えば無事なのだが、俺が咎めるような視線を向けながら反問すると、シェーラは下唇を噛んでから心底申し訳なさそうに微笑んだ。


「唐突だったことは謝ります。しかしお前が抵抗してしまっては意味がなかったのです……。お前のHPの耐久力を把握しておかねば、下手をすれば殺してしまうおそれもあるのですから。それで、HPはどれぐらい減りましたか?」

「あー……うん、だいたい四割ぐらいだな」


 自分で言いながら、俺は己の頬がぴくぴく引き攣るのを感じた。おいおいマジかよ。ただの木剣の一撃で、しかも防具も着けてるのに四割も持ってかれんの? どんな攻撃力してんだこのプリンセス……。

 そんな憧れとはかけ離れたお姫様に俺がげんなりしていると、シェーラが何か納得したように顎に手を添えたまま幾度か首肯した。


「なるほど、手加減の感覚はだいたい掴めました。しかしそれにしても不便ですね……弱り具合が目に見えないというのは」

「あーそれな。今まで考えた事無かったけどそういう機能ねぇのかな」


 俺はぶつくさ言いながらメインメニューを開いて設定画面をポップアップさせた。さらさらと画面をスクロールさせながら目を通していくと、何やら下の方に気になる項目を発見した。【頭上表示の可視設定】というものだ。……っていうか絶対これだろ。

 という予想の通り、タップしてみたところどうやら、「指定した人物に自分の頭上表示を認識可能にする」というものだった。で、早速シェーラを指定してみた。


「どうだ? 見えてるか?」

 問うと、シェーラが驚き交じりに眉を上げ感心したように答える。

「ええ、モンスターの頭上のそれと全く同様のものが」

「おお良かった良かった…………いや良くねぇな。これだと俺、無駄に吹っ飛ばされたことになっちゃうんだけど」

「そうですね、無駄に吹っ飛びましたね」


 シェーラが優しげな視線を俺に注いでいた。憐れむような眼差しだった。

 おいちょっと? なに俺が勝手に吹っ飛んだみたいな言い方してるのん? これ、紛れもない君の所業なんですよ? こんにゃろう、こうなったら一泡吹かせてやるぜがるるるるる。

 俺は眼力だけで威嚇しながら立ち上がった。しかしシェーラは気にする素振りも見せずまた修練場の中心辺りへ戻っていく。


「それでは今度こそ、実際に戦ってみましょうか。大丈夫です。殺しはしません」 


 そう言って、再び木剣を体の正面に構えた。


「どうぞ自由に撃ち込んでみて下さい。私から攻撃は加えませんから」


 三年E組の担任かっつーぐらいの余裕っぷりだった。なに、特殊な弾じゃないと効かないの?

 とは言え、おごっている様子が毛ほどもないところを見ると、決して俺を侮っているわけではないのが分かる。……それが尚のこと腹立たしいわけだが。

 まぁ、防具も何も着けず薄手のノースリーブにロングスカートなんていう格好の美少女をボコるとか、そんな非紳士的なことをする俺ではないんだなーこれが。


「防具とかは着けなくていいのか? 俺と違って、もし当たりでもしたら――」

「その心配は無用です。むしろ先ほどの報復をするつもりでかかってきてください」


 ……めっちゃボコしてやる。

 俺はすっと腰を落として、木剣を右上段やや担ぎ気味に構えた。上体をゆっくり前傾姿勢へ移行させながら、数メートル先に立つ標的――シェーラへと意識を集中させる。

 ぶっちゃけ、集中力に関してはかなりの自信がある。ゲームに入り込み過ぎたせいで、周囲の事が完全に意識外になって親に何度どやされたか分からない。ゲーム中に地震があっても震度4程度なら全然気づかない。

 そして今も、もうシェーラの姿と自分の得物しか目に入っていなかった。シェーラが、不敵に微笑んだ。


「どうしました? どこからでも構いませんよ」

「……なら遠慮なくッ!!」


 俺は己を鼓舞するが如く叫び、床を思い切り蹴り飛ばした。やはりレベルが上がっているおかげで、リアルワールドの俺より身体能力が数段上昇しているようだ。

 たった一跳びでシェーラに肉薄し、その目前で体を捻る。回転の勢いも乗せて大きく振りかぶった木剣を撃ち下ろした。ガツッ! とくぐもった衝突音が耳朶を打つ。だがガードされるのは想定済み。

 だから次の一撃へ繋げようと、更に一歩を踏み出したところで――。

 その時、剣の軌道が滑るように上方へ逸れた。


「おわっ!?」


 俺は素っ頓狂な声を上げて、予想外の展開に派手によろめきながらも、咄嗟に木剣を支えにしてなんとか踏みとどまる。振り向くと、シェーラが清ました顔でこちらを見下ろしていた。


「そんな大振りの攻撃を正面から受ける訳が無いでしょう。まずは小攻撃を重ねて徐々に守りを崩し隙きを作らせる、というのが基本です。いきなり相手を狙いに行くなど悪手にもほどがありますよ」

「……そういうの先に言っといてくんない?」

「口だけの説明よりも、分かり易かったでしょう。安心して下さい。私も通った道です」


 くっそ、何だこの正論は……。納得出来ちゃうのがまた腹立つわー。とぶつくさ文句を言いながら俺は再び剣を構える。


「……のやろう、絶対泣かせてやる」

「出来たら良いですね」


 きっとそんな憎まれ口を叩くのも、俺の本気を引き出そうという意図があっての事だろう。じゃなきゃ普通に嫌なやつだ。……嫌なやつなの?

 まぁどちらにせよ、俺のやる事は変わらない。取り敢えず言われた通りにやってみるしかない。姿勢を低く、再度の臨戦態勢。


「ふ……っ!!」


 短く息吹き、右に下げていた剣先を跳ね上げた。当然のごとく阻まれる。が、先程のように無駄な力を込めていない分、幾らか体も流されにくい。

 なるほど、こういうことか……。と胸の奥で密かに感心しながら、今度は左に流れた剣を横薙に振るう。これも呆気なく迎撃されるが間髪容れず、再び斜め下段からの斬り上げを叩き込んだ。


 それから俺は休むことなく縦横無尽に剣を撃ち込み続けた。時には足もとを狙ってみたり、時には垂直斬りと見せかけた水平斬りでフェイントを仕掛けてみたり、相手が反撃してこないのを良いことに様々な戦術を試みた。だがシェーラはそれら全てを一太刀すら余すことなく的確に弾き、そして受け流していく。その間、一歩たりとも動くことはなかった。


 大した修練を積んできた訳でもないのに、いっちょ前に胸の内に悔しさが滲む。けれど剣が打ち合わされるたび、ビリビリと腕を伝う鈍い震動がどうにも心地良かった。両者の間で幾重にも剣風が巻き起こり、頬を撫で前髪を揺らした。

 そのとき自分がどんな表情をしていたのかは分からない。だが剣を交えるシェーラが俺を見て、少し驚いたように瞠目し、そっと微笑んだように見えた。

 幾度目かの剣戟ののち、俺が放った斬り下ろしがついにシェーラの剣を弾き返した。そこに、僅かな隙を見た。


 ――ここだ……!!

 

 シェーラの肩口辺りを目掛けて、迷わず剣を突き込んだ。

 躊躇いが無かった訳ではない。だがもし直撃してもそこにエイルがいるのだから即座に治癒できる。いわゆる《死んでもシェンロンいるから大丈夫》理論で己を納得させていたのだ。ゆえに、完全に当てる気で放った一撃だった。

 言うまでもなく、驚異的な速度で下から滑り込んできた剣によって弾き飛ばされた訳だが。

 カァンッ! と乾いた音を立てて木剣が俺の手を離れ、空中で数度回転したのち修練場の隅に墜落する。シェーラが俺の胸に剣を突き付け、力強く頷いた。


「良い太刀筋でした。思わずほんの少しだけ本気を出してしまいました」

「そりゃどーも……」


 基本は褒められて伸びるタイプの俺だが、流石にこれ以上剣を振るのはちょっと無理そうだった。生身の身体ではないため腕に乳酸が溜まって筋肉痛みたいな事にはならないが、疲れるのは普通に疲れる。深めの息を吐き出して体の力を抜いた。

 シェーラも静かに剣を下ろすが、俺がかなり疲弊しているのに対し彼女はまったく息が切れていない。

 その場にへたり込む俺を一瞥してから、木剣を剣立てへ戻しにいく。振り向きざまにこう告げた。


「午後は城下町を見てまわるのでしたね。初日ですし、今日はこのぐらいで良いでしょう」

「……なんか悪いな」

「私のことはあまり気にせずとも構いません。ここしばらくは鍛錬に打ち込んでいたために公務が滞ってしまっているのです。それらを片付ければまた時間も出来るでしょう。ですから今日は三人で楽しんで来てください。……もっとも、陰にそれなりの護衛が付くことになるでしょうけれど」

「ああ、そういうことならまた今度よろしく頼むわ。ありがとな」

「はい。では私はお先に失礼しますね」


 そんなそっけない言葉を交わしてシェーラは修練場を後にした。俺も先ほどの手合わせで弾かれた木剣を片付けにその場を立つ。剣立てに木剣を戻したあと、そのまま朝妃とエイルのもとへ歩いていく。


「なあ、エイルは午後って空いてるのか?」


 声をかける前から既にこちらに視線を注いでいた二人だったが、エイルがはっと我に返ったように小首を傾げた。


「うーん、用事によるかなー。どうして?」

「いや、シェーラがエイルは街に詳しいっつーから、城下町の案内を頼みたいんだけど」

「あ、それなら私も丁度街に降りる用事があるから、そのついででも良いなら大丈夫だよー」


 と、胸の前で小さく手を振りながら快く引き受けてくれた。するとそのやり取りを隣で聞いていた朝妃が、何やら慌てた様子でビシッと挙手をする。


「あたしも行きたい!」

「当たり前だろ」

「…………すいません」


 今更何を言ってるのかしらこの子……。逆に俺一人で行ってどうすんだよ。それにケモ耳のこんな美人なお姉さんと二人きりとか、城下町見学どころじゃなくなるっつーの。どうせ俺のことだから、盛大にキョドって己の黒歴史図鑑に新たな一ページを刻みかねない。


 それにしても美人なお姉さんというと嫌な記憶しかねぇな。極めつけはあれだ。中二の頃のやつだな。

 男子から人気がある仲が良かった部活の先輩がいたんだっけ。それで勇気出してメアド聞いて、マメにメールしてたんだよな。好意がある感じのちょっと恥ずかしいやり取りもたまにしてさ。そしたらある日の登校中、違う部活の同級生が――。



『お、冬馬おはよっ』

『おう』

『ああ、そう言えばお前、○○先輩に『~~~~』って送ったんだって?』

『え、何でお前が知ってんの……』



 いやー本当、いったいどこから漏れたんでしょうねぇ(すっとぼけ)。あれ以来、美少女には多かれ少なかれ毒があることを知った俺である。因みに朝妃も、毒は無いけどあのバカさ加減がまさに地雷だから例外でもない。

 と、そんな感じで俺がマイブラックヒストリーへ思いを馳せていると、エイルが今度は少し興奮気味に口を開いた。


「それよりトーマくん! もしかして、もともと剣技の心得があったの!?」

「え……いや、そんな事ねぇけど。あーまぁ心得っつーか、完全に独学だけど一人で鍛錬は積んでたかな」


 実際のところは鍛錬などという大それたものでもない。ちょっとした筋トレと、漫画やゲームキャラの真似事でしかないのだから。一般人よりちょっとチャンバラが出来るのもただの中二病の産物に過ぎない。しかしエイルはその説明では納得いかなかったようで。


「うそ!? だとしたら凄いよ冬馬くん! あのシェーラが最後だけちょっと本気になってたもん!」

「あーそれ、本人も言ってたな。まぁ一発ぐらい当ててやるつもりだったから、俺は結構悔しいけど」

「あはは……それは流石に無理じゃないかな。だってシェーラは――」


 エイルはそこで一旦口をつぐみ、ふと修練場の壁上方を見やった。釣られて俺もそこへ目を向けると、巨大な額縁のようなものが飾られていた。何やら人の名前が幾つか綴られている。その中でもダントツに長く、ダントツに大きく書き記された名前があった。

【第九十二回アトラール王都剣術大会 優勝:シェーラ=イシュガンド・ロー・アストルヴィア】



「――この国で一番強いんだから」


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