Situation1 【告白】パート2

天野翔あまのかける

今、私を悩ませる男の名前だ。


天野君は、私が大学生になってから出会った人。

第一印象は『好青年』で、ちなみに今もこの印象は変わらない。私の友人としては珍しいタイプだったり。


さて、今日はその天野君と遊びに行った。カラオケとかショッピングとか、映画も観たなぁ。……デートっぽくない? みたいな?

ってそんなことを考えては、ないないと自分で否定した。

否定すると、嘘つきじゃない自分が心を攻撃してきた。


永久とわー」

「はいな」

遊びまくって、カラオケではしゃいで、挙句の果て燃えカスになった私たち。

ただいま天野君宅でうだうだしている。

私たちは、なんの偶然か、住んでいるところがものすごく近いから結構行き来している。お互いに勝手知ったるといった感じだ。

「笑わないで聞いて?」

寝っ転がっていた天野君が姿勢を整える。

「うん。本当に笑える話じゃなきゃ笑わない」

いつもならここで茶化すのに、今日はそれが返ってこなかった。

……ん?

「俺さ、永久と仲良くなれて、嬉しいんだよね」

え、何急に。

「や、そりゃー……私も幸運だと思ってるけども」

あの大学に入って良かったと常々思う。

だって素晴らしい人たちとお近づきになれた。

「もう五年も友達やってるんだって考えると、凄いよね」

「そうだねぇ」

何が言いたいのかいまいち分からないけど、とりあえず話を合わせてみる。

そしたら。


「ちょっと無理してあの大学に入って良かった。好きな人もできたしさ」


今なんと? 我が耳を疑わざるをえないような……。

「好きな人ぉ!? えっ、誰誰誰」

好奇心の塊である私は天野君に軽く詰め寄った。

私の反応に天野君はため息をつく。

首をかしげると、自棄になったように言われた。

「だから! 永久だって!」

とわ……? 永久? へっ!?

「私?」

「そう! 君以外に誰がいるの」

確かに。って、そうじゃないだろ。

「どうして私?」

天野君は顔を赤くして「それ言わせるか」と呟く。私に聞こえるように。

「ていうか、返事もされてないのにそれ言ったら、ノーだったときに俺がめっちゃ恥ずかしいじゃん」

気づいてよ、そこまで自分で考えたんなら。

私は返事したよ。

「早く、返事!」

天野君に突き付けられた勢いで、思わず

「私も好きに決まってんでしょ、言わなくても分かれ!」

と怒鳴った。あーあ、こんな真っすぐな言葉、私に似合わなさすぎる。

「そんな無茶ぶり、流石に無理だろ!」

「うっさい、それがお前の好きになった女だ!」

「知ってる! だから好きになったんだよ!」

好きになったとか。

投げられたボールが当たって、言葉に困る。

間が出来る。天野君はそれを隠すように笑った。

「なんか、告白ってこうだっけ」

「……いや」

「いつも通りだよね」

「そりゃね」

さっきみたいな、傍から見たら喧嘩のような会話が、私たちの普通だ。

「でも、ちょっとくらい恋人っぽくてもいい?」

聞き返す間もなく、塞がれる。


こんなのズルいじゃないか。


「ね?」


顔赤いくせに爽やかな笑顔は変わらない。好青年め。


これ以上私をときめかせて、殺す気か。


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