恋愛ショート
歌音柚希
Situation1 【告白】パート1
恥ずかしくて本人の目の前では絶対言えないけど、親友。
そんな彼は、いつだって誰からも愛されてきた。男女問わず。けど女子が多い。
優しいし細かい気遣いもできるし、総じて言えば最高な人。
モテるのは当たり前、人気者なのも当然だ。
『私は奏の近くに、ずっと居たんだ。あなたに何が分かる?』
奏が女子に告白される度に、私はそう思った。
何もアクション起こさないのにね。
だから私にはチャンスなんて無いと思ってたんだ。
でも、夏休みに入る前の日の帰り道。
奇跡が起きた。
「ねぇ
ふと奏が足を止めた。
「うん?」
「聞いてほしいことがあるんだけどね……?」
蝉が思いっきり命を主張している。奏の真剣さに私の心臓も生を主張する。
奏は一回大きく深呼吸をしてから、一気に言った。
「今更かもしれないけど、優夢のことずっと好きだったんだ。優夢からしたら俺はただの腐れ縁かもしれないって考えたら、どうしても言えなくて。臆病でごめん」
言いたいだけ言うと、奏は顔を背けた。
けれど私にははっきり見えてしまった。
ちょっと、可愛いとか、思ったり?
「……ホント、今更すぎるよ。遅いバカ」
あぁ、これほど説得性に欠ける『バカ』はあるだろうか。
喉に何かが詰まったような感覚。奏じゃないと見せない姿。
「私だって、奏のことただの友達だなんて思えなくなってた。でも、奏はモテるから、無かったことにするところだったでしょ……!」
だって叶わないなら希望を持つ方が辛い。
君は振り返らない人だと思ってた。だから諦めようって。
恋心に気づいてしまった。希望が無いから捨てようとした。
無理だった。
「無かったことに、できるの?」
奏の目が私を貫く。まっすぐで、優しいのは仮面で。
誰の心でも見透かしてしまう、猫被りの目。
「できるわけない!! できなかったから苦しんだんだよ、四年間も!」
四年間。潜伏期間含め六年間。
恋は風邪みたいなもの。知らないうちに潜伏してて、急に発症する。
潜伏してた時は気にしなかったのに、発症したらもう無視できない。
それでも無視し続けたら、症状が悪化する。私は悪化した。
もう薬は効かないよ。
「私だってずっと好きだった」
でもね、唯一効く良い薬があるんだ。
「四年間、苦しませてごめん」
奏の温もりが肌に触れる。優しさが私の唇に触れる。
やっと、病気から解放される。
片想いの病、二度と来ないで。
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