第409話 大阪市東成区深江南の辛麺(レギュラー・こんにゃく麺・5辛)+替え玉(中華麺レギュラー)

「辛麺が、喰いたい」


 唐突にそんな衝動に駆られることもあるだろう。最近、認知度が上がってきてインスタントもあれこれ出ている、宮崎の辛麺だ。


 幸い、それなりに前から行きやすい場所に本場宮崎のチェーン店がある。


 ならば、行こう。


 かくして私は新深江の地にいた。


 駅前の千日前通り沿いに東へ進み、内環状線にぶつかったところで左折。しばらく歩けば目的の店が……


「並んで、いる?」


 開店直後に向かったのだが、出遅れたようだ。


 店の前にいけば、十人ぐらい並んでいる。


 それなりに待ちそうだ。


 どうする? 別の店にするか?


 少し先の麺屋に視線を向ける。


 が。


「いや、辛麺の気分に従うことを優先しよう」


 心を決めて、店内の記名帳ウェイティングボードに記名して店先で待つことにした。


 徐に『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。現在は東国編第三章。ロザリーのターンだ。御影のロザリーも、ミトカも手に入れてそれなりの倍率も確保している。


 とりあえず、APが尽きるまで出撃をしてポイントを稼ぎ、続いてスコアアタック。こちらはAPがいらないので、リトライし放題だ。


「う~ん、伸びないな」


 最初にスコアを大幅に伸ばした後が続かない。まぁ、ミッションは必須ではないので、無理はしないでおくか。


 少しずつ客がはけて行く中、続いて魔法使いの少年の物語を読む。4巻までは再読で、現在2巻。最終7巻はまだ遠い。


 そうして40分ほど時を過ごして、順番が回ってきた。


 体温を測り、入り口に近いカウンター席へと案内される。


 セットは今はやってないようだし、ここは。


「辛麺レギュラー5辛、こんにゃく麺で」


 とオーソドックスな注文をする。蕎麦アレルギー、ニラとニンニクの有無を確認されるが、オールオッケーで通した。

 

 そうして再び読書をしてしばしの時を過ごせば、注文の品がやってくる。


「ああ、これだ」


 真っ赤なスープに浮かぶ溶き卵。所々にニラの緑。ゴロゴロしたニンニク。合い挽き肉。添えられた普通のレンゲと、穴あきレンゲ。


 辛麺だ。


「いただきます」


 まずは、スープを一口。


「この味が、独特なんだよなぁ」


 醤油ベースの出汁は鍋物の出汁のような、あっさりしつつ深い味わいだ。5辛なのでそこまで辛くはない(※個人の感想です)。


 続いて引っ張り出した麺は、こんにゃく麺の名の通りぷるぷるした食感で、噛み切るのに若干コツがいる。


 溶き卵、ニラ、挽肉を合わせつつ、ズルズルと麺を啜っていく。ぷるぷるした食感、旨みの強いスープ。


 ああ、宮崎辛麺だ。


 期待通りの味に、腹の虫も歓喜の歌を奏でる。


 しかし、これで終わってよいのだろうか?


 この旨み、もう少し味わっていてもよいのではないか?


 残り僅かなこんにゃく麺を啜りつつ、そんなことをふと思う。


 そうだ。


 もっと味わおう。


「替え玉、中華麺レギュラーで」


 ということで、替え玉である。しかも、中華麺だ。麺は他に、うどんとご飯も選べるが、今は中華麺の気分だったのだ。


 少し待てば、器に盛られた中華麺がやってくる。細ストレート麺だ。


 スープに放り込めば、中華麺の辛麺のできあがり。


「おお、中華麺もいいな」


 固めに茹でられた細麺を解して啜れば、小麦の香りとパツンとキレる食感が嬉しい。


 ズルズルと、啜る。


 いつもと違う食感・味の麺で喰らうのが、とても心地良い。


 しばし、食欲に身を任せ。


「もう、終わり、か?」


 麺を食い尽くしてしまった。


 だが、


「まだ、だ」


 残ったスープを穴あきレンゲでさらい沈んだ具材や麺の切れ端をサルベージ。


 それも終われば、丼を傾けごくり、と。


「これは、残すか」


 底に沈んだ唐辛子の粉はほどほどに残しつつ、汁気は全て飲み干す。


 最後に、水を一杯飲んで一息入れ。


「ごちそうさん」


 会計を済ませ、店を後にする。


「買い物して帰るか」


 少し先のドラッグストアへと、足を向ける。

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