第406話 大阪府茨木市新庄町のラーメン200gニンニクマシ野菜マシマシアブラマシカラメマシマシ一味マシマシ

「さて、麺を喰らおう」


 TRPGが遊べる素敵な場所にてバンドで青春するTRPGのGMを終えた後。


 久しぶりに訪れたこの地で麺を喰らおうと決めていたのだ。


 GMはカロリーを消費する。ならば、喰えるのだ。


 かくして私は、東西通りの南側を東へと進んでいた。


 阪急の高架に入る少し前に、青い看板の目的の店はあった。


 店外に列はできているが、それほどでもない。サクッと店内で食券と青い洗濯挟みを確保して店外の列に入る。


 と、続々と客が増えていく。どうやら、タイミングがよかっただけのようだ。


 確認に来た店員に青い洗濯挟み付きの食券を見せて麺の量を示せば、後は誘導に従えばよいだけ。『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。現在は、七周年記念で五悪魔のターンである。当然、リリーを推すためにできるかぎりの諭吉さんをつぎ込んで倍率を上げている。目標は50位以内だが、油断すると70位ぐらいまで落ちている。


 ボーナスステージと、通常ステージに出撃し、どうにか30位代まで順位を戻したところで、店内を見れば。


「あれ? カウンターが空いてる?」


 どうやら、一気に客が出て、店内で待っていた列がはけ、それでもカウンター席の半分が空いているようだ。


 誘導に従えば、店内列はすっ飛ばしてカウンター席へと。改めて食券を付け台に出して、水と箸とレンゲとおしぼりを確保して、待つ。


 APは使い果たしたので、ぼんやりとしていると、予想より早く声がかかる。


「ニンニク入れますか?」


「ニンニクマシヤサイマシマシアブラマシカラメマシマシ一味マシマシで」


 長めの詠唱を済ませれば、盛り付けが始まる。


 そうして、注文の品がやってくるのである。


「うんうん、なんとも満たされそうだ」


 ドーム状に積み上がった野菜の山にはでかい豚が寄り添い、一部を白く染めるニンニクと一部を朱く染める一味の紅白が縁起がよくてよい。適度にテラテラした脂分に、別皿のアブラも付いていて万全だ。


「いただきます」


 まずは野菜を適当に。いい感じに茹でられてアブラの旨みと一味が絡んでそのままで旨い。マシマシだけにモリモリ喰って楽しみ、麺を引っ張り出す。その際に、ニンニクと豚をスープに沈めて天地を返しつつ。


 麺はバキバキでよい。カラメマシマシにしても、全体的なスープはまろやかな系統で、食べやすい。豚を囓れば、素直な旨み。


 ああ、生き返る。GMをして疲れた脳に、栄養が回っていく。


 豚を麺を野菜を思うさまに喰らっても、まだまだ減らない丼が心強い。旨い旨いと頭を使わずに喰えるのがいい。


 別皿のアブラを投入して飛び立とうとしたところで。


「ん? この曲は?」


 ふと、店内BGMに耳が止まる。中川翔子の『フライング・ヒューマノイド』だ。


「そういや、初めてBD買ったの、これだったなぁ」


 『世紀末オカルト学院』のオープニングである。


 しかし。


「この曲も、シナリオに使えそうだ」


 などと思ってしまうのは、TRPGを再開して数年で自分の中に根付いた感覚であろうな。


 そんな感慨に耽っていても、手と口は動いている。耳は食事の邪魔はしないのだ。丼の中身は、順調に減っていく。


 ああ、生き返る。


 『 DIES IN NO TIME 』でも、『 NO TIME TO DIE 』なのだ。


 すぐ死んでも死んでる場合じゃない。


 健康的な食事は、大切なのだ。


 生き返ると感じているということは、健康的な食事をしているということだ。


 そうして。


「終わり、か」


 すっかりと寂しくなった丼の中をレンゲで探り、スープと野菜や麺や豚の残滓を口へ運び。


 名残を惜しんだところで、レンゲを置き。


 最後に、水を一杯飲んで区切りを付け。


「ごちそうさん」


 食器を付け台に戻し、おしぼりを店頭の籠に入れて店を後にした。


「さて、帰ろう」


 JRまで歩いてもいいが、ここは阪急でいいだろう。阪急茨木市駅へと、足を向ける。

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