第269話 東大阪市長堂のラーメン味噌大(野菜多め)+ライス小

「腰が、ヤバいな……」


 ようやく社会の流れに乗り、テレワークとなった。


 が、自宅で確保できる作業環境の関係で床に座っての業務となり、非常に腰に負担が掛かっていた。


 対策として早々に座椅子を発注していたのだが、注文したときは三営業日だったものが一週間経っても発送されず、サイトは五月上旬に。


 過去に腰をやった経験があるだけに、ここまで負担が溜まっていくと結構洒落にならない。


「こうなったら、安いの買うか」


 通販で来ないなら、店舗で買うしかあるまい。


 我が腰のため、マスクと消毒用ウェットティッシュを装備し、直近のホームセンターへ向かう。買い物も、命掛けだ。


 出来る限り人の少ないルートを通り、どうにか布施駅へと辿り着く。


「どこも閉まっているな」


 ついでに喰おうかと思ったこってりラーメンも、アニメショップも閉まっている。


 素直に、ホームセンターを目指そうとしたところで。


「ん? ここは開いてるのか?」


 駅前の黄色いテントの店舗が目に付いた。


 営業時間を絞っているが、それでもこのご時世開いているのはありがたい。


 何より。


「腹が、減った……」


 店が開いていると気づいた途端、腹の虫が鳴き出したのだ。


 幸い、ほぼカウンターは無人。


 これなら、いけるか?


 というわけで店内へ。


「ああ、タッチの差でランチ終わったか……」


 ランチと言いつつ18時までやってるので期待したが、終わっているようだ。


 ならば、通常メニューだ。


 ここのところ四月というのに妙に冷えるので、冬っぽいもの。


 となれば。


「ラーメン味噌大と、ライス小……あ、あと、野菜多めで」


 と注文を通す。


 後は待つばかり、となれば『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。今は、赤月ゆにコラボイベント中。半額5連でゆにが出たので、比較的好調にアクティブポイントを集めることができている。


 が、出撃していると微妙なので、おでかけだけ仕込んで厨房を覗いていると。


「ん? 二つ?」


 時間的に先の客の分と思われるラーメンが二杯用意されていた。


 カウンターの逆の端に一人、テーブルに二人連れの三人の先客がいたが、全員が既にラーメンに向かっている。


 私は一杯だけ。


 では、このラーメンは誰の分だ? 賄いか?


 などと考えを巡らせていると、店頭に一台のバイクがやって来る。


 乗っていた男は、見覚えのある鞄を持っており、出来上がったラーメンはそこへと。


「Uber Eats ! そういうのもあるのか!」


 どうやら、いつの間にかこの店はUberEatsに対応していたらしい。


 今度、頼んでみよかしら?


 といったところで、私の注文した分がやってきた。


 褐色のスープに丼に沿って並ぶチャーシュー、その上に鎮座するたっぷりのもやしとネギ。そして、白飯。


 腹の虫を刺激してやまないな。


「いただきます」


 レンゲを手に、まずはスープを一口。


「味噌ラーメンらしい味だ……」


 なんというか、ピリ辛味噌の昔ながらの味わいというか。それでいて豚骨味噌のガッツリ感もある。


 これまたシンプルな中細ストレートの麺を啜れば、しっかりスープの味わいを纏っていて、ホッとする味わいだ。


 ズルズルと啜り、ネギとモヤシを喰らえば、シャキッとしたモヤシの食感がいい感じだ。


 続いて、チャーシューを囓れば、素朴な豚の味わいにスープが絡んでいい塩梅に。


 そうやって様々な味わいが混ざったところで、米で追い駆ける。


「ああ、生きている……」


 主食の圧倒的存在感。


 米を喰らう一時、ラーメンはおかずになるのだ。


 心が疲れたときは、糖と脂が特効薬。


 米と麦のコラボレーションにハッピーな気分になってくる。


 大変な状況下。


 外食も戦々恐々とする状態だが、それでも。


 喰っている時に感じる幸福は、変わらない。


 幸せを加味して、ラーメンと米を、喰らう。


 喰らう。


 ラーメン、美味しい。


 お米、おいしい。


 喰らう。


 幸せ。


 らめん、うま……


 麺と野菜とチャーシューを食い切り、米も終わり。


 スープの最後の一滴まで飲み干し。


 最後に水を一杯飲んで一息入れ。


「ごちそうさん」


 会計を済ませマスクを装着して店を出る。


「UbserEats調べてみるか……」


 どうしても手早く食べてしまうので、家でゆっくり食うのもいいだろう。


 そんなことを考えながら、ホームセンターへと、足を向ける。



 


 

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