第252話 大阪市西区新町のラーメン(麺200gやさいマシにんにくマシマシカラメ)

「いつの間にか、支店ができていたのか」


 高井田の方にある店の支店が、西区の新町にできたという。


 心斎橋から少々歩くが、ちょうど新種のウイルスが話題だ。にんにくを摂取してウイルス対策に向かうのもいいだろう。


 仕事帰りの空腹を抱え、心斎橋で降りて長堀通り沿いに西へ。なにわ筋を少し北上して、タワーマンションの隙間を西へ。


 すると、赤い看板が見えてきた。


 開店から少し。最初のロットの客が入っているが席はまだ少し空いている。


 ありがたい。


 店内に入ってすぐの食券機で基本のラーメンの食券を確保する。麺量は最大500gで選択するシステムのようだな。


 箸とレンゲとおしぼりと水をセルフで確保し、厨房を短辺が短いL字型に囲むカウンター席の角寄りに座る。


 食券を出せば、まずは麺量を尋ねられる。


 基本は300gのようだが、今は、そこまでではない。


「200gで」


 無難にいこう。


 丁寧に、麺茹でが次になるので時間が掛かると説明を受ければ、後は待つばかり。『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。


 現在、スフレのターンがやってきている。


 が、丁度最初の客に麺が出るタイミングだ。マシの量などを確認しておかねば。


 どうやら、マシはそこまでの量では無さそうだな。


 あと、デフォでアブラが乗る、か。


 情報を収集していると、出撃のタイミングを逃してしまった。おでかけだけ仕込み、読み終えていなかったチャンピオンを読み終えた頃。


「にんにく入れますか?」


 ようやくターンが回ってきた。


「にんにくマシマシ、やさいマシマシ、あと、カラメで」


 とコール。お残し厳禁と念を押されるが、あの量なら大丈夫だろう。


 丁寧に麺の上に野菜を積み上げて行くが、


「おお、結構デフォでアブラが掛かるな」


 野菜を積み、アブラを掛け、更に野菜が積まれる。


 にんにくは大さじでドバッと2杯。


 豚もデカいのが2枚。


 いい絵面になったところで、手元へとやってくる。


「う~ん、いい感じだ」


 にんにくが想定より多いが、まぁ、なんとかなるだろう。


「いただきます」

 

 箸を手に、野菜を崩していく。


 アブラを挟んでいるが、スープへの導線もまだ確保できて折らず、そのまま食していると。


「どうぞ」


 小皿でアブラを出してくれた。これはありがたい。


 早速、アブラを上から書けて喰えば、野菜は背徳的な味わいになる。


 いいぞ。


 そのまま喰い進め、スープへの導線が確保できたところでにんにくを溶かし、豚を沈め、麺を引っ張り出す。


 ツルッとした綺麗な麺肌だが、固くて太いのは基本だろう。


 啜れば、醤油辛さは大人しめで豚の出汁がどっしり効いたスープを纏って食い応えがある。


 野菜を挟みつつ、麺を存分に味わう。


 段々とにんにくがスープに馴染み、パンチが効いてくるのもいい。


「これは、メインはれるなぁ」


 豚を囓るが、トンテキか何かのような厚みと大きさだ。


 素朴な豚の味わいに、スープの出汁が加わっていい塩梅。アブラも効いている。


 ここまで来ると、後は本能に従うのみだ。


 麺を野菜を豚を囓る。旨い。


 にんにくが全体に行き渡って、ウイルスなんて蹴散らしてくれよう。


 脳に満ちてくる多幸感。


 だが、これは合法だ。


 マシマシを喰うときにやってくる多幸感は、合法だ。


 合法の快楽だ。


 存分に味わい。


 あっという間に固形物は丼から姿を消しつつあった。


 名残を惜しむように、れんげで追い駆ければ麺や豚の破片、野菜の残り。


 それらを口に入れ、幸せの残り香を味わう。


 アブラとにんにくの香がした。


 囓れば、ピリリとにんにく臭。


 うん、悪くない。


 そんなことを思いつつ、残滓を存分に胃の腑に収め。


 最後に、水を一杯飲んで一息。


 食器を付け台に戻し。


「ごちそうさん」


 店を後にする。


「さて、ここからだと、西長堀の方が近いんじゃないか?」


 土地勘を働かせ、西を目指す。

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