【4】その人は。
今までの人生これまでにきれいな顔をした人はハナちゃん以外では初めてだ。
「・・・っ!?」
私は、無意識にその人の顔を触っていたようで、男は目を見開いて驚いている。
「あ、ごめんなさい!そ、その、すごくきれいきれいだったから・・・つい!」
私は慌ててその人との距離をとった。
自分がしたことを思い出して顔が真っ赤になっていくのをかんじる。
その人は手で目を覆い隠しため息をついている。
・・・そりゃ、そうだ。
私は考えなしで動いてばっかだ。
「あ、あの・・・。ごめんなさい・・・!」
私は勢いよく土下座をした。
ベッドに勢いよくおでこをぶつけたけど何も痛くない。
素人目で見てもいいベッドなのだと分かる。
土下座をする私を見て彼はふぅと短く息を吐き
「いいか、月草。俺だったからなんとかなったものの他のやつにこんなことしたら絶対にダメだからな。・・・あれはダメだ。」
彼は困ったように頭をかく。
「分かりました。もうあんな考えなしの行動はしないように気をつけます!・・・、ところでなんで私の名前知っているんですか?」
さっきからこの人は私のことを名前で呼んでいる。
知り合いでもないし。
どこかであったことなんかあったけ?
「ああ、まぁ忘れてるよな。俺は
え、ひだまり?
私もその施設で育った。
「そう、俺はおまえとかなり仲良かったぞ。月草からはハナちゃんなんて呼ばれてたな。」
え?ハナちゃん?
「ハナちゃんってよくお姫様ごっことかして遊んでた、あのハナちゃん?うそ、だって女の子だよ?」
ハナちゃんは髪は短かったし服装だって男の子っぽかったけど私が頭にリボンとかつけてあげると喜んでたし。
本物のお姫様みたいな“女の子”のはず・・・。
「まだ女の子だなんて思っていたんだな。月草が喜ぶからお姫様ごっこだって何だってやったんだよ。おれがハナちゃんっていう証拠はちゃんとあるよ。」
ほれ。と見せてくれたのは
「これ、私があげたブレスレット。」
それは私がビーズで三日もかけてハナちゃんだけに作ったブレスレット。本当にハナちゃんみたいだなぁ。
すると不意に
「ちゃんっと迎えに来たぞ、月草。」
そう言い微笑んで、私の頭をぽんぽんとなでる。
この優しい顔と、この手のぬくもりはずっと昔にもあった。
このとき、彼はハナちゃんなのだと確信した。
「ハナちゃんだ・・・ずっと、会いたかった。」
急に涙が出てきてハナちゃんに抱きついた。
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「泣き止んだか?」
なんか子供みたいに泣きじゃくってしまった。
「ご、ごめん!また私、考えなしに!ごめんねハナちゃん。」
「違う、永。」
「ふぇ?」
間抜けな顔をした私にハナちゃんは
「ハナちゃんじゃない。永だよ。」
永と呼べってことかな?
「永さん。」
ちがう。とばかりに横に頭を振る。
「永君?」
また、横に頭をふる。
「・・・え、永?」
勇気を出して呼び捨てにしてみたものの、顔が真っ赤になる。
「よくできました。」
そう言って頭をなでる。
恥ずかしさで、さらに真っ赤になる。
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