Third Step みつぐみでわかる
高校生でDNAのストラップを付けている人間は、一体何人いるだろうか。
石切さん曰く、教育的には、DNAは中学でも少し登場するらしい(僕の記憶にはない…岩多高校はそこそこの進学校だというのに)。ならDNAを知っている高校生はかなりいるはずだ。
そこからどうやってDNAのストラップを付けるに至る趣向を身につけるか…。そしてそんな趣向を持つ人間をどうやってこの高校から探し出すか。
まずは。
「まずは部活から探してみるのはどうだろう、理科部とか。そういうところなら、こういうストラップが好きな人も見つかるかもしれない。」
「それ!わたしも思ってたよ!」
石切さんは、うんうんと頭を振る。
「なら理科部に」
「阿倍野くん!」
「ん?」
「生物部があるんだよ、この学校!」
そうだったのか…確かにさっきの部活紹介でそんな団体もあったような…というか
「なおさらわかりやすいな」
石切さんは得意そうに笑う。
「生物部って、どこにあるんだろ??」
「えーっと確かここに」
石切さんは先ほど配られたクラブ紹介ブックを真新しいカバンからガサゴソ取り出す。
「四階の階段登ってすぐの生物実験室だね!」
「了解、いってみよう」
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無事到着。
ノックをしてからガラッと扉を開ける。
「失礼します。」
実験室は広かった。黒い実験用机が12個ほど並べられている。教室のサイドには水槽が3つほどあって、奥には大きなホワイトボードが壁に備え付けてある。ホワイトボードには訳の分からない数字や英語がたくさん書いてある。窓が開けてあるらしく、春のそよ風が心地よく教室を吹き抜けていた。
ホワイトボードの前に一人男子生徒が立っていた。
「あ」
それは今朝遊歩道でぶつかった銀縁眼鏡の男子生徒だった。
「あの」
「失礼します、一年二組の石切といいます。少しお話があって伺わさせて頂きました。」
石切は落ち着いた口調で話し始める。先ほど教室での興奮した様子とはぜんぜん違う。
「どうしたのかな?」
銀縁眼鏡の男子生徒は手に持った油性ペンをしまうと、表情を変えずに聞いてきた。
「あの、私達これの持ち主を探していまして」
石切はストラップを前に差し出す。
「その、これってDNAを模したものだと思うのですが、生物部の方なら、もしかしたら好んでこういうのを付けてらっしゃるのかなと思って。」
僕はあわてて付け足す。
「遊歩道で拾ったんです。」
「…」
男子生徒はそのストラップをよく見つめている。
「みつぐみ」
「え?」
「みつぐみ、なんだ」
男子生徒がゆっくりと話し始める。
みつぐみ??
「ふふふ、そのストラップには持ち主の名前が書いてあるんだよ」
「え!?どういうことですか!というか、先輩は何かこれについてご存知なんですか?」
「ご存知も何も、これを作ったのは僕だからね」
にこやかに男子生徒は笑った。
「読み解いてごらん」
石切さんと僕は顔を見合わせると、ふたりともストラップに目線を落とした。
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