第4話 衣かつぎ
今日のツマミは衣かつぎかな。
開店は、午後八時から。
三時間ほど前には、店に入り、仕込みを始める。
裏庭にある物置小屋の鍵を、出入りの酒屋、八百屋、魚屋、肉屋に渡しているのだ。
それぞれ、旬の物と、各々の予算を伝えておくと、在庫を補充してくれる、という塩梅だ。
特に必要な物は書き置きすれば、次回用意してくれるし、今日のように、『売れ残り格安、早く使え』と、芋の山が出来ている事もある。
支払いは、月に一度、出向いている。
休日は、五日毎に儲けてあり、一般の時間に合っている場合は、そういった外の仕事を。
夜の時間に動く場合は、経理やら、大掃除やら、中の仕事をこなしている。
さて、芋だ。
午後八時から、午前八時まで。
今日の主食材は、芋。
母芋は、煮っ転がし。
鶏肉と、人参も入れるかな。
山椒は、物置小屋の隣に植えてあるので、葉を摘んで。
トゲが大きいので、注意が必要だ。
虫が付いていないか、確認して。
早めに気付かないと、枯れ木のように、葉を食い尽くされる。
小芋は、衣かつぎ。
外の水場に、小芋をザルのまま、たらいに放り込む。
上から、ザブザブ、水を掛ける。
外の水は、地下水なので、惜しげなく使える。
隣の作業台に母芋を置き、濡らす前に皮を剥いていく。
濡らすと、一気にぬめって滑ってしまうのだ。
おまけに、痒くなる。
夕焼けを眺めながらの作業は、ことのほか、気分の良いものだ。
移ろいゆく空の色を、見逃すのが惜しく感じる。
折角なので、ゆっくりと、この彩りを楽しみながら。
豚汁も、作ろうかなぁ、と。
父の好物を思い出す。
今日も平和な大和である。
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