第6話 パートナー成立?


「おっはよー!」

次の日、僕は教室に入るなり、ケヤキさんから挨拶を受けた。

「おはよ……」

あまりの衝撃に、教室中がザワついた。

「え?何々?タチバナってケヤキさんと知り合いなわけ?」

「何があったの?」

「ケヤキさんって学校認定者でしょ?」

「何している人だっけ?誰か知らない?」

「ちょっとちょっと、重大ニュースなんじゃないの?」

僕はいつもの様に自分の席に着いた。彼女もそんな僕の後ろをついてきた。

「同じクラスだったんだ……」

「そうみたいだねえー。と言っても私、ほとんどから、知らなかったのも無理ないよ。」

ニンマリと笑顔でそう告げられた。

「え?授業出てないの?」

僕は驚きのあまり裏返った声でそう言ってしまった。

「?うん。ほとんど家で過ごしていたからねえ。それでも所定のものとか提出・基準をクリアしておけばいいって言われたから。そんなに驚くことかな?」

彼女はすごく不思議そうな顔をして、そう言った。

「いや……ビックリして。」

「いやー、だって私、学校に来ても、なぜか皆から遠巻きにされててさ。めんどくさいし、つまんないしで、あんまり来なかったんだよね。」

だから昨日の木登りのことにつながるのか?と僕は頭を巡らせた。

「それは……ケヤキさんは学校から認定されている生徒だから、特別っていうか、皆は近づきにくかったんじゃないの?」

そう言うと、

「何じゃそりゃ。ま、私の他にも同じような生徒はいるって説明は受けていたけど、さ。」

そう言いながら、彼女は僕の隣の席に座った。

「?ケヤキさんの席ってそこ?」

「いや、今朝代えて貰った。折角だし、何かあったら困るから、タチバナ君の隣に陣取っておこうと思ってね。快く席替えしてくれたよ。」

まあ、そりゃそうだろうなあ……と僕は思いつつ、授業の準備を始めた。

別段頭には何の異常も見られず(少しだけ脳みその形に期待はしていたけれど、いたって普通との診断を渡された。)、彼女が心配するようなことは起こらないと思う。

「……ケヤキさんって、じゃあパートナー居ないの?」

「私未だにその制度の意味がよく分からないんだけど……居ないねえ?」

と首を傾げながら、彼女は言った。僕はそんな彼女の胸元を確認した。

パートナーがいたら、そこには学校から配られるをつけていたりする。それがいわば証。種類は様々あり、選べる。リングの代わりみたいなものである。

僕は無謀なお願いに出てみた。

「あのさ……ケヤキさん。」

彼女は僕の方を向いた。

「どうしたの?タチバナ君。」

「もし、もし良かったら……僕とパートナー結んでくれない?」

内心僕の心臓はドキドキしっぱなしだった。

。」

即答だった。

それは僕が申し出を終わるか否かくらい、即答だった。

撃沈。僕は机に突っ伏した。

「ちょっとぐらい考えてくれたって……」

いいじゃないかと言う声は、自分の中に落ちた。

「多分そう言われるだろうなあーとは思っていたよ?」

「じゃあなんで?」

そう聞くと、

「えーめんどくさそうだもの。だって、パートナー組んだら、今まで出なくて良かった学校行事に出なきゃいけなくなるし。それも嫌で組んでいないのに。」

そう彼女はしれっと言いのけた。そうだ、彼女は組めないのではなくて、生徒なんだった。

「……僕1週間以内にパートナー見つけないと、退学になるかもしれないんだ。」

「それは大変だね。頑張ってね。」

完全に他人事だった。

「昨日のこともあるんだし、なってくれたっていいじゃないか。」

そう愚痴をこぼすと、

「脅迫に使っちゃう?タチバナ君似合わないから、そういうことしない方が良いよー?ま、そんなことどうでもいいんだけどね。いざとなったらお金で解決しちゃうよ?私。」

そう言われて、

「そっちの方が汚い気がするんだけど……」

と返した。

「タチバナ君も私みたいに学校認定者になったらいいんじゃないの?」

とこともなげに言われたので、

「そんな簡単なことじゃないのに。」

とほとんど蚊の鳴くような声で答えた。あーこれだから、お嬢様ってやつは。

「何はともあれ、私は組む気ナイから、頑張ってね。」

それ以外のことなら、力になれる限り力になるよとも付け足された。

人生上手くいかないものだなあ……と僕は自分の不運を嘆いた。


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