30-10 : 総力戦
“
が、それが
「
そう
高等術式“瞬間転位”。最高難度とされるその魔法を、詠唱も予備動作も必要とせず、さらにはここに集った全員をそれぞれ個別に移動・回避させまでして、魔女は涼しげな顔を崩しもしない。
そこには挑発の色さえ
「うふふっ……さぁ、こちらですわよ……手の鳴る方へ……」
誘惑する踊り子のように身体をくねらせて――パン、と小さく手を
――ボッ。ボッ。ボッ。ボッ。
“
赤、青、紫、白……4色に燃え輝く炎たちが、何かの見世物のようにゆらゆらと揺れ、くるくる回る。
「ホロホロホロ……」
美しく舞う炎に吸い寄せられて、“
光など、言わずもがな。それにとっては宵闇すらも、明るすぎる。
まるで花を摘み取るように、握りつぶすように。“
「――“
ひゅうぅぅぅ……と炎が凝縮する気の抜ける音がして――続いて、腹底を振るわせる
“
「ガッハッハッハー! 我ながら
“
「ホロホロホロ……」
“忘名の愚者”の再生能力を引き継ぐ上に、元々分厚いその
巨体に押しのけられて吹き荒れる風の中、ガランが両腕をブンブンと振り回し、全力で蛇行しながらチョロチョロ走り回る。“
魔をおちょくってまるで緊迫感のないガランのそれは、まるで喜劇。
「ガハハハハー! そんな
頭上を振り仰ぎながら笑い飛ばすガランの目の端に――ビュンッ! と何かの
腕と爪とではちょこまかとしたガランを追い切れないと判断した“
「どげえぇぇえ?!」
それまでとは比べものにならない密度で飛来する、
尾の
「のぎゃぁぁぁあ! 聞いとらん! 聞いとらんぞこんなのぉ!? ほあぁあああ?!」
「あ
が、その先で顔面から地面に勢いよく胴体着陸してしまっては、それ以上の逃走は不可能であった。
“
――ビタッ。
冷や汗を垂らしたガランの前に現れたのは――飛来した四つ又の尾をそれぞれにヒールの先端で蹴り止めた、“大回廊の4人の侍女”。
完全に同調した動作で同時に鋭い回し蹴りを放ち、巨大な尾をその美脚で
「――お取り込み中、失礼いたします」
「――
「――我ら“大回廊の守護者”、リザリア陛下より勅命を賜っております」
「――どうぞ、お見知り置き下さいませ」
全く同じ声でそう言い
「ホロホロ……?」
礼儀も、人語も、生も命すらも知らぬ“
「ホロホロホロホロ……」
舞い上がった
ム……と、“大回廊の4人の侍女”がへの字に口を曲げる。
「――
「――由緒ある
「――リザリア陛下の御品格にも関わりますゆえ、非常に困り申し上げるところにございます」
「――はて、このような際、何と御助言差し上げればよろしかったでしょうか……」
1人目の侍女が小首を
そして何か思い出すと、“大回廊の4人の侍女”は
……。
「――ぶちのめすぞ、
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