26-18 : “蒼鬼・真打ち”
鍛冶場から上がった“
“宵の国”西方をぐるりと囲む天然の城壁、“大断壁”に
真っ黒に焼けて
「……」
焦土と化したかつての古巣を歩きながら、ゴーダは何も口に出すことができないでいた。
「…………」
ゴーダの後ろを追うエレンローズが、進路を塞いでいる
「ゴーダ卿……何と声をかければいいか……」
言葉が見つからず、それでも無言でいるよりはましと、シェルミアが暗黒騎士の背中に語りかけた。
「……ガランとは……あの偏屈者とは、300年来の付き合いだった……
背中の2人を振り返ることもせず、ゴーダがぽつりぽつりと
「どうしようもない奴だったが……仕事の腕前は恐ろしく確かだった。私と、私の部下たちが使っているこの剣は、“カタナ”と言ってな……この世でこれを打てるのは、あいつだけだった……」
……。
……。
……。
――ドンッ。
「……東方を……! “イヅの城塞”を取り戻すと……! あんたには付き合ってもらうと、言っただろうが……っ! この“魔剣のゴーダ”が、そう命じただろうが……っ!」
やり場のない怒りと悔しさに、ゴーダが倒壊した石柱に拳を
――『まぁそのときは、ワシ自らが火種となってやるわい』
豪快に笑う顔と、言葉が
「あれは……空元気だったのか……? あんた……もしかして最初から、こうなると分かっていたんじゃないのか……?」
虚空に
「……っ……馬鹿者が……刀に取り
……。
……。
……。
……。
……。
……。
……。
……。
……。
「――でぇきたあぁぁぁぁあぁぁぁああああああっっっ!!!!!」
「!」
「!!」
「!!!」
焦土の中からズボッと生えた褐色の腕が、歓喜の叫び声を上げた。突然のその大声に、ゴーダもシェルミアもエレンローズも、思わずその場で跳び上がっていた。
「できたぁあっ! ついにできたっ!! 完っ!成っ!じゃっ!!」
地面から生える腕が、天に向かってぐっと拳を握りしめる。
「うっ……む? 何じゃ? 何かつっかえとるぞ! ええいくそ! これだから使いとうなかったんじゃ! ここの炉は昔っからオンボロじゃったが、まさか崩れるとは思わんかったぞ! 腹が立つのぉ! 全く!」
3人が
「ふんぬぅぅうっ! かぁーっ! 糞ったれじゃのう! 何でどいつもこいつも崩れてきおんじゃ!……っぬおりゃあぁああああっ!!!」
ガラガラ、ズズン。と、
「……」
「…………」
「……」
「お! ゴーダじゃ! ガハハ! いやぁー、昨夜は騒がせたのう!」
“よぅ”と機嫌良さそうに手を上げて挨拶しながら、ガランが豪快にガハハと笑った。
「……ん……?……あっちゃぁ……こりゃたまげた! あのボロ要塞が見る影もない! やってしもぉたぁ……」
参ったというふうに頭を
「……。……。……まぁ、えっか! どうっせ誰も使っとらんかったんじゃし! “こいつ”が完成したんじゃ、問題なかろう! の! ゴーダ!」
気分良さそうにそう言ったガランが持ち上げた手には、深く静かな蒼を
皆が、開いた口が塞がらず無言のままでいる中、誰に
「やっぱり思っとった通りじゃった! 普通はのう、焼き入れは刀身を程よく熱してから水か油で一気に急冷してキンキンに入れるもんじゃ。まぁワシは、絶対秘密の湯加減の湯を使うのが好みじゃが! ところがどっこい! こいつは、“
得意げに振り上げた“
「……」
「……」
「…………」
「……む? 何じゃい……何をそんな神妙な顔をしとんじゃ?」
自分に
「……んん? そこの銀髪。それと、金髪黒髪。お主ら見ん顔じゃが……スンスン、何じゃこの臭い……? え? 人間……?」
突き出した鼻を犬のようにフンフンと嗅ぎ回して、ガランが眉間に
「ゴーダ……お主まさか、ワシが死ぬ思いで刀を打っとった間に、人間の
「……お前が死んだと思っていろいろ回想してしまった私の時間を返してくれ」
暗黒色の兜を被るゴーダの顔色は
そんなことにまるで関心がないのは、当のガランだけである。
「は? 勝手に殺すでないわい。失礼な奴じゃのう」
身を乗り出したガランが、突っかかるようにゴーダを顎の下から
「……」
「……」
……。
……。
……。
「……心配したぞ、ガラン……本当に、心配した……」
「……くたばって
たわけたことを抜かすなと、ガランがゴーダにガンを飛ばしながら鼻で一蹴した。
「……」
「……。……むぅ」
そして暗黒騎士の兜を
「まぁ、何じゃ……心配かけてしまったことは、悪かったと思っとるし? ワシなんかのことをそんなに気にかけてくれたというのも、悪い気はせん、かのう……?
ビリビリと布の裂ける音がして、ただでさえ面積の少ない胸元のさらしを帯状に千切ったガランが、それを“
急ごしらえの柄を得た銘刀“
「慣れん言葉は、背中がむず
超高硬度鋼から打ち出されたその刀身は、以前より更に増した深い蒼に輝いて、刃の部分は
暗黒騎士が、差し出された
手にかかる刀身の重みと、重心の位置。片刃剣特有のわずかな
さらし布を巻き付けただけの柄からは、
「……やっぱり、あんたの刀が、この手には1番よく
“魔剣のゴーダ”が、ただ一言、そうとだけ
「……ん。そう言うてもらえるのが、何より1番、ワシは
ニッと
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