22-7 : 邂逅
「……初めましてぇ……東の四大主ぅ……」
「やはり、人間だったか……」
長雨で
「そぉだよぉ……“明けの国”からぁ、
「……随分と、手荒な遠足のようだな?」
ゴーダがちらと、地面に突き立っている“カースのショートソード”に目をやる。
「“古いカース”が、何やら世話になったと見える……」
「ああぁ……」
ゴーダの目線を追ったニールヴェルトが、訳知り顔でにんまりと
「そのショートソードなぁ……よぉく斬れるから、気に入ってるよぉ……。あんな獣の成り損ないの血に沈んで
「なるほど……同感だな……」
「んんー? 怒んねぇのかぁ?」
「カースの愚か者には、個人的に恨みがあってね……むしろせいせいしている」
「……ひははっ。おンもしれねぇなぁ、あんたぁ……」
「漫談が得意というわけではないのだがね。ところで――」
「貴公らの長は――“明星のシェルミア”は、どうした?」
ゴーダのその問いかけに、ニールヴェルトは一瞬不思議そうな顔を浮かべたが、その表情はすぐにグニャリと
「ああぁ……そういやあんたら、一騎打ちした仲だったなぁ……何ぃ? 気になんのぉ?」
そう尋ねる狂騎士の目には、面白がるような好奇の色が浮かんでいた。
「ああ、気になるね……貴様の口を裂いてでも聞き出したいと思う程度には、興味がある……」
冗談じみた言葉で語るゴーダの声は、しかし一切笑っていなかった。
「……ひははっ」
“魔剣のゴーダ”の殺気を間近に感じて、“
「……あのお姫さんはぁ、血の
……。
「ひははっ」
……。
「……あ?」
……。
「どしたぁ? 何急に黙り込んでんだよぉ? “魔剣のゴーダ”様ぁ?」
……。
……。
……。
「なるほど……よぉく、分かったよ……よぉくな……」
斧槍の柄を受けているゴーダの腕がピタリと静止し、それはニールヴェルトがどんなに力を込めても全く微動だにしなかった。
「この戦端が開いてから、ずっと
「ひははっ、まぁ、最初に街ひとつお宅らに潰されたのはぁ、俺ら“明けの国”側なんだけどなぁ? お陰でお姫さんは大臣どもに干されてこの有りさ――」
「――随分と……愉快そうだな……貴様……」
暗黒騎士の兜の奥から差す、全てを見透かすような視線に触れて、ニールヴェルトが思わず口を噤む。
「……っとぉ、
微動だにしないゴーダをもう1度押し込み、その反動で後ろに飛び
「申し遅れたぜぇ……俺ぁ、ニールヴェルト。“宵の国”の誉れ高き暗黒騎士ぃ、あんたに挑めるこの強運に、心から感謝を……きひっ」
「……この身のことはよく知っているらしい。ならば今更、名乗る必要もあるまい。時間の無駄だ――」
銘刀“
「――何度も言わせるな……多忙なのだよ、私は……」
……。
……。
……。
大きく広がった大樹の葉の上を雨水が伝い、その先端から滴り落ちた大粒の水滴が、地上の水溜まりに落ちて無数の粒となって飛散した。
……。
……。
……。
「――“風陣:
初めに動いたのは、“
鉄さえ斬り裂くまでに至った風の塊が、見えない刃となってゴーダを襲う。が、限界まで凝縮されたその強烈な指向性の風は、暗黒騎士にとって、目に見えずとも見切りかわすのは容易なものだった。
ゴーダがひらりとかわしたその背後で、風の刃が大樹の根元を切り倒す地響きが
「――“風陣:
泥の中に転がっていた弓筒をニールヴェルトが蹴り上げると、飛散した太矢が宙にピタリと静止した。空中に形成・固定された風の塊に雨水が巻き込まれ、5,6個の球形の水の幕がフワフワと浮かんでいる光景はなんとも奇妙なものだった。
ニールヴェルトがクイっと手首を返すと、それに呼応して宙に浮いた風の塊が
「――“魔剣二式:
その魔剣によって、ゴーダの周囲の空間が裏返る。
ビタッ。
そしてゴーダの展開した空間の
「ぬっ」
「1回返された手をそのまま2回も使うかよぉ、猿じゃねぇんだからなぁ!」
自身の周囲に渦巻かせた風に乗って高く跳躍したニールヴェルトが、相手の死角となる直上に位置取って、落下の勢いに乗せて斧槍を振り下ろす。
ゴーダの持ち上げた
着地の硬直で大きな
「――“風陣:
ドウッと風の
「
宙に舞い飛びながら、風の魔方陣の浮かび上がった右手をニールヴェルトがぐっと握る。
「――“風陣:
陽動の
「……ちっ」
攻撃動作の終わりきらぬ内に再射出された矢には、いかな暗黒騎士とて対応が間に合わなかった。ほとんどの矢はその黒い
「ひはっ! よぉやく当たったぁ……ひはははっ」
自身の巻き起こした風に巻き上げられ、木っ端のように吹き飛んだ身体を猫のように
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