21-9 : “真紅のデミロフ”
「なるほど……あのときの
溶鉄溜まりの中に立ち上がった“真紅のデミロフ”の正体を見たガランが、合点がいったと
刀匠としての自身が生み出した刀の中で、唯一固有の名を与えた最高傑作、銘刀“
常識では考えられないほどの耐熱性、我が目を疑う
「ガハ……ガハハ……参ったのう……知りとうなかったのう……」
なればこそ、ガランはそれを知らずに
ガランは、“最愛の
――どれだけ殴ろうが、砕き割ることなどできる訳がない。
――どれだけ熱しようが、溶かし崩せる
――
――それはこのワシが、1番よぉく、知っておる……。
……。
……。
……。
――この
自分の意思とは無関係に、自身の声が胸の中でそう
「……これは……ちぃっと、まずいのう……」
……。
……。
……。
「ヴァウラアァァァッ!!」
“真紅のデミロフ”が再び
「ちぃっ!」
猛烈な勢いで距離を詰めてくる“真紅のデミロフ”を正面に捉え、ガランがぐっと腰を落として正拳突きの構えを取る。
「やるしか、あるまいのう……!」
「ヴゥゥウガァァァ!!」
ゴゥっと空気を押しのけながら、
それを迎え撃たんと、ガランもビキリと拳に力を
……。
「……く……っ!」
次の瞬間、女鍛冶師は、両腕と片脚を固く閉じて
――駄目じゃ……ワシにあれは……砕けん……!
鍛冶師としての直感が、
……。
……。
……。
――ゴッ。
“真紅のデミロフ”の繰り出した拳が、
「……ぬぐっ……!」
その衝撃に全身の筋肉が悲鳴を上げ、骨が
「ウヴァアアァァアアァ!!!」
ズンッ。
「ぐぎ……っ」
宙に飛ばされながら、ガランは2度目の直撃も辛うじて
「いかん……! じゃが、このまま吹き飛んで距離が開けば、その間に立て直して――」
「グヴァアァァアァァ!!」
「な……にぃ……!?」
ズドォッ。
無防備になっていたガランの腹部に、重い拳がめり込んだ。
「!!……ぐぶっ……?!」
腹の中心に打ち込まれた強烈な一撃に押されて、肺の中から全ての空気が抜けたような気がした。腹筋が
3発分の打撃の勢いが乗ったガランの身体が、ぼろ切れのように回転して、更に吹き飛ぶ勢いを増す。
そしてガランは、暗転しかけた意識の中で、
……。
……。
……。
――なんとまぁ……
……。
――ゴーダ……ベル公……騎兵隊……ワシ1人では、お主らの家を、守ってやれんかったわい……。
……。
――すまん……すまんのう……。
……。
……。
……。
「ウヴァアァアアァァァッ!!!!!」
ボゴンッ。
4発目の鉄拳が、狙い澄ましたように腹部の同じ箇所に打ち込まれた。
「……っ!!……あ゛っ゛……」
身体を貫通してしまうのではないかというほどのそれは、事実、拳が見えなくなるほどに腹に埋まって、ガランは体内で内臓の位置がずれるような、今まで味わったことのない不気味な感覚を覚えた。
ズグリッ。
全くの無防備を
「はあ゛っ……! ごぶっ……オ゛ぇ゛……っ」
次の瞬間、4度の猛撃で飛ばされたガランの身体は“イヅの城塞”にまで押し戻され、
……。
……。
……。
――……ほんに……すまんかったのう……。
……。
……。
……。
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