21-2 : 災禍の呼び水
――東の四大主不在の“イヅの城塞”、見張りの
「赤毛の獣が23、恐らくヒイロカジナかと」
「加えて、赤い
“イヅの大平原”の
「……20? 5万弱の兵力を投入しておきながら、今更何を考えて……?」
“イヅの騎兵隊”105名と、“火の粉のガラン”、そして“魔剣のゴーダ”。わずか107名の“イヅの城塞”に先日攻め入った“明けの国騎士団”の兵力は、第1陣8千人、第2陣4万人であった。そしてそのことごとくが、“イヅの騎兵隊”の陣形と、暗黒騎士の“魔剣”の前に散っていった。
全滅を通り越して全兵力殲滅という、“明けの国”にとって極めて甚大な損失を出した東方戦役の戦場に今更のように現れた、50にも満たない獣と赤い騎士たちの部隊に、ベルクトも思わず首を
「“明けの国”側の使者、と捉えるべきでしょうか」
観測を続ける
「……確かに、戦闘用の
「……」
それからしばらくの間、思慮を巡らす沈黙が続いた。
「ベルクト様、御指示を」
……。
……。
……。
「……。全騎、警戒・監視体制を維持。あちらに動きがあるまでは静観といきましょう。観測を続けてください」
「御意に」
見張り台に登っている
……。
……。
……。
「……む?」
見張りの
「何だ……?」
見張り台から身を乗り出した
その
***
――“イヅの大平原”、“明けの国”国境線側。
そこは、戦場と呼ぶには余りに静かすぎ、また墓場と呼ぶには余りにも
東の四大主“魔剣のゴーダ”の力の
空間そのものを両断した“魔剣”に巻き込まれ、そこにはたった一撃で
ユミーリアの石棺を
「ははは……御覧、ユミーリア……死体の山で国境線が浮かび上がっているよ、はははは……」
獣たちがざわついているのをよそに、“忘名の愚者ボルキノフ”が渇いた笑い声を漏らした。
「かの東の四大主、魔族の血と人間の魂を持つ存在の力……ああ、“石の種”以上に、興味深い……」
そして、腐臭の混じり始めている
「いや……全てを手に入れるのだ……“石の種”も、ゴーダの宿す神秘も、全て……」
……。
……。
……。
「――そうだろう? ユミーリア……」
……。
……。
……。
――《『……はい、お父様……』》
……。
……。
……。
ユミーリアの石棺に併走してここまでやってきた
「さあ……」
ボルキノフが天の啓示を授かるように、広げた両腕を空に向けて高らかに掲げ上げる。それを合図とするように、
「始めよう……」
真紅の
……ズルッ。
鋭い刃が食い込み、
……ズルッ。
剣先を伝い流れる真紅の血が大地に染み込み、そこに
……。
……。
……。
……ボトリ。と、
その切断面から、真紅の災禍が止めどなく流れ出ていく。
「始めよう……“明けの国”の未来の
「グルル……」
「「ギギィィ……」」
「「「ギャギャ……」」」
『『『『『オオォォ……』』』』
「――さて、まずは……その邪魔な城塞には、落ちてもらうよ……」
銀の騎士たち4万の屍血を束ね、400体の
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