第3話

ワクワクするはずの高校の入学式は最悪の気分だったのを今でも覚えている。

雨女な私のせいか周りの日頃の行いのせいかその日は生憎の雨で、私は生理二日目で腹は痛くて、同じ学校の同級生2人ともクラスは離れぼっち確定で何もかもがツイていなかった。


教室では緊張した面持ちの子やうるさく喚く子がいて、黒板ではなくホワイトボードには出席番号順で席が決められていた。

私はクラスで一番最後で、まぁ何ともぼっち定番な一番窓際の一番後ろの席だった。

腹痛とぼっち確定の不安とイライラがピークに達していた私は周りでそわそわする子やきゃあきゃあ話す子を無視して机に突っ伏して寝た。

入学式まではまだ時間がある。

もう既にめんどくさい。


人数に比例してどんどん大きくなる声に一つ小さく舌打ちをした。


どれくらいそうしていたのか分からないが扉の開く音と「席についてー」という女性の声に目を覚ます。

ぼんやりとした頭で顔を上げるとどうやら担任らしい女性が教卓の前で話をしていた。

入学式の会場に移動しましょう的なことを言っていると思う。

周りに倣って席を立ち体育館に向かい担任に従って入場の列に並ぶ。

私立のせいか無駄に広い敷地に無駄に多い人に気分はより一層沈んだ。


「ほらほら、入学式始まるんだからそんな暗い顔しないよー」


ニコニコと声をかけてくる担任に貼り付けた様な愛想笑いで適当に返事をした。

ほんとめんどくさい。


長い長い校長やPTAの話を適当に聞き流し校歌も聞き流し適当に退場する。

「皆教室に戻ってくださーい!」という担任の声に心の中で『へいへい…』と返事をしながら教室に向かう。

あーもうグループ出来てるし…これだから女子は…。

なんて考えながら歩いているといきなり肩を叩かれた。

思わず肩が跳ね上がりそれを隠すように後ろを睨むとそこには同中2人が立っていた。


「おー、こわ」

「機嫌悪くね?」

『…別に』

「お前ぼっちじゃんかよー。」

『うるさいな…別にいいんだよ。』

「お前自分から話しかけないもんな。」

『そういう2人は友達できたの?』

「いや、まだ。」

「うちは出来たよー。」

『流石だね。』

「まぁ陽キャはおいといて陰キャ同士お互い頑張ろうぜ」

「…おー。」


仲良く教室に入っていく2人を色んな感情で見つめながら自分も教室に入り席に着く。

決していい意味ではない視線が集まっているのも気付いていたが無視して外を見続けた。

言いたい事があんならハッキリ言えばいいのに。


その後は教室に親と担任が入ってきて私達の進学した看護科についての説明と明日からの時間割について説明された。

どうやら時間割は毎日ホワイトボードに書かれるらしくそれをメモして帰る仕組みらしい。

もちろんそれは今日からしなくてはいけないことで、私は生憎メモ帳を持っていなかった。

周りを見れば全員時間割を書いていて持っていないのは私だけだった。

これはかなりまずい。

筆記用具の中のボールペンで手に書こうとしたが書けないし痛い。

仕方ない…誰かにもらうか。

諦めて大人しそうな斜め後ろの子に貰うため振り返るとあからさまに驚かれた。

それに内心ため息をつきながら何とか声を出す。


『あー…メモ紙一枚貰えませんか?』

「あ、うん、いいよ…」

『ありがとう。』


気丈に振る舞いながらも手先が震えるその子を見て私ってそんなに怖いのかと改めて認識した。

何とか無事HRを終え、昼食時間を与えられた。

自分の席でぼんやりしていると母に捕獲され某ファーストフード店へ連れて行かれ適当に頼んだ。

のんびり食べていると母から急かされる。


『何で急いでんの?』

「あんたHR聞いてなかったね?この後奨学病院と面接があんのよ。」

『うわ、めんど。』

「めんどうじゃないでしょ!!今日一日気の抜けたように過ごして!」

『あー、うんうん。』

「分かってんの!?」

『分かってるからそんなにヒステリックにならないでー。』


うるさいなぁ、周りの視線集めてるじゃん。

ポテトを食べながら呆れた視線をぶつけるとデコピンされた。解せぬ。


昼食を飲むようにして食べた後は母の運転するジェットコースター(車)で学校へと戻る。

体育館には既に生徒が集まり始めていて母と私は同中2人の近くに座った。

世間話を続ける親達によく回る口だなぁなんて失礼なことを考えていると説明会&面接が始まった。

またもや校長の長い話を聞き流し、看護学科主任の話を何となくで聞く。

面接は奨学病院ごとに分かれて行うらしくそれぞれの病院の場所が口頭で案内された。

未だぺちゃくちゃと話し続ける母を引っ張り案内された場所に行くとその病院は私ともう一人の女子だけだった。

多いところでは10人以上取るけど少ないということは金がないんだろうな。

先に座っていた女子が立ち上がり体育館を出て行くのを目で追い、面接官のどうぞという声で席に着く。

後は適当に当たり障りの無い返答を繰り返し愛想笑いを続け面接は終了した。


「5年後を楽しみに待ってますね。」


にこにこと笑いながら声をかける面接官に明るく「はい!」と返事をした。

5年後この学校にいたらね、なんて思いながら。


こうして私の黒歴史物の史上最悪の入学式は終わった。

ちなみに私が孤立している事に気づいた教師達の最終手段(授業として自己紹介をさせる)によって無事友達はこの5日後にできました。

次回は変人と変態の出会いを書きましょう。

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